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砦
5 なんだか泣けてきた
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「ミサキ様……あなたは、無茶です……」
『すみません』
血塗れで横たわる譲二さんに怒られている。正座して譲二さんの片手を握っていると、泣き顔のポリムに、回復魔法を使うので離れてくださいとお願いされた。
そっか、俺が近くにいたせいでポリムは防御や回復の魔法を充分に使えなかったんだ。俺が変な呪いの印を胸に持っているから。
少し離れて譲二さんの傷が治るのを見守る。良かった、あれほど痛々しかった傷も火傷もポリムの魔法で治っていく。
「ポリム、俺はもういいからミサキ様に薬を」
「そうですわね。あとはご自分でどうぞ」
譲二さんは傷が治ると身体を起こして、血塗れの手に握っていた何かを見つめた。
『譲二さん、それ何ですか?』
俺が聞くと、譲二さんは少しだけ誇らしそうに口元を緩める。
「火竜の牙です。手に入れました」
その後、四階と三階にいたみんなで、開いていた穴を塞ぎ、それから別の窓も出入り口も塞いだ。
俺はたいして傷も負っていないと思っていたけど、擦り傷と火傷がいくつかあってポリムに泣かれてしまった。
「ミサキ様の可愛いお顔に傷が……ミサキ様にも王子様にも顔向けできません」
『ポリム、泣かないでください。薬を塗れば治ります』
それに、譲二さんが取ってくれた火竜の牙は、きっと万能薬の素材になる。だからこんな傷はたいしたことじゃない。みんなを無傷で守れたことの方が大事だ。
***
それからしばらくして、パタパタと窓の外に何かが当たる音が聞こえてきた。火時計を見ると、ルーシェン達が外に出て行ってから三時間くらい過ぎている。
「雨が降ってきたみたいですわね」
『ルーシェン達、大丈夫でしょうか』
「もう一度様子を見てまいります」
譲二さんが立ち上がった時、上の階が騒がしくなった。俺は急いで上の階に向かう。
壊れかけた階段からびしょ濡れのアークさんが飛び降りて来た。
『アークさん、大丈夫ですか⁉︎』
「ミサキ様、こんなところに出てきちゃダメですよ」
疲れてはいるけど笑顔のアークさんを見て少し安心する。
『ルーシェンは?』
「まだ上にいらっしゃいます。襲ってきた火竜や妖鳥は全て倒しました。一頭ほど火竜が下の階を攻撃しているのが分かったので心配していましたが、その様子だと大丈夫のようですね」
『ありがとうございます! アークさん』
譲二さんに手伝ってもらって壊れた階段をよじ登り、地上に出ると建物が見事に破壊されているのに気付いて言葉を失った。庭園のあちこちは燃えていて、焼け焦げた残骸から煙が出ていた。
空は真っ暗で分厚い雲から横殴りの雨が降り注いでいる。
『ルーシェン‼︎』
「ミサキ様、こちらを」
防水マントをポリムと譲二さんがかぶせてくれた。
ルーシェンを探すと、いつかの妖花の討伐の時のように残って部下に指示を出しているルーシェンの姿が見えた。走っていってびしょ濡れのルーシェンに飛びつく。
「シュウヘイ⁉︎」
『無事で良かったです……』
ぎゅっと抱きしめていると、近くにいた飛行部隊の兵士が気を利かせてくれた。
「王子、ここは我々に任せて先に室内にお入りください。ミサキ様が濡れてしまいます」
その言葉に俺ははっとした。戦っていたのはルーシェンだけじゃないんだ。あわててルーシェンに飛びつくのをやめる。
『すみません、邪魔をして。皆さんご無事ですか?』
俺がそう聞くと、びっくりした事に隊員は膝をついて俺に正式な挨拶をした。隊員の戦闘オーラみたいなものが強く光り輝く。
「ミサキ様と王子のために、全力で戦いました。まだ何時間でも戦えます。どうぞ安心してお休みください」
周りを見ると、飛行部隊の隊員達はみんなこっちを見て礼をとっていた。不意打ちで目の奥が熱くなる。
魔法なのか、身分制度のせいなのか、それとも別の感情的な何かなのか分からない。今、飛行部隊の隊員のオーラを輝かせたのは俺の存在だと思う。みんな俺の事を慕ってくれて、守ろうとしてくれてる。それがストレートに伝わってなんだか泣けてきた。
俺は異世界人で魔力なしの男だから、きっとうわべだけの敬意しか貰えないと思っていた。でもそれは間違いだった。みんなの気持ちに応えられるのかわからなくて、怖いような嬉しいような足元がおぼつかない感覚にとらわれる。
「シュウヘイ、もう大丈夫だ。濡れるから部屋に入ろう」
ルーシェンが泣いている俺を不安からだと勘違いして頭を撫でてくれる。
『ありがとうございます』
まだ残って作業している隊員達に頭を下げて、俺は地下の部屋に戻った。
『すみません』
血塗れで横たわる譲二さんに怒られている。正座して譲二さんの片手を握っていると、泣き顔のポリムに、回復魔法を使うので離れてくださいとお願いされた。
そっか、俺が近くにいたせいでポリムは防御や回復の魔法を充分に使えなかったんだ。俺が変な呪いの印を胸に持っているから。
少し離れて譲二さんの傷が治るのを見守る。良かった、あれほど痛々しかった傷も火傷もポリムの魔法で治っていく。
「ポリム、俺はもういいからミサキ様に薬を」
「そうですわね。あとはご自分でどうぞ」
譲二さんは傷が治ると身体を起こして、血塗れの手に握っていた何かを見つめた。
『譲二さん、それ何ですか?』
俺が聞くと、譲二さんは少しだけ誇らしそうに口元を緩める。
「火竜の牙です。手に入れました」
その後、四階と三階にいたみんなで、開いていた穴を塞ぎ、それから別の窓も出入り口も塞いだ。
俺はたいして傷も負っていないと思っていたけど、擦り傷と火傷がいくつかあってポリムに泣かれてしまった。
「ミサキ様の可愛いお顔に傷が……ミサキ様にも王子様にも顔向けできません」
『ポリム、泣かないでください。薬を塗れば治ります』
それに、譲二さんが取ってくれた火竜の牙は、きっと万能薬の素材になる。だからこんな傷はたいしたことじゃない。みんなを無傷で守れたことの方が大事だ。
***
それからしばらくして、パタパタと窓の外に何かが当たる音が聞こえてきた。火時計を見ると、ルーシェン達が外に出て行ってから三時間くらい過ぎている。
「雨が降ってきたみたいですわね」
『ルーシェン達、大丈夫でしょうか』
「もう一度様子を見てまいります」
譲二さんが立ち上がった時、上の階が騒がしくなった。俺は急いで上の階に向かう。
壊れかけた階段からびしょ濡れのアークさんが飛び降りて来た。
『アークさん、大丈夫ですか⁉︎』
「ミサキ様、こんなところに出てきちゃダメですよ」
疲れてはいるけど笑顔のアークさんを見て少し安心する。
『ルーシェンは?』
「まだ上にいらっしゃいます。襲ってきた火竜や妖鳥は全て倒しました。一頭ほど火竜が下の階を攻撃しているのが分かったので心配していましたが、その様子だと大丈夫のようですね」
『ありがとうございます! アークさん』
譲二さんに手伝ってもらって壊れた階段をよじ登り、地上に出ると建物が見事に破壊されているのに気付いて言葉を失った。庭園のあちこちは燃えていて、焼け焦げた残骸から煙が出ていた。
空は真っ暗で分厚い雲から横殴りの雨が降り注いでいる。
『ルーシェン‼︎』
「ミサキ様、こちらを」
防水マントをポリムと譲二さんがかぶせてくれた。
ルーシェンを探すと、いつかの妖花の討伐の時のように残って部下に指示を出しているルーシェンの姿が見えた。走っていってびしょ濡れのルーシェンに飛びつく。
「シュウヘイ⁉︎」
『無事で良かったです……』
ぎゅっと抱きしめていると、近くにいた飛行部隊の兵士が気を利かせてくれた。
「王子、ここは我々に任せて先に室内にお入りください。ミサキ様が濡れてしまいます」
その言葉に俺ははっとした。戦っていたのはルーシェンだけじゃないんだ。あわててルーシェンに飛びつくのをやめる。
『すみません、邪魔をして。皆さんご無事ですか?』
俺がそう聞くと、びっくりした事に隊員は膝をついて俺に正式な挨拶をした。隊員の戦闘オーラみたいなものが強く光り輝く。
「ミサキ様と王子のために、全力で戦いました。まだ何時間でも戦えます。どうぞ安心してお休みください」
周りを見ると、飛行部隊の隊員達はみんなこっちを見て礼をとっていた。不意打ちで目の奥が熱くなる。
魔法なのか、身分制度のせいなのか、それとも別の感情的な何かなのか分からない。今、飛行部隊の隊員のオーラを輝かせたのは俺の存在だと思う。みんな俺の事を慕ってくれて、守ろうとしてくれてる。それがストレートに伝わってなんだか泣けてきた。
俺は異世界人で魔力なしの男だから、きっとうわべだけの敬意しか貰えないと思っていた。でもそれは間違いだった。みんなの気持ちに応えられるのかわからなくて、怖いような嬉しいような足元がおぼつかない感覚にとらわれる。
「シュウヘイ、もう大丈夫だ。濡れるから部屋に入ろう」
ルーシェンが泣いている俺を不安からだと勘違いして頭を撫でてくれる。
『ありがとうございます』
まだ残って作業している隊員達に頭を下げて、俺は地下の部屋に戻った。
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