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砦
7 黒い影
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赤い竜に追いかけられる夢を見て、汗びっしょりで目を覚ましたら真夜中で、隣にルーシェンはいなかった。
やられた。見張りするって言ったのに熟睡してしまうとかなんなんだ。そう思うのに疲れて身体が動かない。
あれ? これって久々にあった金縛りってやつじゃないか? 妖精さんの時とは違う、意識があるのに身体が寝ているから動けないやつ。指を動かそうとして断念した。身体が重すぎて無理だ。疲れてるのかな。このまま眠ろうか。
ふと、幽体離脱したあの時に似てると思った。あの時みたいに集中する。そうしたらあっさりと意識が身体を離れた。
うわ。また幽体離脱しちゃったよ。
くせになったらどうしよう。
ベッドに眠っている身体を眺めて、とりあえず短時間だけにしようと決める。前回は熱が出て大変だったからな。
とりあえず寝室の外に出ると扉の外に譲二さんが立っていた。譲二さんもしかして全然寝てないんじゃないか。後で見張りを交代してもらうように頼もう。
悪いと思いつつ、廊下をすいっと滑るように移動する。眠ってる人もいたけど起きて働いている人も大勢いた。
昔の要領で壁を通り抜けて上を目指すと、外はまだ雨が降っていた。分厚い雲に細くて弱い雨。
地上を見ると赤い小さな火がポツポツと燃えている。山火事みたいなものだろうか。ふわふわと近づいていってそれが火竜の吐いた炎から発生したものだと気づいた。
あちこちに火竜が倒れてる。大きさはさまざまだ。争った後なのか、周辺の樹々は焼け焦げていて、他にも魔物と思われる生き物の死骸がたくさん。このあたりに村や町がなくて良かった。
でもあの死骸を放置しておくと、そのうち妖花の芽が出てくるって事だよな。怖い花だ。
幸い炎は雨のおかげで消えようとしていた。この地方は雨が降らなくて砂漠が多いって聞いてたのに不思議だ。
そう思って上空を見ると、雲の隙間に白くて長い光が見えた。まさかと思うけどシロなのかな。
シロに近づこうか悩んで、やっぱりやめておこうと浮島に戻ることにする。あんまり意識が無かったらルーシェンが心配するし。
(え?)
上空に戻る途中、暗闇の中を動く何かの存在を感じて振り返った。
なんだろう。何かいた。闇と同じくらい黒い何か。
じっと目をこらして暗闇を見ていると、燃えていた森の一部が消えた。火竜の死骸も。何かに飲み込まれた。
大きな円形の黒い闇が地面を移動している。そして海面に鯨が口を出しエサを食べるように、大きな口で火竜の死骸を丸呑みした。
***
目が覚めて、身体が動くようになってた。今度はすんなり戻ってこられたみたいだ。汗をかいてるし身体はだるい。だけどそれは恐怖心からだ。
あの円形の黒いものは何だったんだろう。確かルーシェンと飛竜に乗った時に黒い円形の何かを見た。あれに違いない。怖かった。
ルーシェンはまだ戻っていなかったので、身体を起こして上着を羽織る。ベッドから起きて寝室の扉を開けると、幽体離脱中と同じように譲二さんが扉の外で待機していた。
「ミサキ様、どうされました?」
『ルーシェンは視察ですか?』
「はい。ですが浮島の外には出ていらっしゃいません。近隣に魔物がいないか確認と、飛竜の様子を見に」
『そうですか……』
「ミサキ様、顔色が優れないようです。まだ夜中です。もう少しお休みになられては?」
『大丈夫です』
顔色が悪いのは多分、幽体離脱で見たあの黒い魔物のせいだから。
『それより飛行部隊のみんなは休めてますか?』
「はい。交代で休息をとっていますから、ミサキ様が心配されることはありませんよ」
『譲二さんは寝てませんよね?』
少し強めに言うと、譲二さんも強めに返してきた。
「主を危険な目に合わせるような部下に休息など不要です」
うっ……これは火竜と戦ったことに対する嫌味だな。
『反省しているので休憩してください』
落ち込んでそう言うと、ルーシェンが寝室に戻ってきた。飛行部隊の部下を一人連れてる。
「王子、外の様子はいかがでしたか?」
「まだ雨が降っている。飛竜達にも異常はない。シュウヘイの言う通りだ。ジョージ、お前も休め」
「分かりました」
譲二さんが少し申し訳なさそうに俺を見てルーシェンに頭を下げる。譲二さんが飛行部隊の隊員と交代するのを見届けると、俺とルーシェンも寝室に戻った。
やられた。見張りするって言ったのに熟睡してしまうとかなんなんだ。そう思うのに疲れて身体が動かない。
あれ? これって久々にあった金縛りってやつじゃないか? 妖精さんの時とは違う、意識があるのに身体が寝ているから動けないやつ。指を動かそうとして断念した。身体が重すぎて無理だ。疲れてるのかな。このまま眠ろうか。
ふと、幽体離脱したあの時に似てると思った。あの時みたいに集中する。そうしたらあっさりと意識が身体を離れた。
うわ。また幽体離脱しちゃったよ。
くせになったらどうしよう。
ベッドに眠っている身体を眺めて、とりあえず短時間だけにしようと決める。前回は熱が出て大変だったからな。
とりあえず寝室の外に出ると扉の外に譲二さんが立っていた。譲二さんもしかして全然寝てないんじゃないか。後で見張りを交代してもらうように頼もう。
悪いと思いつつ、廊下をすいっと滑るように移動する。眠ってる人もいたけど起きて働いている人も大勢いた。
昔の要領で壁を通り抜けて上を目指すと、外はまだ雨が降っていた。分厚い雲に細くて弱い雨。
地上を見ると赤い小さな火がポツポツと燃えている。山火事みたいなものだろうか。ふわふわと近づいていってそれが火竜の吐いた炎から発生したものだと気づいた。
あちこちに火竜が倒れてる。大きさはさまざまだ。争った後なのか、周辺の樹々は焼け焦げていて、他にも魔物と思われる生き物の死骸がたくさん。このあたりに村や町がなくて良かった。
でもあの死骸を放置しておくと、そのうち妖花の芽が出てくるって事だよな。怖い花だ。
幸い炎は雨のおかげで消えようとしていた。この地方は雨が降らなくて砂漠が多いって聞いてたのに不思議だ。
そう思って上空を見ると、雲の隙間に白くて長い光が見えた。まさかと思うけどシロなのかな。
シロに近づこうか悩んで、やっぱりやめておこうと浮島に戻ることにする。あんまり意識が無かったらルーシェンが心配するし。
(え?)
上空に戻る途中、暗闇の中を動く何かの存在を感じて振り返った。
なんだろう。何かいた。闇と同じくらい黒い何か。
じっと目をこらして暗闇を見ていると、燃えていた森の一部が消えた。火竜の死骸も。何かに飲み込まれた。
大きな円形の黒い闇が地面を移動している。そして海面に鯨が口を出しエサを食べるように、大きな口で火竜の死骸を丸呑みした。
***
目が覚めて、身体が動くようになってた。今度はすんなり戻ってこられたみたいだ。汗をかいてるし身体はだるい。だけどそれは恐怖心からだ。
あの円形の黒いものは何だったんだろう。確かルーシェンと飛竜に乗った時に黒い円形の何かを見た。あれに違いない。怖かった。
ルーシェンはまだ戻っていなかったので、身体を起こして上着を羽織る。ベッドから起きて寝室の扉を開けると、幽体離脱中と同じように譲二さんが扉の外で待機していた。
「ミサキ様、どうされました?」
『ルーシェンは視察ですか?』
「はい。ですが浮島の外には出ていらっしゃいません。近隣に魔物がいないか確認と、飛竜の様子を見に」
『そうですか……』
「ミサキ様、顔色が優れないようです。まだ夜中です。もう少しお休みになられては?」
『大丈夫です』
顔色が悪いのは多分、幽体離脱で見たあの黒い魔物のせいだから。
『それより飛行部隊のみんなは休めてますか?』
「はい。交代で休息をとっていますから、ミサキ様が心配されることはありませんよ」
『譲二さんは寝てませんよね?』
少し強めに言うと、譲二さんも強めに返してきた。
「主を危険な目に合わせるような部下に休息など不要です」
うっ……これは火竜と戦ったことに対する嫌味だな。
『反省しているので休憩してください』
落ち込んでそう言うと、ルーシェンが寝室に戻ってきた。飛行部隊の部下を一人連れてる。
「王子、外の様子はいかがでしたか?」
「まだ雨が降っている。飛竜達にも異常はない。シュウヘイの言う通りだ。ジョージ、お前も休め」
「分かりました」
譲二さんが少し申し訳なさそうに俺を見てルーシェンに頭を下げる。譲二さんが飛行部隊の隊員と交代するのを見届けると、俺とルーシェンも寝室に戻った。
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