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波乱含みの婚約式
13 結婚おめでとう
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婚約パーティーには遅れて行くことにした。
緊張が緩んだせいか、すごく疲れて眠くなったんだ。だから無理を言って王子の居住エリアの寝室で少し眠らせてもらう事にした。ルーシェンもずっと俺についていてくれた。
『国賓の相手しなくていいんですか?』
「父上と母上に任せる」
『飛行部隊の指揮は?』
「ロベルトとアークがいる」
『そんなんでいいんですか?』
「いいんだ。シュウヘイのそばにいたい」
ベッドの上でぎゅっと抱きしめられる。
またここに帰ってこられて本当に良かった。もしかしたらもうルーシェンに会えないかもしれないと思っていた。
俺はルーシェンに、捕まった後の事を詳しく話せなかった。きっと怒るだろうから、すごく簡単にロベルトさんに伝えるだけにした。
かわりに、階段を閉鎖されて苦労したとか、兵士に顔を覚えられてなかったとか、ジョシュが助けてくれたという話を愚痴まじりに話す。
ルーシェンは謝りながら背中を撫でてくれて、俺はようやく安心して眠りにつく事が出来た。
***
二時間くらいは眠れたんだろうか。
起きた時はかなり頭がすっきりしていた。ルーシェンがすぐ隣にいて俺の寝顔を覗き込んでいる。照れるから顔を擦りつけて高価な衣装をシワにしてやった。
「ミサキ殿、こちらの衣装を」
寝室を出るとフィオネさんが新しい衣装を渡してくれた。
婚約式の衣装には予備があったみたいだ。聞けばこれから都市をまわるのに必要だからと似たような衣装が十着以上あるらしい。
部屋着みたいな衣装も合わせればもっと数が多いそうだ。もったいない。太ったり痩せたり出来ないな。
衣装に着がえて、王冠よりかなり小振りの……何と呼んでいいのか分からないアクセサリーを頭に乗せ、新しい靴を履いてルーシェンと手をつないでパーティー会場に向かう。空腹だから何か食べよう。
***
結論から言うと会場では全然食べ物を口にする暇が無かった。
大勢の人間がやってきて、ひたすら挨拶を交わす。ずっと笑顔でいると顔の筋肉がひきつりそうになる。いろいろな人を紹介されて、人を覚えるのが得意な俺でも半分も覚えられなかった。
パーティーはあっという間ににぎやかに終了し、次は角竜に乗ってパレードだ。
角竜は巨大なサイだと如月に聞いていたけど、俺はトリケラトプスだと思う事にした。背中に角のないトリケラトプスだ。感動だ。パレード最高。
角竜の背中には簡単な屋根付きの座席がある。座席は囲われていて観客には上半身しか見えないから、ルーシェンに頼んで、手軽に食べられる串焼き料理みたいなものと、飲み物を座席に運んでもらった。パレードの途中で夜になるから、暗くなったら食べよう。
パレードは遅れて始まったので、外はもう夕方だった。
角竜が巨大なので、二階から座席に乗り込む。座席は二人で座るには広すぎるくらい豪華で、高級ソファーと変わらない座り心地だ。
王宮前には、昼と変わらないくらい、いやそれ以上に観光客や王都の住民が詰めかけていた。兵士達が等間隔にずらりと並んで頭を下げている。その中に、見覚えのある姿を見つけた。
『おーーい!!ジョシュー!!』
頭を下げていたジョシュがびくりと反応し、反射的にこっちを見上げる。
『ありがとう!』
手を振ると、ジョシュはにっこり笑って、隣にいる兵士をつつく。兵士が青ざめた表情でこちらを見あげ、焦ったように再び頭を下げた。あれがジョシュの彼氏か。今度ダブルデート頼んでみよう。
角竜はゆっくりと前進し始めた。
見慣れた王都の街並みが、いつもと違って見える。びっしりと並んだ人々が、王子に歓声を送ってくれる。俺に対しては一応ブーイングはなさそうだ。あっても気にしないけど。
皆に手を振りながらパレードは進む。緑水湖近くまで一直線に進んで、そこから王都を一周するみたいだ。歓声をくれる人々にも警備している兵士達にも感謝の気持ちでいっぱいになった。
『ルーシェン、私もいい王太子妃を目指して頑張ります』
いつかルーシェンがいい国王になりたいと言っていた気持ちが今なら少し分かる。
「俺が道を踏み外しそうな時は隣で諫めてくれるか?」
『努力します』
俺はルーシェンが好きだから、もしかしたらルーシェンと一緒に道を踏み外してしまうかもしれないけど。その時はフィオネさんや如月や、飛行部隊のみんなに頑張ってもらおう。
予定よりスタート時間が遅れたから、パレードが終わらないうちに、日が沈んで夜になった。
角竜は気にすることなく同じペースで進む。人々も全然帰る様子がない。
日没後は魔法の灯りがともるから、角竜も道もキラキラ輝いている。
特に緑水湖の周りを進む時は綺麗だった。緑水湖は宇宙みたいだし、橋は魔法で光っているし、たくさんの船が灯りをつけて緑水湖に浮かんでいる。あの中には俺を助けてくれた二人がいて、今頃結婚の誓いをしているだろうな。
王宮に帰る途中で、夜空に花火が打ち上がった。
観客がどよめく。
俺も驚いた。この世界には花火はないと思っていた。でも実際に色とりどりの花火が夜空を埋めていく。
『ルーシェン、花火が!』
「あれは、異世界担当課の皆からシュウヘイへのプレゼントだそうだ」
『本当……ですか?』
「本物を参考に魔法でそっくりに作ったらしいが、本物もこんな感じなのか?」
『すごく似ています』
よく聞くと、遅れて響くドンという音が花火よりずっと小さい。そして決定的に違うのは文字の花火があるという所だ。
日本語で書かれた
みさき君、結婚おめでとう
という文字を夜空に見た時には涙が出た。
「シュウヘイ、泣いているのか?」
『嬉しいんです』
「そうか」
ルーシェンが涙を拭ってくれる。
『すごく幸せです』
「俺の方が幸せだ。結婚してくれてありがとう」
ルーシェンと抱き合って、見つめ合って、笑いながらキスをする。
この景色を俺はきっと一生忘れないだろう。
花火はまだ続いている。人々は帰らずに、祭りのように歓声を上げ、王都は光り輝いていた。
おわり
緊張が緩んだせいか、すごく疲れて眠くなったんだ。だから無理を言って王子の居住エリアの寝室で少し眠らせてもらう事にした。ルーシェンもずっと俺についていてくれた。
『国賓の相手しなくていいんですか?』
「父上と母上に任せる」
『飛行部隊の指揮は?』
「ロベルトとアークがいる」
『そんなんでいいんですか?』
「いいんだ。シュウヘイのそばにいたい」
ベッドの上でぎゅっと抱きしめられる。
またここに帰ってこられて本当に良かった。もしかしたらもうルーシェンに会えないかもしれないと思っていた。
俺はルーシェンに、捕まった後の事を詳しく話せなかった。きっと怒るだろうから、すごく簡単にロベルトさんに伝えるだけにした。
かわりに、階段を閉鎖されて苦労したとか、兵士に顔を覚えられてなかったとか、ジョシュが助けてくれたという話を愚痴まじりに話す。
ルーシェンは謝りながら背中を撫でてくれて、俺はようやく安心して眠りにつく事が出来た。
***
二時間くらいは眠れたんだろうか。
起きた時はかなり頭がすっきりしていた。ルーシェンがすぐ隣にいて俺の寝顔を覗き込んでいる。照れるから顔を擦りつけて高価な衣装をシワにしてやった。
「ミサキ殿、こちらの衣装を」
寝室を出るとフィオネさんが新しい衣装を渡してくれた。
婚約式の衣装には予備があったみたいだ。聞けばこれから都市をまわるのに必要だからと似たような衣装が十着以上あるらしい。
部屋着みたいな衣装も合わせればもっと数が多いそうだ。もったいない。太ったり痩せたり出来ないな。
衣装に着がえて、王冠よりかなり小振りの……何と呼んでいいのか分からないアクセサリーを頭に乗せ、新しい靴を履いてルーシェンと手をつないでパーティー会場に向かう。空腹だから何か食べよう。
***
結論から言うと会場では全然食べ物を口にする暇が無かった。
大勢の人間がやってきて、ひたすら挨拶を交わす。ずっと笑顔でいると顔の筋肉がひきつりそうになる。いろいろな人を紹介されて、人を覚えるのが得意な俺でも半分も覚えられなかった。
パーティーはあっという間ににぎやかに終了し、次は角竜に乗ってパレードだ。
角竜は巨大なサイだと如月に聞いていたけど、俺はトリケラトプスだと思う事にした。背中に角のないトリケラトプスだ。感動だ。パレード最高。
角竜の背中には簡単な屋根付きの座席がある。座席は囲われていて観客には上半身しか見えないから、ルーシェンに頼んで、手軽に食べられる串焼き料理みたいなものと、飲み物を座席に運んでもらった。パレードの途中で夜になるから、暗くなったら食べよう。
パレードは遅れて始まったので、外はもう夕方だった。
角竜が巨大なので、二階から座席に乗り込む。座席は二人で座るには広すぎるくらい豪華で、高級ソファーと変わらない座り心地だ。
王宮前には、昼と変わらないくらい、いやそれ以上に観光客や王都の住民が詰めかけていた。兵士達が等間隔にずらりと並んで頭を下げている。その中に、見覚えのある姿を見つけた。
『おーーい!!ジョシュー!!』
頭を下げていたジョシュがびくりと反応し、反射的にこっちを見上げる。
『ありがとう!』
手を振ると、ジョシュはにっこり笑って、隣にいる兵士をつつく。兵士が青ざめた表情でこちらを見あげ、焦ったように再び頭を下げた。あれがジョシュの彼氏か。今度ダブルデート頼んでみよう。
角竜はゆっくりと前進し始めた。
見慣れた王都の街並みが、いつもと違って見える。びっしりと並んだ人々が、王子に歓声を送ってくれる。俺に対しては一応ブーイングはなさそうだ。あっても気にしないけど。
皆に手を振りながらパレードは進む。緑水湖近くまで一直線に進んで、そこから王都を一周するみたいだ。歓声をくれる人々にも警備している兵士達にも感謝の気持ちでいっぱいになった。
『ルーシェン、私もいい王太子妃を目指して頑張ります』
いつかルーシェンがいい国王になりたいと言っていた気持ちが今なら少し分かる。
「俺が道を踏み外しそうな時は隣で諫めてくれるか?」
『努力します』
俺はルーシェンが好きだから、もしかしたらルーシェンと一緒に道を踏み外してしまうかもしれないけど。その時はフィオネさんや如月や、飛行部隊のみんなに頑張ってもらおう。
予定よりスタート時間が遅れたから、パレードが終わらないうちに、日が沈んで夜になった。
角竜は気にすることなく同じペースで進む。人々も全然帰る様子がない。
日没後は魔法の灯りがともるから、角竜も道もキラキラ輝いている。
特に緑水湖の周りを進む時は綺麗だった。緑水湖は宇宙みたいだし、橋は魔法で光っているし、たくさんの船が灯りをつけて緑水湖に浮かんでいる。あの中には俺を助けてくれた二人がいて、今頃結婚の誓いをしているだろうな。
王宮に帰る途中で、夜空に花火が打ち上がった。
観客がどよめく。
俺も驚いた。この世界には花火はないと思っていた。でも実際に色とりどりの花火が夜空を埋めていく。
『ルーシェン、花火が!』
「あれは、異世界担当課の皆からシュウヘイへのプレゼントだそうだ」
『本当……ですか?』
「本物を参考に魔法でそっくりに作ったらしいが、本物もこんな感じなのか?」
『すごく似ています』
よく聞くと、遅れて響くドンという音が花火よりずっと小さい。そして決定的に違うのは文字の花火があるという所だ。
日本語で書かれた
みさき君、結婚おめでとう
という文字を夜空に見た時には涙が出た。
「シュウヘイ、泣いているのか?」
『嬉しいんです』
「そうか」
ルーシェンが涙を拭ってくれる。
『すごく幸せです』
「俺の方が幸せだ。結婚してくれてありがとう」
ルーシェンと抱き合って、見つめ合って、笑いながらキスをする。
この景色を俺はきっと一生忘れないだろう。
花火はまだ続いている。人々は帰らずに、祭りのように歓声を上げ、王都は光り輝いていた。
おわり
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