好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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波乱含みの婚約式

12 出来ないことはたくさんあるけど

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 キスをした瞬間、体が青い光に包まれて、ジョシュに回復魔法をかけてもらった時のように楽になった。
 パーティーの夜に魔法を分けてもらったあの時と同じだ。すごく気持ちいい。ずっとそうしていたかったけど、婚約式の途中だった事を思い出した。仕方なく唇を離す。

『……ルーシェン』
「シュウヘイ、どこにも怪我はないか?」
『大丈夫です。ルーシェンは?何もされませんでしたか?』
「俺は大丈夫だ。シュウヘイ……守れなくてすまなかった」
『王妃様の魔法が守ってくれました。でも……指輪を取られてしまいました。せっかくもらったのに、すみません』
「それなら問題ない」

 ルーシェンが笑って何か呟くと、さっきファンクラブの男にはめていたはずの指輪が掌に現れた。

『あれ?』
「この指輪は、シュウヘイにしか合わない。他人がはめてもただの飾りだ」

 聞けばその指輪は、ルーシェンが呪文を唱えればすぐに手元に戻ってくるのだそうだ。俺が無くしても(無くさないけど)安心だし、ついでに防御も回復も、俺にしか効果がないらしい。

 ルーシェンは、もう一度俺の指に見慣れたシンプルな指輪をはめてくれる。

『ルーシェン、もしかして魔法村で指輪をくれた時から私の事が好きだったんですか?』

 冗談交じりに言うと、ルーシェンはムッとした表情になった。

「手紙にそう書いただろう」
『手紙?』
「そう言えば、読んでいないんだったな。あの頃シュウヘイはこの国の文字が読めなかったからな」

 魔法村で消えてしまったあれか。そんな事が書いてあったのか……。読みたかった。

『また書いてください』

 ルーシェンが俺の指にキスをしてくれる。

「毎日言ってやるからそれで我慢しろ」
『はいっ』

***

 婚約式の式場に戻ると、国賓達が俺とルーシェンの行動を固唾をのんで見守っていた。
 俺という侵入者が敵なのか味方なのか判断しかねていたんだろう。でも、王子も王様も王妃様も俺に何もしなかったから敵では無いと判断した感じだ。
 ただ……どん引きしてる気がするけどな。

『初めまして!皆さん遅くなってすみません。ルーシェン王子の婚約者の岬修平です』

 氷のような空気を払拭しようと笑顔で挨拶してみた。
 あれ?逆効果?

 まずかったかな……と思っていると、式場内からパチパチと誰かが拍手をする音が聞こえてきた。
 音のする方を向くと、式場の壁の近くで一人拍手をしてくれているフィオネさんの姿が見えた。

(そのままのミサキ殿でよろしいのですよ)

 そう言って励ましてくれた事を思い出す。
 そうか。そうだよな。
 俺は俺以上の存在にはなれないんだ。どん引きされたっていい。出来ない事はたくさんあるけど、俺はルーシェンの婚約者で、望まれる限りずっと王子のそばにいていいんだ。

 フィオネさん一人の拍手は、やがて式場全体に広がった。
 ルーシェンと二人顔を見合わせて笑う。フィオネさん、ありがとう。

***

 婚約式はつつがなく?終了し、夕方には婚約パーティーが始まる事になった。
 ルーシェンは王様と王妃様に話をした後、ロベルトさんにいろいろ指示を出していた。
 アークさんはじめルーシェンの飛行部隊は俺の捜索をしてくれていたらしいけど、今度は緑水湖の変態親父の自宅に向かったらしい。
 如月や異世界担当課の皆は、飛ばされた侍女や侍従の救助と回復にあたっているみたいだ。まだ全員見つかっていなくて、それも心配だけど、如月は優秀だからきっと大丈夫だろう。
 救助から戻ってきた梅子さんは俺の無事を泣いて喜んでくれた。
 拍手をしてくれたフィオネさんは、式の後は相変わらずクールで、俺の無謀さにちょっとキレていた。

「敵に単独で突っ込むなど、軽率にも程があります。ご無事だったからいいようなものの」
『フィオネさんすみません。あの時は頭に血が上って』
「ロベルト殿にももっときちんと仕事をしてもらわなければ、飛行部隊隊長が聞いてあきれますわね」

 ついでにロベルトさんも怒られている。フィオネさん強いな……。
 強いといえば、王妃様に魔法のお礼を言うと
「遅かったわね。待ちくたびれたわ。もっと精進なさい」
と返された。
 フィオネさんといい王妃様といい、どこでも女性は強いらしい。
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