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波乱含みの婚約式
9 もう始まってる!?
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船頭のお爺さんは、俺のために王都の船着場に船を停泊させてくれた。
「あんた、医療所一人で行けるかい?知り合いいるのかい?」
『大丈夫です。ありがとうございます』
服がないので、しばらく毛布は借りることにした。お爺さんは要らないから持っていけと言ってくれたけど、返すために出身の街と名前をきいておいた。命があれば後でお礼をしよう。
三人と別れ、人混みで溢れる王都をかき分けるように歩く。
比較的王宮に近い場所におろしてもらえて助かった。疲れた体には短い距離でもきつい。
みんなお祭り騒ぎで、思い思いの格好をしていて、すでに酔っている人も多かったから、布を巻いた裸足の男が歩いていてもあまり注目されなかった。
王宮前広場はさすがに一般市民が入れないようになっていた。ここからパレードが始まるってきいてたから、広場の両脇には群衆が集まっている。兵士達がいつもより大勢いて警備にあたっていた。
『すみません、王宮にいれてください』
一番近くにいる兵士に話しかけたけど、一瞥されただけで無視された。しつこく食い下がる。
『すみません。岬修平といいます。婚約式に出たいので、王宮に入れてください』
「はいはい。王宮は立ち入り禁止なんですよ。向こうで大人しくしていて下さいね」
『王宮で働いていたんです。誰か偉い人を呼んでもらえませんか?』
「身分証明書は?」
『今は持っていなくて』
「そうでしょうね。今日は身分証明書がないと、絶対に王宮には入れないんですよ」
駄目だこれは。勝手に突破しよう。
帰ると見せかけて、兵士のいない場所から王宮に入ろうとすると、別の兵士に毛布を掴まれた。
「一般人は立ち入り禁止だ」
『入れてください。私は王子の婚約者なんです』
「あんたな、今朝から一体何人の人間が、婚約者と言ってやってきたと思ってるんだ。中でもあんたは一番みすぼらしい格好だ。もう少しましな格好はなかったのか。我々の王子を馬鹿にするにも程がある」
これにはさすがにムカッとした。
『みそぎの途中で服を取られたんです。誰か話の分かる人を呼んでください』
「どうした?何か問題か?」
別の兵士がやってきた。こいつも下っ端らしい。話にならない。
「また自称婚約者だ。中に入れろとうるさいんだよ」
『とにかく王宮に入れてください。婚約式にいかないといけないんです。時間がなくて』
「残念だったな。婚約式ならもう始まってるはずだ」
えっ!?もう始まってる?まさか、ファンクラブの男と?
固まった俺を見て、兵士二人が肩をすくめる。
「残念だったな。大人しく帰れ」
必死に緑水湖を泳いで来たのに……。
落ち込む俺の耳に、聞いた事のある声が飛び込んできた。
「ミサキ君!?」
驚いて顔をあげると、向こうも驚いた顔のジョシュが立っていた。
***
兵士にはジョシュが話をつけてくれた。
ジョシュに手を引かれてようやく王宮の二階に入れてもらえる。
『ジョシュがいてくれて助かりました。ジョシュは顔が広いですね』
「僕、王宮の有名レストランで働いていたからね。それにあそこにいた兵士、僕の彼氏だし」
『え?そうなんですか?』
「うん。後で怒っとく。でもミサキ君なんでこんな所にいるの?婚約式は?とりあえずこれ着て」
兵士達の自由に使える部屋で、ジョシュが兵士の上下服を借りてくれた。それに靴も。
「こんなのしか無いけど」
『十分です。ありがとう』
着がえている俺をジョシュが心配そうに見ている。
「ねえ、聞くの怖いけど、どうしたの?王子様の婚約者ってミサキ君のことだと思ってたけど、違うの?」
『今朝まではその予定でした。みそぎ中に襲われて、魔法で飛ばされたんです』
「うわぁ……そうだったんだ。婚約式がずっと始まらなくて、偉い人達は怖い顔してバタバタしてるし、下っ端のみんなで何かあったのかなって言ってたんだよ」
『ルーシェンはどうしてるか分かりますか?』
聞くと、ジョシュは気まずそうに口ごもった。
「……婚約式の式場にいるって聞いたけど、飛行部隊の側近が誰もいないって噂になってる。でもさっき、ようやく式が始まるらしいって上司が言ってた。パーティーやパレードも遅れるけどあるみたいだし……」
『そうですか』
「お見舞いの時に見ていたけど、王子様は本当にミサキ君の事が好きだと思うよ。婚約式が始まったのは、何か事情があるんだと思う」
『ありがとう、ジョシュ』
「ミサキ君これからどうするの?」
『式場に行ってみます』
そう言うと、ジョシュは目を輝かせた。
「さすがミサキ君!頑張って!僕応援してるよ。でもちょっと待って」
そして俺の為に、こっそり隠していたというおやつを持ってきてくれた。空腹だったからすごく助かる。俺がおやつを食べている間、魔法で回復もしてくれた。
『ありがとうジョシュ、行ってきます!』
任務に戻るジョシュに手を振り、俺は式場を目指した。
「あんた、医療所一人で行けるかい?知り合いいるのかい?」
『大丈夫です。ありがとうございます』
服がないので、しばらく毛布は借りることにした。お爺さんは要らないから持っていけと言ってくれたけど、返すために出身の街と名前をきいておいた。命があれば後でお礼をしよう。
三人と別れ、人混みで溢れる王都をかき分けるように歩く。
比較的王宮に近い場所におろしてもらえて助かった。疲れた体には短い距離でもきつい。
みんなお祭り騒ぎで、思い思いの格好をしていて、すでに酔っている人も多かったから、布を巻いた裸足の男が歩いていてもあまり注目されなかった。
王宮前広場はさすがに一般市民が入れないようになっていた。ここからパレードが始まるってきいてたから、広場の両脇には群衆が集まっている。兵士達がいつもより大勢いて警備にあたっていた。
『すみません、王宮にいれてください』
一番近くにいる兵士に話しかけたけど、一瞥されただけで無視された。しつこく食い下がる。
『すみません。岬修平といいます。婚約式に出たいので、王宮に入れてください』
「はいはい。王宮は立ち入り禁止なんですよ。向こうで大人しくしていて下さいね」
『王宮で働いていたんです。誰か偉い人を呼んでもらえませんか?』
「身分証明書は?」
『今は持っていなくて』
「そうでしょうね。今日は身分証明書がないと、絶対に王宮には入れないんですよ」
駄目だこれは。勝手に突破しよう。
帰ると見せかけて、兵士のいない場所から王宮に入ろうとすると、別の兵士に毛布を掴まれた。
「一般人は立ち入り禁止だ」
『入れてください。私は王子の婚約者なんです』
「あんたな、今朝から一体何人の人間が、婚約者と言ってやってきたと思ってるんだ。中でもあんたは一番みすぼらしい格好だ。もう少しましな格好はなかったのか。我々の王子を馬鹿にするにも程がある」
これにはさすがにムカッとした。
『みそぎの途中で服を取られたんです。誰か話の分かる人を呼んでください』
「どうした?何か問題か?」
別の兵士がやってきた。こいつも下っ端らしい。話にならない。
「また自称婚約者だ。中に入れろとうるさいんだよ」
『とにかく王宮に入れてください。婚約式にいかないといけないんです。時間がなくて』
「残念だったな。婚約式ならもう始まってるはずだ」
えっ!?もう始まってる?まさか、ファンクラブの男と?
固まった俺を見て、兵士二人が肩をすくめる。
「残念だったな。大人しく帰れ」
必死に緑水湖を泳いで来たのに……。
落ち込む俺の耳に、聞いた事のある声が飛び込んできた。
「ミサキ君!?」
驚いて顔をあげると、向こうも驚いた顔のジョシュが立っていた。
***
兵士にはジョシュが話をつけてくれた。
ジョシュに手を引かれてようやく王宮の二階に入れてもらえる。
『ジョシュがいてくれて助かりました。ジョシュは顔が広いですね』
「僕、王宮の有名レストランで働いていたからね。それにあそこにいた兵士、僕の彼氏だし」
『え?そうなんですか?』
「うん。後で怒っとく。でもミサキ君なんでこんな所にいるの?婚約式は?とりあえずこれ着て」
兵士達の自由に使える部屋で、ジョシュが兵士の上下服を借りてくれた。それに靴も。
「こんなのしか無いけど」
『十分です。ありがとう』
着がえている俺をジョシュが心配そうに見ている。
「ねえ、聞くの怖いけど、どうしたの?王子様の婚約者ってミサキ君のことだと思ってたけど、違うの?」
『今朝まではその予定でした。みそぎ中に襲われて、魔法で飛ばされたんです』
「うわぁ……そうだったんだ。婚約式がずっと始まらなくて、偉い人達は怖い顔してバタバタしてるし、下っ端のみんなで何かあったのかなって言ってたんだよ」
『ルーシェンはどうしてるか分かりますか?』
聞くと、ジョシュは気まずそうに口ごもった。
「……婚約式の式場にいるって聞いたけど、飛行部隊の側近が誰もいないって噂になってる。でもさっき、ようやく式が始まるらしいって上司が言ってた。パーティーやパレードも遅れるけどあるみたいだし……」
『そうですか』
「お見舞いの時に見ていたけど、王子様は本当にミサキ君の事が好きだと思うよ。婚約式が始まったのは、何か事情があるんだと思う」
『ありがとう、ジョシュ』
「ミサキ君これからどうするの?」
『式場に行ってみます』
そう言うと、ジョシュは目を輝かせた。
「さすがミサキ君!頑張って!僕応援してるよ。でもちょっと待って」
そして俺の為に、こっそり隠していたというおやつを持ってきてくれた。空腹だったからすごく助かる。俺がおやつを食べている間、魔法で回復もしてくれた。
『ありがとうジョシュ、行ってきます!』
任務に戻るジョシュに手を振り、俺は式場を目指した。
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