好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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赤砂の街

12 無茶してもいいですよ

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 寝ている事が伝わって何故かお見舞いの品が大量に届けられたので、慌てて夕食会に顔を出す事にした。本当はもう少し大規模な晩餐会だったらしいけど、急遽規模を縮小したみたいだ。
 正装して廊下を歩いていると、部屋にいた召使いの噂話が耳に入ってきた。

「それにしても、王太子妃様は本当に普通の人ね」
「王子様があれだけ素敵な方だから、もう少し美しい方かと思ったわ」
「魔力がないって本当かしら」
「でも、婚約式当日にクーデターが起こって、攫われたけど魔法を使って逃げたって聞いたわよ」
「……今回の花粉といい、クーデターといい、王子様が婚約されてから悪いことばかりね」
「王太子妃様、呪われてるんじゃない?」
「まさか……。でも続いてるわね」
「それに王子様も砦じゃなくてこの街を拠点に戦ってくださればいいのに」
「そうよね。長く滞在してたらお目に止まって私にも側室になれるチャンスがあるかも」

 どこの世界でも女の人は噂好きだなと思っていると、隣でみるみるポリムの顔色が変わるのが分かった。

『ポリム?』
「許せませんわ。ミサキ様と王子様を侮辱するような発言……! 私ががつんと言ってやります」
『いいですよ。それより夕食会に遅れるから行きましょう』
「ミサキ様はお優しすぎます!」

 ポリムの声が響いたのか、噂話はぱったり聞こえなくなって、焦ったように部屋を出て行く召使い達の足音が聞こえた。

「逃しましたわ。次は絶対に許しません」
『顔が普通なのは本当の事なんですけど』

 昔から霊感もあるし、妖精さんに取り憑かれてたりしたから、もしかしたら本当に呪われてるのかも。

「でも、あんな召使いが何人束になっても、王子様がミサキ様以外の者に目をかけるなんて事はぜっったいにありません! 自信を持ってくださいませ!」
『あ、ありがとう』

 ポリムがこんなに怒るなんて意外だ。でもちょっと嬉しい。

 夕食会ではどことなくみんな沈んだ空気で、もしかしたらこんなに落ち込んで食べる夕食は久しぶりかもしれないと思った。ルーシェンや仲間たちと食べる食事はいつも楽しかったんだけどな。
 でも珍しい料理がたくさん出たので、結局どれもこれも試してみたくて、結果たくさん食べてしまったけど。そしてルーシェンに、ちょっと呆れた顔で見られてしまった。でも出された料理は全部食べないともったいない気がするんだよな。

***

『明日は砦に向かうんですよね』
「ああ。国境警備の為の砦だから、あまり観光向きじゃない。豪華な宿もないし、食事のうまい店もないから残念だな」

 夕食後はみんなが気を使ってくれたのか、早めにルーシェンと寝室に戻ってこられた。寝室にはルーシェンと俺の二人しかいない。隣の部屋にお風呂が用意されていたけど、そこにも侍女はいなかった。多分ルーシェンが俺に気を使ってみんなを追い出したんだろうな。新婚旅行っぽいことをほとんどしていないから。

 オアシスがあるとはいえ、この地方では水が貴重だから広いお風呂なんかは無いけど、隣の部屋には俺が王宮の15階で使っていたようなバスタブがある。ポリムやフィオネさんが用意してくれたお湯と水が、いろいろなお風呂用の薬と一緒に置かれてる。先にお風呂に入ろうか悩んで寝室に戻ると、ルーシェンが剣を枕元に置き、ベッドに腰掛けて上着を脱いでいた。
 近づいて無言で抱きつき、そのままベッドに押し倒す。ふわりと暖かい光に包まれてすごく気持ちいい。胸に耳をくっつけて心臓の音を聞いていると、ルーシェンがぽんぽんと頭を撫でてくれた。

「今日は疲れたな」
『ルーシェンもですか?』
「精神的に……かなり」
『疲れてるように見えなかったです』
「一応王子様だからな」
『よっ、さすが王子様! かっこいいぞ!』
「前から思っていたが、それはなんなんだ?」
『いえ、何でもないです』

 ルーシェンの頭を撫でる手が止まり、背中におりてくる。ただ腰を撫でられただけなのに、ぞわりと何か耐えられないような感覚が身体の中心を走り抜けた。

『砦に着いて魔物と戦う事になっても、絶対に無茶な事はしないでくださいね』
「ああ。分かってる」

 俺は身体を起こして、ルーシェンの顔を覗き込んだ。

『でも今日は無茶なことをしてもいいですよ』

そう言って笑うと、引き寄せられ唇を塞がれた。
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