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波乱含みの婚約式
11 逃してたまるか
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婚約式の式場は広い庭園に隣接した場所にあった。半分外みたいな、光の溢れる温室みたいな場所。
俺は勝手に教会をイメージしていたけど、異世界だし宗教が違うから装飾も全然違っていた。でも、厳かな空気は一緒だ。
扉の前にいた兵士は、ロベルトさんを見て黙って扉の前から退いた。
「……」
そっと潜り込んだ式場は、小さなコンサートホールのようだった。手前にずらりと並ぶ国賓達。みんなドレス姿や兵士風スタイルや民族衣装みたいな格好と様々だ。
俺は飛行部隊のマントのフードを被り、ロベルトさんの背後に隠れつつ、ホールの奥を見た。
ガラス張りになった壁の手前に、少し高い台座があって、ルーシェンとファンクラブの男が、デザインは違うけれど似たような白と青の衣装を着て向かい合って立っていた。
無表情でファンクラブ男に指輪をはめるルーシェン。それに応えてはにかんだ笑顔を見せる金髪の男。
皆は気づいていないのかもしれないが、俺の目にははっきりと見えた。
ファンクラブの男の足下から伸びる黒い縄のような物、それがルーシェンの両手と首に纏わり付いている。
頭の中で何かがブチッと切れたような気がした。
「ミサキ殿……!」
ロベルトさんが小声で俺を制止する。
おそらく守ろうとしたんだろう。だけど俺は盾にしろと言われた事を忘れ、ロベルトさんを振りきると、ホール奥までの短距離を全力で走った。
騒げば邪魔が入りそうだから、ぎりぎりまで叫ぶのを我慢する。
俺が中央の台座に飛び上がった時、ようやく俺の存在に気づいた国賓達が騒ぎ始めた。
直前に見たのは、ルーシェンとファンクラブ男の驚いた顔。
「お前!!!ふっざけんなよーーー!!!」
俺はでかい声で叫びながら、ファンクラブ男に拳を振り下ろした。
殴る瞬間までは普通だった。
誰かの頬を拳で殴りつけたのは初めてだったから、痛いだろうとは思ったけど、でもそれだけじゃなかった。
手の甲から稲妻のような光が現れ、ファンクラブの男を襲う。不意を突かれた男が電流のような魔法を浴びて吹っ飛ぶのがスローモーションのように見えた。
式場のガラス張りの壁が一瞬で砕け、派手な音を立てて外に飛び散る。
男は隣の庭園まで飛ばされ、石の床の上に転がった。男の足下から出ていたの黒い縄のような魔法はルーシェンから離れたけど、そのままザワザワと蠢く。あれを消滅させないとまずい。魔法なんかで、人の心を支配されてたまるか。
庭園の外に追いかけていって、まだ手の甲に残っていた稲妻を黒い縄に浴びせると、黒い魔法はようやく消えた。
倒れていた男は、酷い魔法を受けてもそれほどダメージはなさそうに見えた。しかもじわじわ回復している。さすが魔法使いだ。
「何で……貴様が……」
「俺の恋人に変な魔法かけるな!お前の考え方、気持ち悪いんだよ!」
庭園には誰もおらず、先端は空中に突き出ていた。男は座ったまま俺の後方を見る。そして乾いた笑いを浮かべた。
「ははっ……失敗か。保険がないと僕の実力じゃ、厳しいな」
そのままじりじりと後ずさる。
庭園の先端に立つと、笑顔のまま両手を上げた。
来る……!と思った瞬間、ファンクラブ男が口から恨みごとのような呪文を吐いた。咄嗟に両手で顔をガードする。
男が放った爆発のような攻撃魔法は、俺に何一つ傷を付ける事無く手の甲に吸い込まれていく。
「くそっ、道連れにしてやりたかったのに……」
爆風が消えた後、男は後ろに倒れるように空へと姿を消した。
自殺!?それとも逃走か!?
とにかく逃がしてたまるか。
「シローーー!!!」
空に向かって絶叫すると、ごうっという風の音と共に、白い龍が竜巻のように現れた。
下から上へ、飛び降りたはずのファンクラブ男を風と一緒に巻き上げる。まるで木の葉のようにくるくると、男が空を舞うのが見えた。
うわぁ……呼んだの俺だけど、シロ……ファンクラブの男を口に咥えて遊んでるよ。ちょっとだけ同情するな。俺なら絶対に嫌だ。
空を見上げていると、隣に誰かが立った。顔を向けるより先に抱きしめられる。
「シュウヘイ……」
ルーシェンが震える声でそう言うと、ぎゅっと俺の肩に頭を押し付ける。首にも、両手にも黒い魔法はない。よかった。
『ルーシェン、遅くなってすみません』
俺は王太子妃失格だ。
婚約式にも遅れ、厳かな式を台無しにして、国賓達の前でルーシェンや王様、王妃様に恥をかかせたかもしれない。
だけど抱きしめてくれるルーシェンが愛しくて、そのまま首に腕を回すと、顔をあげたルーシェンを引き寄せてキスをした。
俺は勝手に教会をイメージしていたけど、異世界だし宗教が違うから装飾も全然違っていた。でも、厳かな空気は一緒だ。
扉の前にいた兵士は、ロベルトさんを見て黙って扉の前から退いた。
「……」
そっと潜り込んだ式場は、小さなコンサートホールのようだった。手前にずらりと並ぶ国賓達。みんなドレス姿や兵士風スタイルや民族衣装みたいな格好と様々だ。
俺は飛行部隊のマントのフードを被り、ロベルトさんの背後に隠れつつ、ホールの奥を見た。
ガラス張りになった壁の手前に、少し高い台座があって、ルーシェンとファンクラブの男が、デザインは違うけれど似たような白と青の衣装を着て向かい合って立っていた。
無表情でファンクラブ男に指輪をはめるルーシェン。それに応えてはにかんだ笑顔を見せる金髪の男。
皆は気づいていないのかもしれないが、俺の目にははっきりと見えた。
ファンクラブの男の足下から伸びる黒い縄のような物、それがルーシェンの両手と首に纏わり付いている。
頭の中で何かがブチッと切れたような気がした。
「ミサキ殿……!」
ロベルトさんが小声で俺を制止する。
おそらく守ろうとしたんだろう。だけど俺は盾にしろと言われた事を忘れ、ロベルトさんを振りきると、ホール奥までの短距離を全力で走った。
騒げば邪魔が入りそうだから、ぎりぎりまで叫ぶのを我慢する。
俺が中央の台座に飛び上がった時、ようやく俺の存在に気づいた国賓達が騒ぎ始めた。
直前に見たのは、ルーシェンとファンクラブ男の驚いた顔。
「お前!!!ふっざけんなよーーー!!!」
俺はでかい声で叫びながら、ファンクラブ男に拳を振り下ろした。
殴る瞬間までは普通だった。
誰かの頬を拳で殴りつけたのは初めてだったから、痛いだろうとは思ったけど、でもそれだけじゃなかった。
手の甲から稲妻のような光が現れ、ファンクラブの男を襲う。不意を突かれた男が電流のような魔法を浴びて吹っ飛ぶのがスローモーションのように見えた。
式場のガラス張りの壁が一瞬で砕け、派手な音を立てて外に飛び散る。
男は隣の庭園まで飛ばされ、石の床の上に転がった。男の足下から出ていたの黒い縄のような魔法はルーシェンから離れたけど、そのままザワザワと蠢く。あれを消滅させないとまずい。魔法なんかで、人の心を支配されてたまるか。
庭園の外に追いかけていって、まだ手の甲に残っていた稲妻を黒い縄に浴びせると、黒い魔法はようやく消えた。
倒れていた男は、酷い魔法を受けてもそれほどダメージはなさそうに見えた。しかもじわじわ回復している。さすが魔法使いだ。
「何で……貴様が……」
「俺の恋人に変な魔法かけるな!お前の考え方、気持ち悪いんだよ!」
庭園には誰もおらず、先端は空中に突き出ていた。男は座ったまま俺の後方を見る。そして乾いた笑いを浮かべた。
「ははっ……失敗か。保険がないと僕の実力じゃ、厳しいな」
そのままじりじりと後ずさる。
庭園の先端に立つと、笑顔のまま両手を上げた。
来る……!と思った瞬間、ファンクラブ男が口から恨みごとのような呪文を吐いた。咄嗟に両手で顔をガードする。
男が放った爆発のような攻撃魔法は、俺に何一つ傷を付ける事無く手の甲に吸い込まれていく。
「くそっ、道連れにしてやりたかったのに……」
爆風が消えた後、男は後ろに倒れるように空へと姿を消した。
自殺!?それとも逃走か!?
とにかく逃がしてたまるか。
「シローーー!!!」
空に向かって絶叫すると、ごうっという風の音と共に、白い龍が竜巻のように現れた。
下から上へ、飛び降りたはずのファンクラブ男を風と一緒に巻き上げる。まるで木の葉のようにくるくると、男が空を舞うのが見えた。
うわぁ……呼んだの俺だけど、シロ……ファンクラブの男を口に咥えて遊んでるよ。ちょっとだけ同情するな。俺なら絶対に嫌だ。
空を見上げていると、隣に誰かが立った。顔を向けるより先に抱きしめられる。
「シュウヘイ……」
ルーシェンが震える声でそう言うと、ぎゅっと俺の肩に頭を押し付ける。首にも、両手にも黒い魔法はない。よかった。
『ルーシェン、遅くなってすみません』
俺は王太子妃失格だ。
婚約式にも遅れ、厳かな式を台無しにして、国賓達の前でルーシェンや王様、王妃様に恥をかかせたかもしれない。
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