好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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引っ越し

19 俺、頑張るよ

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 あきれるフィオネさんの前で侍女と追いかけっこをして、結局捕まって髪を整えられ、何かを顔や手足に塗られた。

「完璧でございます!」
「とても可愛らしいお姿ですわ!」
「今夜も王子様に離してもらえませんわね!」

 そんな事、大声で言われると恥ずかしい。俺より目の前の侍女二人の方が、誰がどう見ても可愛いし完璧なんだけど。
 それにルーシェンは俺の見た目とか気にしないと思う。もっとひどい姿をたくさん見られてるし。

 照れくさいけど、早く会いたかったから居住エリアの入り口に向かうと、ルーシェンが飛竜のエストから降りてこっちに歩いてくるのが見えた。

『お帰りなさい』

 ルーシェンに駆け寄ると、俺を見つけたルーシェンがぎゅっと抱きしめてくれる。

「シュウヘイ……遅くなった」

 飛行していたせいか、少し身体が冷えてる。

『ルーシェン、少し冷えてますね』
「シュウヘイは風呂に入ったのか?いい香りがする」

 首筋に顔を埋められて話されると、くすぐったい。いい香りだと言ってもらえると、塗りたくられたのも無駄じゃなかった。侍女に感謝だな。

『お風呂入りました。ご飯はまだですけど』
「その様子だと、もう熱は出ていないみたいだな」
『治療師長から外出しても大丈夫だと言われました』
「そうか。良かった」

 短い言葉なのに、ルーシェンの優しさが伝わって本当に嬉しい。
 フィオネさんがタイミングを見計らって声をかけてきた。

「お帰りなさいませ。王子、お食事の用意が出来ております」
『お腹がすきました。早く食べに行きましょう』
「食事は後で寝室に運んでくれ」

 ん?

「畏まりました」

 侍女や侍従に指示を出すフィオネさん。ルーシェンは俺を引っ張って寝室に向かう。

『ルーシェン、食堂で食べないんですか?お風呂は?』
「後にする」
『そういえば今日王妃様とお会いしました』
「その話も寝室で聞く」

 二人っきりで何か重要な話でもあるのかと思って顔を覗き込むと、エロ笑いで返してきた。やる気だ。
 そんな顔してたらいくら王子様でも侍女達が引くぞと思って振り返ると、みんな育てた選手を送り出すサポーターのように無言で見送ってくれていた。無言でも応援って伝わるんだな。俺、頑張るよ。

「何をしてるんだ?」
『応援団に手を振ってます』
「シュウヘイの考えていることは時々分からない」

 いや、プライバシーゼロに近いこの状況になかなか慣れる事ができなくて、恥ずかしいからノリで誤魔化してるんです。

 あれこれ考えているうちに寝室に到着した。
 ルーシェンは上着を脱いで、身につけていた剣をベルトから外して枕元に置く。幽体離脱中もそうだったけど、ルーシェンは眠る寸前まで武器を身近に置いている。俺が向こうの世界で携帯電話を四六時中持っていたのと同じ感覚なんだろうな。武器と携帯電話じゃ全然違うけど。
 やっぱり寝る時まで安心できないんだろうか。恋人に命を狙われた過去があるからかな。それに気づいて少し悲しくなった。

『ルーシェン……』

 慰め方が分からないから、とりあえず抱きしめてみると、そのままベッドに押し倒された。

「シュウヘイ、遅くなって悪かった。忙しくて母上との面会にも付き合えなかった」

 そう言って額や頬にキスされる。
 俺もルーシェンの頭に腕を回して、黒髪を撫でた。

『全然平気です。ルーシェンのお母さんは龍使いだし、お化けもいましたけど』
「お化け?」
『お化けというか、妖精というか……守り神の親戚みたいなものです』

 危ない。危うく元カノの事を話してルーシェンの傷をえぐる所だった。あの侍女は、魔法村とは違って攻撃的じゃないから妖精だと思う事にしよう。多分、亡くなった事に気づいてないんだ。

「シュウヘイには変わった物が見えているんだな」
『ルーシェンの周りには、金色と青の光が見えます。とても綺麗です』
「光りが見えると、眩しくて眠れないんじゃないか?」
『それは大丈夫です。慣れたので熟睡できます』

 そう言うと、ルーシェンは笑い出した。何か変な事を言ったんだろうか。でも、慣れたのは本当だ。意識が戻ってから見えるようになった色とりどりの光も、慣れてしまえば上手く見て見ぬふりが出来るようになった。幽体離脱中ほど鮮明でもなくなった気がするのは、身体というフィルターを通して見ているからかもしれない。

 考えていると、笑うのを止めたルーシェンが、俺のシャツの下に手を入れてきた。今日は何もせずルーシェンに脱がしてもらおう。無性に脱がされたい気分だ。あちこち触られたいし、身体中にキスされたい。痛くてもいいから奥まで突っ込んでもらって、二人一緒に気持ちよくなりたい。
 やばいな、俺。でも本当にそう思う。完全にルーシェンに参ってるんだ。好きでたまらない。

 見つめ合ってゆっくり唇を重ねると、光に包まれて身体がじわりと熱くなった。
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