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赤砂の街

11 これは多分デート

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『……分かりました』
「本当に?」
『はい。心臓を治して戻ってきます』

 ルーシェンがぎゅっと抱きついたまま離れないので、背中を撫でながらそう言ってみた。
 さっきまで会議であんなに部下に恐れられていたのに、俺と二人でいる時は本当に甘えたがりなんだよな。誰に言っても信じてくれないけど(フィオネさんなら信じてくれるかも)

『だからルーシェンもみんなも絶対に無事でいてください』
「ああ。約束する」

 出来るかどうかも分からない約束だけど、それ以外の事を想像したくないからそうなると信じよう。頭が良くてハイスペックなルーシェンならきっと、みんなを助けて自分も無傷で魔物なんか討伐できるはずだ。隣国に援軍に向かった王様や部長、王妃様だって強いに決まってる。

 二人で約束を交わした後、しばらくルーシェンが書き込んだ巻物をまとめるのを手伝う。忙しすぎて全然イチャイチャする暇がないから、今日の夜だけは絶対に仕事に邪魔されずにいちゃつこうと心に決めてルーシェンにもしつこく言っておいた。

 巻物をまとめ終わったので、それを各場所に配布しに行くことにする。本当は会議の時に渡せば済むんだけど、ルーシェンが赤砂の街を観光できない俺のために気分転換になるような事を考えてくれたらしい。

 それで二人で赤砂の街の兵士に怒号をとばしているロベルトさんに巻物を渡すついでに訓練を眺め、武器倉庫や食料保管庫を視察し、ついでに赤砂の街のメインストリートを歩いて赤砂の街の名産品をチェックして歩いた。
 これはもうデートと言って差し支えないやつだろうな。途中でおいしそうな果物のジュースを買って(欲しいと言ったら譲二さんが買いに行ってくれた)ルーシェンと二人で飲んだから完全にデートだ。
 花粉の飛散の話が伝わったのか、バタバタと店じまいしている店もあったけど、開いていたお店はみんな俺とルーシェンを歓迎してくれた。ルーシェンの人気がありすぎて有名芸能人になったみたいにどこでも人だかりが出来たけど、手を繋いで歩いたおかげでネガティブなことは考えなくてすんだ。

 夕方の会議も出ようと思っていたのに、自分で思っていたより疲れたのか、領主の館に戻ってから少しだけ寝てしまった。目を覚ますとポリムがいて、豪華なうちわであおいでくれてる。

『ルーシェンは?』
「会議に参加されてますわ」
『参加しようと思ってたのに』
「会議は明日もありますから大丈夫です。それよりもミサキ様はもう少し休んでくださいませ。慣れない街へ来られて体調を崩されたら大変です」
『分かりました』

 この国に来たばかりの頃は、もっとハードな旅をしていたような気がするけど、最近みんなに心配してもらうからか、ちょっと弱くなったような気がする。

「今日はここに泊まって、明日は国境の方の砦に移動するそうですよ。その後は、ミサキ様は雲の谷へ行かれるんですか?」
『多分そうすると思います』
「王子様と離れるのは寂しいですわね……」
『そうですね』

 ポリムがしみじみと言うので、俺もさみしくなってきた。
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