117 / 209
赤砂の街
12 無茶してもいいですよ
しおりを挟む
寝ている事が伝わって何故かお見舞いの品が大量に届けられたので、慌てて夕食会に顔を出す事にした。本当はもう少し大規模な晩餐会だったらしいけど、急遽規模を縮小したみたいだ。
正装して廊下を歩いていると、部屋にいた召使いの噂話が耳に入ってきた。
「それにしても、王太子妃様は本当に普通の人ね」
「王子様があれだけ素敵な方だから、もう少し美しい方かと思ったわ」
「魔力がないって本当かしら」
「でも、婚約式当日にクーデターが起こって、攫われたけど魔法を使って逃げたって聞いたわよ」
「……今回の花粉といい、クーデターといい、王子様が婚約されてから悪いことばかりね」
「王太子妃様、呪われてるんじゃない?」
「まさか……。でも続いてるわね」
「それに王子様も砦じゃなくてこの街を拠点に戦ってくださればいいのに」
「そうよね。長く滞在してたらお目に止まって私にも側室になれるチャンスがあるかも」
どこの世界でも女の人は噂好きだなと思っていると、隣でみるみるポリムの顔色が変わるのが分かった。
『ポリム?』
「許せませんわ。ミサキ様と王子様を侮辱するような発言……! 私ががつんと言ってやります」
『いいですよ。それより夕食会に遅れるから行きましょう』
「ミサキ様はお優しすぎます!」
ポリムの声が響いたのか、噂話はぱったり聞こえなくなって、焦ったように部屋を出て行く召使い達の足音が聞こえた。
「逃しましたわ。次は絶対に許しません」
『顔が普通なのは本当の事なんですけど』
昔から霊感もあるし、妖精さんに取り憑かれてたりしたから、もしかしたら本当に呪われてるのかも。
「でも、あんな召使いが何人束になっても、王子様がミサキ様以外の者に目をかけるなんて事はぜっったいにありません! 自信を持ってくださいませ!」
『あ、ありがとう』
ポリムがこんなに怒るなんて意外だ。でもちょっと嬉しい。
夕食会ではどことなくみんな沈んだ空気で、もしかしたらこんなに落ち込んで食べる夕食は久しぶりかもしれないと思った。ルーシェンや仲間たちと食べる食事はいつも楽しかったんだけどな。
でも珍しい料理がたくさん出たので、結局どれもこれも試してみたくて、結果たくさん食べてしまったけど。そしてルーシェンに、ちょっと呆れた顔で見られてしまった。でも出された料理は全部食べないともったいない気がするんだよな。
***
『明日は砦に向かうんですよね』
「ああ。国境警備の為の砦だから、あまり観光向きじゃない。豪華な宿もないし、食事のうまい店もないから残念だな」
夕食後はみんなが気を使ってくれたのか、早めにルーシェンと寝室に戻ってこられた。寝室にはルーシェンと俺の二人しかいない。隣の部屋にお風呂が用意されていたけど、そこにも侍女はいなかった。多分ルーシェンが俺に気を使ってみんなを追い出したんだろうな。新婚旅行っぽいことをほとんどしていないから。
オアシスがあるとはいえ、この地方では水が貴重だから広いお風呂なんかは無いけど、隣の部屋には俺が王宮の15階で使っていたようなバスタブがある。ポリムやフィオネさんが用意してくれたお湯と水が、いろいろなお風呂用の薬と一緒に置かれてる。先にお風呂に入ろうか悩んで寝室に戻ると、ルーシェンが剣を枕元に置き、ベッドに腰掛けて上着を脱いでいた。
近づいて無言で抱きつき、そのままベッドに押し倒す。ふわりと暖かい光に包まれてすごく気持ちいい。胸に耳をくっつけて心臓の音を聞いていると、ルーシェンがぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「今日は疲れたな」
『ルーシェンもですか?』
「精神的に……かなり」
『疲れてるように見えなかったです』
「一応王子様だからな」
『よっ、さすが王子様! かっこいいぞ!』
「前から思っていたが、それはなんなんだ?」
『いえ、何でもないです』
ルーシェンの頭を撫でる手が止まり、背中におりてくる。ただ腰を撫でられただけなのに、ぞわりと何か耐えられないような感覚が身体の中心を走り抜けた。
『砦に着いて魔物と戦う事になっても、絶対に無茶な事はしないでくださいね』
「ああ。分かってる」
俺は身体を起こして、ルーシェンの顔を覗き込んだ。
『でも今日は無茶なことをしてもいいですよ』
そう言って笑うと、引き寄せられ唇を塞がれた。
正装して廊下を歩いていると、部屋にいた召使いの噂話が耳に入ってきた。
「それにしても、王太子妃様は本当に普通の人ね」
「王子様があれだけ素敵な方だから、もう少し美しい方かと思ったわ」
「魔力がないって本当かしら」
「でも、婚約式当日にクーデターが起こって、攫われたけど魔法を使って逃げたって聞いたわよ」
「……今回の花粉といい、クーデターといい、王子様が婚約されてから悪いことばかりね」
「王太子妃様、呪われてるんじゃない?」
「まさか……。でも続いてるわね」
「それに王子様も砦じゃなくてこの街を拠点に戦ってくださればいいのに」
「そうよね。長く滞在してたらお目に止まって私にも側室になれるチャンスがあるかも」
どこの世界でも女の人は噂好きだなと思っていると、隣でみるみるポリムの顔色が変わるのが分かった。
『ポリム?』
「許せませんわ。ミサキ様と王子様を侮辱するような発言……! 私ががつんと言ってやります」
『いいですよ。それより夕食会に遅れるから行きましょう』
「ミサキ様はお優しすぎます!」
ポリムの声が響いたのか、噂話はぱったり聞こえなくなって、焦ったように部屋を出て行く召使い達の足音が聞こえた。
「逃しましたわ。次は絶対に許しません」
『顔が普通なのは本当の事なんですけど』
昔から霊感もあるし、妖精さんに取り憑かれてたりしたから、もしかしたら本当に呪われてるのかも。
「でも、あんな召使いが何人束になっても、王子様がミサキ様以外の者に目をかけるなんて事はぜっったいにありません! 自信を持ってくださいませ!」
『あ、ありがとう』
ポリムがこんなに怒るなんて意外だ。でもちょっと嬉しい。
夕食会ではどことなくみんな沈んだ空気で、もしかしたらこんなに落ち込んで食べる夕食は久しぶりかもしれないと思った。ルーシェンや仲間たちと食べる食事はいつも楽しかったんだけどな。
でも珍しい料理がたくさん出たので、結局どれもこれも試してみたくて、結果たくさん食べてしまったけど。そしてルーシェンに、ちょっと呆れた顔で見られてしまった。でも出された料理は全部食べないともったいない気がするんだよな。
***
『明日は砦に向かうんですよね』
「ああ。国境警備の為の砦だから、あまり観光向きじゃない。豪華な宿もないし、食事のうまい店もないから残念だな」
夕食後はみんなが気を使ってくれたのか、早めにルーシェンと寝室に戻ってこられた。寝室にはルーシェンと俺の二人しかいない。隣の部屋にお風呂が用意されていたけど、そこにも侍女はいなかった。多分ルーシェンが俺に気を使ってみんなを追い出したんだろうな。新婚旅行っぽいことをほとんどしていないから。
オアシスがあるとはいえ、この地方では水が貴重だから広いお風呂なんかは無いけど、隣の部屋には俺が王宮の15階で使っていたようなバスタブがある。ポリムやフィオネさんが用意してくれたお湯と水が、いろいろなお風呂用の薬と一緒に置かれてる。先にお風呂に入ろうか悩んで寝室に戻ると、ルーシェンが剣を枕元に置き、ベッドに腰掛けて上着を脱いでいた。
近づいて無言で抱きつき、そのままベッドに押し倒す。ふわりと暖かい光に包まれてすごく気持ちいい。胸に耳をくっつけて心臓の音を聞いていると、ルーシェンがぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「今日は疲れたな」
『ルーシェンもですか?』
「精神的に……かなり」
『疲れてるように見えなかったです』
「一応王子様だからな」
『よっ、さすが王子様! かっこいいぞ!』
「前から思っていたが、それはなんなんだ?」
『いえ、何でもないです』
ルーシェンの頭を撫でる手が止まり、背中におりてくる。ただ腰を撫でられただけなのに、ぞわりと何か耐えられないような感覚が身体の中心を走り抜けた。
『砦に着いて魔物と戦う事になっても、絶対に無茶な事はしないでくださいね』
「ああ。分かってる」
俺は身体を起こして、ルーシェンの顔を覗き込んだ。
『でも今日は無茶なことをしてもいいですよ』
そう言って笑うと、引き寄せられ唇を塞がれた。
8
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件
竜也りく
BL
「最悪だ……」
その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。
イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。
入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。
イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。
しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる