好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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赤砂の街

2 赤い砂漠

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 しばらく飛竜で進むと、遠くに赤茶色の地面と、その手前に壁に囲まれた街が見えてきた。壁は地面と同じく赤茶けた色に染まっている。
 こんな交通の不便そうな場所にもかかわらずかなり大きな街に見える。そこそこ舗装された道が壁の入り口に四方から続いているし、壁の外側にもひび割れみたいな小さな川と、小さなテントがポツポツと見える。

『もしかして、あれが赤砂の街ですか?』
「ああ」
『壁が赤いですね。地面も』
「この先にある砂漠の砂が赤いんだ。何度も起こる砂嵐で街が赤く染まるらしい」
『赤い砂漠……』
「少しだけ飛行してみるか?」
『行ってみます!』

 エストが赤砂の街の上空で向きを変え、砂漠方向に行こうとすると、隣に茶色い飛竜が並んだ。アークさんだ。

「王子!もしかして砂漠へ行かれるのですか?」
「近くを通るだけだ」
「わかりました。では私が先に参ります。後方はジョージが」

 アークさんはそう言うと、少し高度を下げて前を飛び始めた。
 なんだなんだ?何かヤバイのか?

『ルーシェン、砂漠って危険なんですか?』
「アークが警戒する程度には危険だな」

 げっ。

『あの、危なかったら帰りましょう!もう充分楽しみました』

 慌ててそう告げると、ルーシェンがくすりと笑ってそれから頬にキスされた。

「高度を下げすぎなければ大丈夫だ。シュウヘイがいるから危険な事はしない。砂漠の様子を見ておきたいから少しだけ我慢してくれ」

 ルーシェンの言葉にピンときた。

『もしかして、万能薬の素材があるんですか……?』
「そうだ」

 ルーシェンの短い返事に、それ以上何も言えなくなってしまった。危険な場所には行って欲しくないけど、素材がないと薬が作れないわけで、薬がないと心臓が治らない。正直に言えば、心臓の心配なんてせずに長生きしたい。そしてずっとルーシェンのそばにいたい。

 訪問の場所に赤砂の街を選んだのは、近くにこの砂漠があるからなんだろうし。

 黙って飛竜に乗ったまま、近づく砂漠を見下ろしていると、途中から空気が明らかに変わった。
 むわっと熱い風が吹いてくる。魔法で防御しているのにこれなら、魔法がなかったらかなり暑そうだな。

 砂漠は赤い砂と、こげ茶の尖った岩山が点在する広い場所だった。植物も動物も見当たらないし生き物の気配がない。
 万能薬の素材ってなんなんだろう。もしかして砂とか鉱物だったりするのか?

『何もいませんね……ん?』

 飛行する飛竜の物ではない、何かの黒い影が見えた。
 円い影だ。
 それも巨大で、見た事はないけどブラックホールみたいに見える。

『あれ、なんですか?』
「どうした?」
『あの、黒くて円い』
「黒?岩の事か?」

 これはもしかして……ルーシェンには見えてないのか?
 あんなデカい黒い丸が目に入らないはずがない。まさかと思うけど、お化けやシロと同じ類のやつかよ。

『いや、なんでもないです。見間違いでした』

 昨日侍女の幽霊で大騒ぎしたばかりだから、さすがに今日も見えてない物をあれこれ話して心配をかけるのは避けたかった。
 あれが何かヤバイ物だとわかったらその時にルーシェンに伝えよう。

「いないな……」

 ルーシェンは地面を眺めながらそんな言葉を呟く。
 俺には黒いでっかい円が見えてるんですけど……それは素材には関係ないよな。
 そのでっかい黒い円は、じわじわとどこかに移動しているように見えた。

***

「おかえりなさいませ。ミサキ様!」

 さすがに飛竜で街に突っ込むのはやめて一旦浮島に戻ると、ポリムやフィオネさんが待っていてくれた。
 飛竜から降りて、エストに乗せてくれたお礼を言う。

「飛行はどうでした?」
『楽しかったです』
「良かったですわ。朝食の用意が整っております」

「王子、少しお帰りが遅かったのでは?」
「砂漠を見て回った」
「ミサキ様が一緒なのですよ」
「分かっている。それほど近づいてはいない」

 ルーシェンとフィオネさんの会話が気になる。俺には詳しい事を全然教えてくれないからな。

「フィオネ様とミサキ様だけですわね。王子様に意見ができるのは」

 ポリムが何か満足そうに頷いてる。

『譲二さん、砂漠に黒い生き物っていますか?形は丸くて……』
「黒ですか?あまり思い当たりませんが」
『そうですか。では、砂漠にすんでいる有名な生き物ってなんですか?』

 質問すると、譲二さんは少しだけ考えた。

「先ほどは見当たりませんでしたが、有名といえば火竜でしょうか」

 カリュウ!?
 もしかして火の竜と書くあれか?ファイヤードラゴン!?

 素材ってもしかして竜かよ……。
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