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新婚旅行
1 ついてくるらしい
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「おはようございます、ミサキ様!」
ポリムが満面の笑みでタオルの入ったかごを持ってベッド脇に立っている。
何度か経験しているにもかかわらず、やっぱり恥ずかしくて顔が上げられない。いつもならこんな事にならないように早く起きるんだけど、久々だったせいかギリギリまで熟睡してた。おかげで素っ裸でベッドに寝ているところをポリムに起こされてしまった。この生活はプライバシーゼロだ。汚れたシーツとか、身体に残る痕なんかで、何があったか正確に把握されてる。だからなのか、ポリムがいつも以上に笑顔だ。
よかったですわね、ミサキ様、昨夜は王子様と久し振りに……とかいう心の声が聞こえてくるような気がする。
ルーシェンは先に起きてプライベートゾーンの下のフロアでフィオネさんとアークさんと話してる。裏切り者だ。怒られるんなら二人一緒だって言ったのに。
「お身体大丈夫ですか? お薬飲まれますか? 塗り薬もありますけど……」
『大丈夫です』
「私、回復魔法にはけっこう自信があったのですけど、ミサキ様に使えなくてもどかしいです。お薬にももっと詳しくなりますから、辛いところがあれば遠慮なくおっしゃってくださいね」
そう言いながらタオルを出して身体を拭いてくれるポリム。身体くらい一人で拭けると必死に抵抗してなんとかタオルを受け取った。
「ミサキ様はもう少し侍女に仕事を与えてくださると嬉しいんですけど……なんでもご自分でなさるんですもの」
聞こえないフリして大急ぎで下着を身につける。今日は熟睡もしたし、腰もお尻もそんなに痛くない。
『大丈夫です。ポリムにはなんでもやってもらっているので感謝してます』
下着の上に旅行用の上着を着せてもらいながら、今日の予定を聞く。
今日は旅行初日だ。飛行船に乗って王宮を離れると、各都市を訪問するまで半年から一年近く帰って来られない。そう思うとちょっとさみしい。ポリムは付いてくるけど、何人か仲良くなった侍女達は留守番だ。
着替え終わって下のフロアに行くと、ルーシェンが笑顔で待っていた。
『おはようございます』
「シュウヘイ、痛むところはないか?」
『ないです』
みんな過保護だなぁ。甘やかされすぎて自分が駄目になるような気がするよ。
それから二人で軽く朝ごはんを食べ、プライベートゾーンから出る。
「いってらっしゃいませ」と頭を下げる侍女や兵士たちに手を振って、歩き出そうとしたら、視界に何かが入った。
うわ……。
大階段の下に待っている兵士たちの間に、女性が一人しゃがみこんでいる。明らかに他とオーラの違う女性は、普通の人より一回り小さいような気がした。
「どうした? シュウヘイ」
『いえ、なんでもありません』
どう見ても離れの妖精さんだな。
王様が吹っ飛ばしたと思ったけど、まだプライベートゾーンにいたのか。それとも戻って来たのかな。
大きさが少し小さくなったと同時におどろおどろしさが減ったような気がするけど、顔と姿形は同じだ。ルーシェンには見えていないらしい。
階段下にうずくまっていた妖精さんは、ルーシェンを見つけるとじわじわと這ってそばに近寄ってきた。
『ルーシェン』
「どうした?」
さっとルーシェンの横に移動して、笑顔で手を繋ぐ。
我ながら嫉妬深いと思いつつ、妖精さんの進路を妨害したら、直後に左手が重くなった。
……そう怒るなって。
左手にくっついた妖精さんを見ると、恨みがましい表情で俺を見上げてる。
でも、いくらルーシェンが好きだからって幽霊を取り憑かせるわけにはいかないだろ。俺が守るって約束したんだから。
妖精さんは20階から下に降りてもそのまま俺にくっついてきた。新婚旅行に付いてくる気らしい。妖精さんの事は後で考えよう。
飛行船という名の浮島が停泊している階まで妖精さん付きで移動する。
今回は全員ではなく、飛行部隊の隊長達と、各部署のリーダーが広場に残って俺とルーシェンを待ってる。残りの人達はもう浮島に乗り込んで出発の準備を終わらせてるみたいだ。
広場には王様の使いの兵士も待っていた。楽しんでこいという伝言だけを兵士にことづけて、王様は遊びにいっているらしい。相変わらず自由な王様だけど、ちょっと残念だ。妖精さんを吹っ飛ばして欲しかったのに。
ポリムが満面の笑みでタオルの入ったかごを持ってベッド脇に立っている。
何度か経験しているにもかかわらず、やっぱり恥ずかしくて顔が上げられない。いつもならこんな事にならないように早く起きるんだけど、久々だったせいかギリギリまで熟睡してた。おかげで素っ裸でベッドに寝ているところをポリムに起こされてしまった。この生活はプライバシーゼロだ。汚れたシーツとか、身体に残る痕なんかで、何があったか正確に把握されてる。だからなのか、ポリムがいつも以上に笑顔だ。
よかったですわね、ミサキ様、昨夜は王子様と久し振りに……とかいう心の声が聞こえてくるような気がする。
ルーシェンは先に起きてプライベートゾーンの下のフロアでフィオネさんとアークさんと話してる。裏切り者だ。怒られるんなら二人一緒だって言ったのに。
「お身体大丈夫ですか? お薬飲まれますか? 塗り薬もありますけど……」
『大丈夫です』
「私、回復魔法にはけっこう自信があったのですけど、ミサキ様に使えなくてもどかしいです。お薬にももっと詳しくなりますから、辛いところがあれば遠慮なくおっしゃってくださいね」
そう言いながらタオルを出して身体を拭いてくれるポリム。身体くらい一人で拭けると必死に抵抗してなんとかタオルを受け取った。
「ミサキ様はもう少し侍女に仕事を与えてくださると嬉しいんですけど……なんでもご自分でなさるんですもの」
聞こえないフリして大急ぎで下着を身につける。今日は熟睡もしたし、腰もお尻もそんなに痛くない。
『大丈夫です。ポリムにはなんでもやってもらっているので感謝してます』
下着の上に旅行用の上着を着せてもらいながら、今日の予定を聞く。
今日は旅行初日だ。飛行船に乗って王宮を離れると、各都市を訪問するまで半年から一年近く帰って来られない。そう思うとちょっとさみしい。ポリムは付いてくるけど、何人か仲良くなった侍女達は留守番だ。
着替え終わって下のフロアに行くと、ルーシェンが笑顔で待っていた。
『おはようございます』
「シュウヘイ、痛むところはないか?」
『ないです』
みんな過保護だなぁ。甘やかされすぎて自分が駄目になるような気がするよ。
それから二人で軽く朝ごはんを食べ、プライベートゾーンから出る。
「いってらっしゃいませ」と頭を下げる侍女や兵士たちに手を振って、歩き出そうとしたら、視界に何かが入った。
うわ……。
大階段の下に待っている兵士たちの間に、女性が一人しゃがみこんでいる。明らかに他とオーラの違う女性は、普通の人より一回り小さいような気がした。
「どうした? シュウヘイ」
『いえ、なんでもありません』
どう見ても離れの妖精さんだな。
王様が吹っ飛ばしたと思ったけど、まだプライベートゾーンにいたのか。それとも戻って来たのかな。
大きさが少し小さくなったと同時におどろおどろしさが減ったような気がするけど、顔と姿形は同じだ。ルーシェンには見えていないらしい。
階段下にうずくまっていた妖精さんは、ルーシェンを見つけるとじわじわと這ってそばに近寄ってきた。
『ルーシェン』
「どうした?」
さっとルーシェンの横に移動して、笑顔で手を繋ぐ。
我ながら嫉妬深いと思いつつ、妖精さんの進路を妨害したら、直後に左手が重くなった。
……そう怒るなって。
左手にくっついた妖精さんを見ると、恨みがましい表情で俺を見上げてる。
でも、いくらルーシェンが好きだからって幽霊を取り憑かせるわけにはいかないだろ。俺が守るって約束したんだから。
妖精さんは20階から下に降りてもそのまま俺にくっついてきた。新婚旅行に付いてくる気らしい。妖精さんの事は後で考えよう。
飛行船という名の浮島が停泊している階まで妖精さん付きで移動する。
今回は全員ではなく、飛行部隊の隊長達と、各部署のリーダーが広場に残って俺とルーシェンを待ってる。残りの人達はもう浮島に乗り込んで出発の準備を終わらせてるみたいだ。
広場には王様の使いの兵士も待っていた。楽しんでこいという伝言だけを兵士にことづけて、王様は遊びにいっているらしい。相変わらず自由な王様だけど、ちょっと残念だ。妖精さんを吹っ飛ばして欲しかったのに。
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