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赤砂の街
9 大丈夫ですか?
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雲の谷の使節の人の話が終わったので、俺はちょっとだけ暇を持て余してしまった。
おそらくみんな忙しいと思うのに、俺の周りだけ静かで慌ただしさが伝わってこない。
『私も何か手伝いにいきます』
「ミサキ様はお部屋でゆっくりされていてもよろしいかと思いますが」
『でもみんな忙しそうだし、何かできる事があると思います』
もとの世界は魔物の襲来なんてなかったから、こういう時何していいか分からないな。しかも王太子妃だし。例えばこれがただの兵士なら、武器や防具の準備だとか炊き出しだとか、命令されるままに動けるけど、俺に命令してくる人が誰一人いない。唯一如月は日本に帰れって言ってたけど却下だし、部屋でゆっくりって言われても、ルーシェンがあんなに忙しそうなのにそれはないだろ。
魔法陣を書き写したりだとか、そういう事なら異世界担当課で習ったから役に立てるかも。
そしてルーシェンの作業が落ち着いたら、雲の谷の事を相談すればいい。
雲の谷の鍵をポケットに入れ、領主の館を歩いてルーシェン達が会議に使っている部屋に向かう事にした。
『……うわ』
会議に使っている部屋はすぐに分かったけど、入るのがためらわれる状況だった。
なんというか……ピリピリしてる。原因は間違いなくルーシェンだな。
椅子に座って地図を睨み、アークさん達と話しているルーシェンのオーラがなんか違う。戦闘モードっていうのか?
冷ややかというか攻撃力強めというか、普通の兵士なら絶対に話しかけたくないはずだ。王子オーラってすごいな。
こういうオーラ、最近見たことなかったけど、異世界に戻って来たばかりの頃パーティー会場でこんな感じだった。
「ミサキ様、どうなさったのですか?」
部屋の前で飛行部隊の兵士に呼び止められた。この人昨日大部屋にいたな。
『何か手伝う事ないかと思いまして』
「こちらは大丈夫です。王子や我々に任せてお部屋でおくつろぎください」
どいつもこいつもやたら俺を休ませようとしてくるな。そうはいくか。
『ちょっとルーシェンに話があります』
そう言うと兵士は大人しく引き下がった。
部屋に入ると、俺に気づいたルーシェンのオーラが変わった。戦闘モードがやわらぐ。
「シュウヘイ、話は終わったのか?」
『はい。如月と、雲の谷の使節の方とお話しました』
心配そうに俺を見ているので、にっこり笑って近づき、腕をまわしてギュッと抱きしめる。
しばらく抱きしめた後、ルーシェンは俺の顔を覗きこみ、親指で頬を撫でた。まさか泣きそうな気分だったことバレてるのかな。泣いてはいないけど。
「大丈夫か?」
『はい。開花の事を詳しく聞きました』
「……すまない。せっかくの旅行なのに」
『ルーシェンのせいじゃありません』
すごく癒やされるけど、部下がたくさんいるのでこれくらいにしておこう。会議中だったような気がする。
ルーシェンの隣に座るとアークさんとロベルトさんが顔を見合わせた。空気読まない俺にも分かるよ。邪魔ってやつだな。だけど俺も会議に参加したいから無視する。
「ミサキ様、我々は少し外しましょうか?」
『いえ大丈夫です。大人しく聞いてますから。邪魔ですか?』
「とんでもない。ミサキ様がいらっしゃると王子が機嫌を直すので隊員達は助かります」
「アーク、それはどういう意味だ」
ルーシェンが相変わらず憮然とした態度で答える。これ部下だったら怖いだろうな。アークさんくらいだと思う。動じてないのは。
「その通りの意味ですけど。ミサキ様との婚約旅行を邪魔されて、さっきからものすごく不機嫌じゃないですか」
アークさんとルーシェンの軽口の叩きあいの中、ロベルトさんは変わらずの無表情なのでチラ見すると目が合った。
「大丈夫ですか?」
『え?』
まさかロベルトさんに話しかけられると思っていなかったので、耳を疑った。俺、そんなにひどい顔してるのか? それとも心臓の事かな。
「異世界には魔物がいないと聞いているので」
『あ、今のところ大丈夫です。びっくりしましたけど……飛行部隊のみなさんは大丈夫なんですか?』
「我々は、いつでも王子やミサキ様の為に命を捨てる覚悟ができています」
『……』
みんなが危険な目にあったら、さすがに大丈夫じゃないかもしれない。いまから凶暴化した魔物との戦いが始まるのに俺だけ覚悟ができていない気がして仕方がなかった。
おそらくみんな忙しいと思うのに、俺の周りだけ静かで慌ただしさが伝わってこない。
『私も何か手伝いにいきます』
「ミサキ様はお部屋でゆっくりされていてもよろしいかと思いますが」
『でもみんな忙しそうだし、何かできる事があると思います』
もとの世界は魔物の襲来なんてなかったから、こういう時何していいか分からないな。しかも王太子妃だし。例えばこれがただの兵士なら、武器や防具の準備だとか炊き出しだとか、命令されるままに動けるけど、俺に命令してくる人が誰一人いない。唯一如月は日本に帰れって言ってたけど却下だし、部屋でゆっくりって言われても、ルーシェンがあんなに忙しそうなのにそれはないだろ。
魔法陣を書き写したりだとか、そういう事なら異世界担当課で習ったから役に立てるかも。
そしてルーシェンの作業が落ち着いたら、雲の谷の事を相談すればいい。
雲の谷の鍵をポケットに入れ、領主の館を歩いてルーシェン達が会議に使っている部屋に向かう事にした。
『……うわ』
会議に使っている部屋はすぐに分かったけど、入るのがためらわれる状況だった。
なんというか……ピリピリしてる。原因は間違いなくルーシェンだな。
椅子に座って地図を睨み、アークさん達と話しているルーシェンのオーラがなんか違う。戦闘モードっていうのか?
冷ややかというか攻撃力強めというか、普通の兵士なら絶対に話しかけたくないはずだ。王子オーラってすごいな。
こういうオーラ、最近見たことなかったけど、異世界に戻って来たばかりの頃パーティー会場でこんな感じだった。
「ミサキ様、どうなさったのですか?」
部屋の前で飛行部隊の兵士に呼び止められた。この人昨日大部屋にいたな。
『何か手伝う事ないかと思いまして』
「こちらは大丈夫です。王子や我々に任せてお部屋でおくつろぎください」
どいつもこいつもやたら俺を休ませようとしてくるな。そうはいくか。
『ちょっとルーシェンに話があります』
そう言うと兵士は大人しく引き下がった。
部屋に入ると、俺に気づいたルーシェンのオーラが変わった。戦闘モードがやわらぐ。
「シュウヘイ、話は終わったのか?」
『はい。如月と、雲の谷の使節の方とお話しました』
心配そうに俺を見ているので、にっこり笑って近づき、腕をまわしてギュッと抱きしめる。
しばらく抱きしめた後、ルーシェンは俺の顔を覗きこみ、親指で頬を撫でた。まさか泣きそうな気分だったことバレてるのかな。泣いてはいないけど。
「大丈夫か?」
『はい。開花の事を詳しく聞きました』
「……すまない。せっかくの旅行なのに」
『ルーシェンのせいじゃありません』
すごく癒やされるけど、部下がたくさんいるのでこれくらいにしておこう。会議中だったような気がする。
ルーシェンの隣に座るとアークさんとロベルトさんが顔を見合わせた。空気読まない俺にも分かるよ。邪魔ってやつだな。だけど俺も会議に参加したいから無視する。
「ミサキ様、我々は少し外しましょうか?」
『いえ大丈夫です。大人しく聞いてますから。邪魔ですか?』
「とんでもない。ミサキ様がいらっしゃると王子が機嫌を直すので隊員達は助かります」
「アーク、それはどういう意味だ」
ルーシェンが相変わらず憮然とした態度で答える。これ部下だったら怖いだろうな。アークさんくらいだと思う。動じてないのは。
「その通りの意味ですけど。ミサキ様との婚約旅行を邪魔されて、さっきからものすごく不機嫌じゃないですか」
アークさんとルーシェンの軽口の叩きあいの中、ロベルトさんは変わらずの無表情なのでチラ見すると目が合った。
「大丈夫ですか?」
『え?』
まさかロベルトさんに話しかけられると思っていなかったので、耳を疑った。俺、そんなにひどい顔してるのか? それとも心臓の事かな。
「異世界には魔物がいないと聞いているので」
『あ、今のところ大丈夫です。びっくりしましたけど……飛行部隊のみなさんは大丈夫なんですか?』
「我々は、いつでも王子やミサキ様の為に命を捨てる覚悟ができています」
『……』
みんなが危険な目にあったら、さすがに大丈夫じゃないかもしれない。いまから凶暴化した魔物との戦いが始まるのに俺だけ覚悟ができていない気がして仕方がなかった。
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