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雲の谷へ
1 なんかすみません
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「ミサキ様、お待ちしてました」
『ジョシュ! いてくれて嬉しいです』
浮島で待っていたのはジョシュと仲間の料理人チーム、俺の身の回りの世話をしてくれる従者さん達、飛竜とそのトレーナー、ロベルトさんの部下の飛行部隊。全部で十五人くらいかな。
浮島を動かしているホレスと見張りの飛行部隊兵、それに飛竜はもちろんいなかったけど、あとはみんな浮島の地下一階で俺たちがやってくるのを待っていた。
『みなさん、雲の谷までよろしくお願いします』
簡単な挨拶をすると、拍手が起こる。もしかしてだけど、この飛行船の責任者って立場上では俺なんじゃ……。
そう思うとずっしりと責任がのしかかってきた。この人たちを安全に雲の谷まで送り届けないといけないんだよな。すごいプレッシャーだ。
と、そんなことを考えていたら、ロベルトさんが口を開いた。
「いいかお前たち、雲の谷へ向かうルート上には危険な魔物が数多く存在している。今も砦付近に黒鳥の大群がいて、この浮島にもそのうち到達するだろう。だが我々はルーシェン王子よりミサキ様の警護を命じられた。決して気を抜くな。命にかえてもミサキ様を守れ。足手まといな人間は森へ捨てていくからそのつもりでいろ」
ヒイィ……。何この怖い挨拶。
いつもは笑顔のアークさんがフォローに回っていて少しだけ場がなごむけど、すました顔をしている如月にはアークさんの代わりをするつもりはないらしい。おかげでみんなに張り詰めた緊張感が生まれ、ビシッとロベルトさんに頭を下げていた。やっぱり俺は責任者とか無理だな。
「ハルバート殿、黒鳥が飛来した時は援護していただきたい。ジョージ、お前は地下三階にミサキ様をお連れしろ」
「もちろんです」
「分かりました」
うーん、ロベルトさん本当、仕事出来るな。心なしか譲二さんがキラキラしてる。隊長カッコいいとか思ってそうだな。
***
「ロベルト隊長しびれる~!」
部屋にお茶とお菓子を持ってきたジョシュがそう言った。ロベルトさんにときめいてるのは譲二さんだけじゃなかった。
「やはり隊長はさすがです」
譲二さんも頷いてる。
『ジョシュはロベルトさんのファンなんですか?』
「飛行部隊の方はみんなカッコいいけど、やっぱり第一部隊隊長のロベルトさんに目の前で檄を飛ばされるとしびれるよね。王子様の期待に応えようと張り切ってるロベルト隊長……最高」
ジョシュには相変わらず癒されるなぁ。この非常事態にもあまり動揺してないところがすごいよ。俺も見習いたい。
唯一、俺の髪をセットしていたポリムだけは少し不満そうだ。
「私は正直アーク様が良かったですわ。アーク様はお優しいですもの。ロベルト様は顔が怖いです。でも、アーク様の代理のハルバート様も、独特の雰囲気があって素敵でしたわ。魔法に関してはグレイブ部長に次ぐ実力の持ち主なんですってね」
『独特の雰囲気?』
「異世界担当課の方ですから、世界各国だけでなく異世界の事情にも詳しいとか。それでどこか異国の雰囲気を漂わせてますの。ミサキ様も独特ですけれど」
如月が独特なのはなんとなく分かるな。日本にいる時も普通に街並みの風景に溶け込んでたし、あれは一種の才能だと思う。
『ポリムには恋人はいないんですか? 譲二さんは?』
そういえば二人のプライベートなことを何も知らないと思って質問したのに、二人は首を振った。
「今は仕事が楽しいので恋愛などしている暇はありませんの」
「任務をまっとうするのみです」
なんだろう……この二人の前で今までルーシェンとイチャイチャしてたのか。なんだか申し訳ない気持ちになってきた。
『なんかすみません……』
「ミサキ様が謝ることなんてなにもありませんわ。王子様とミサキ様のお世話ができて、幸せそうなお二人を間近で拝見できて最高に幸せです」
そうなのか……。俺にはよく分からない世界だ。幸せならいいか。
ジョシュのくれたお菓子をかじりながら、みんなの話を聞く。しばらくの間、みんなが部屋で話してくれて助かった。多分ルーシェンと別れたばかりの俺が寂しくないように、気を使ってくれたんだと思う。黒鳥が追いかけて来ているから、こんなにのんびりとは出来ないと思っていたけど、寂しくて仕方がなかったから、みんなの配慮がありがたかった。
『ジョシュ! いてくれて嬉しいです』
浮島で待っていたのはジョシュと仲間の料理人チーム、俺の身の回りの世話をしてくれる従者さん達、飛竜とそのトレーナー、ロベルトさんの部下の飛行部隊。全部で十五人くらいかな。
浮島を動かしているホレスと見張りの飛行部隊兵、それに飛竜はもちろんいなかったけど、あとはみんな浮島の地下一階で俺たちがやってくるのを待っていた。
『みなさん、雲の谷までよろしくお願いします』
簡単な挨拶をすると、拍手が起こる。もしかしてだけど、この飛行船の責任者って立場上では俺なんじゃ……。
そう思うとずっしりと責任がのしかかってきた。この人たちを安全に雲の谷まで送り届けないといけないんだよな。すごいプレッシャーだ。
と、そんなことを考えていたら、ロベルトさんが口を開いた。
「いいかお前たち、雲の谷へ向かうルート上には危険な魔物が数多く存在している。今も砦付近に黒鳥の大群がいて、この浮島にもそのうち到達するだろう。だが我々はルーシェン王子よりミサキ様の警護を命じられた。決して気を抜くな。命にかえてもミサキ様を守れ。足手まといな人間は森へ捨てていくからそのつもりでいろ」
ヒイィ……。何この怖い挨拶。
いつもは笑顔のアークさんがフォローに回っていて少しだけ場がなごむけど、すました顔をしている如月にはアークさんの代わりをするつもりはないらしい。おかげでみんなに張り詰めた緊張感が生まれ、ビシッとロベルトさんに頭を下げていた。やっぱり俺は責任者とか無理だな。
「ハルバート殿、黒鳥が飛来した時は援護していただきたい。ジョージ、お前は地下三階にミサキ様をお連れしろ」
「もちろんです」
「分かりました」
うーん、ロベルトさん本当、仕事出来るな。心なしか譲二さんがキラキラしてる。隊長カッコいいとか思ってそうだな。
***
「ロベルト隊長しびれる~!」
部屋にお茶とお菓子を持ってきたジョシュがそう言った。ロベルトさんにときめいてるのは譲二さんだけじゃなかった。
「やはり隊長はさすがです」
譲二さんも頷いてる。
『ジョシュはロベルトさんのファンなんですか?』
「飛行部隊の方はみんなカッコいいけど、やっぱり第一部隊隊長のロベルトさんに目の前で檄を飛ばされるとしびれるよね。王子様の期待に応えようと張り切ってるロベルト隊長……最高」
ジョシュには相変わらず癒されるなぁ。この非常事態にもあまり動揺してないところがすごいよ。俺も見習いたい。
唯一、俺の髪をセットしていたポリムだけは少し不満そうだ。
「私は正直アーク様が良かったですわ。アーク様はお優しいですもの。ロベルト様は顔が怖いです。でも、アーク様の代理のハルバート様も、独特の雰囲気があって素敵でしたわ。魔法に関してはグレイブ部長に次ぐ実力の持ち主なんですってね」
『独特の雰囲気?』
「異世界担当課の方ですから、世界各国だけでなく異世界の事情にも詳しいとか。それでどこか異国の雰囲気を漂わせてますの。ミサキ様も独特ですけれど」
如月が独特なのはなんとなく分かるな。日本にいる時も普通に街並みの風景に溶け込んでたし、あれは一種の才能だと思う。
『ポリムには恋人はいないんですか? 譲二さんは?』
そういえば二人のプライベートなことを何も知らないと思って質問したのに、二人は首を振った。
「今は仕事が楽しいので恋愛などしている暇はありませんの」
「任務をまっとうするのみです」
なんだろう……この二人の前で今までルーシェンとイチャイチャしてたのか。なんだか申し訳ない気持ちになってきた。
『なんかすみません……』
「ミサキ様が謝ることなんてなにもありませんわ。王子様とミサキ様のお世話ができて、幸せそうなお二人を間近で拝見できて最高に幸せです」
そうなのか……。俺にはよく分からない世界だ。幸せならいいか。
ジョシュのくれたお菓子をかじりながら、みんなの話を聞く。しばらくの間、みんなが部屋で話してくれて助かった。多分ルーシェンと別れたばかりの俺が寂しくないように、気を使ってくれたんだと思う。黒鳥が追いかけて来ているから、こんなにのんびりとは出来ないと思っていたけど、寂しくて仕方がなかったから、みんなの配慮がありがたかった。
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