好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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雲の谷

7 夜中の訪問者

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「ルーシェン……?」

 夢じゃないだろうか。それとも別人なのか。でもあのルーシェンを見間違えるはずがない。どうしてここにいるんだ? 砦はどうなったんだろう。いや、今はそんなことよりただ嬉しい。

「シュウヘイ⁉︎」

 振り向いたらやっぱりルーシェンだった。走っていって胸に飛び込む。いきなりだったのにルーシェンはしっかり抱きとめてくれた。

『ルーシェン……会いたかったです』
「シュウヘイ、俺も会いたかった」
『本物ですよね』
「恋人を間違えるのか?」
『間違えないです』

 胸に顔を押し付けると、少しだけ焼け焦げた匂いがした。炎の魔法のせいだろうか。あれからずっと戦っていたのかと思うと胸が痛んだ。

「浮島が墜落したと聞いて、心配でたまらなかった」
『せっかく準備してくれた浮き島なのに、墜落させてしまってすみません。動かなくて、森の中に置いてきてしまいました』
「気にするな。シュウヘイが無事ならそれでいい」
『私は大丈夫です。墜落の時も、雲の谷へ向かう時も、譲二さんやロベルトさんが守ってくれました』
「そうか」

 ルーシェンはしばらく俺をぎゅっと抱きしめてくれていたけど、急に腕を離し、俺の頬に触れ、顔を覗き込んだ。それから肩や腕、背中や足を確認する。

「シュウヘイ、本当に無事だろうな。どこも怪我はないか?」
『大丈夫です』

 眉間に皺がよってる。あんまり信じてないな。
 心臓のあたりに軽く残る魔法の染みにルーシェンの指が触れて身体がびくんと反応する。

「どうして裸なのか聞きたい所だが……この染みは、あの魔法使いの男の魔力痕か」
『はい。今治療中で、お風呂に入ってました』
「こんなに酷い傷だったんだな」

 本当は全身真っ黒だったんだけど、それは知られなくて良かった。かなり薄くなった染みでこんなに怒ってるから。

『ルーシェンは怪我してませんか? 砦の魔物は大丈夫ですか? どうして転移して来れたんですか?』
「砦は大丈夫だ。シュウヘイ達が出発してしばらく大型の魔物の攻撃が続いたが、今は小物しかいない。だから夜の見張りと指揮はアークに任せた。寝ると言って部屋に入り、こっそりシュウヘイに会いにきたんだ」

 子供みたいに笑ったルーシェンが愛おしくて、顔を引き寄せて唇にキスをする。数日しかたってないのにすごく久々な気分だ。舌を絡めてわざと音を立てた。だってここには俺とルーシェンしかいない。ルーシェンのキスは変わらず甘くて、幸せな気持ちよさに包まれた。

***

『じゃあ、フィオネさんだけ知ってるんですか』
「ああ。誰も部屋に入れるなと言ってあるが、アークは気づいているかもしれないな。だが砦の指揮官が転移魔法陣で避難していると知られたら、兵士たちの士気にかかわるから秘密だ」
『誰もルーシェンが避難するなんて思わないと思います。信頼されてる王子様だから。王太子妃は避難しましたけど』

 ちょっとだけ自虐すると、ルーシェンが頬をつついた。

「王子様は恋人が心配なんだ。王子の命令で非難しているのだからシュウヘイを悪く言う人間はいない」

 あれから手を繋いでルーシェンを俺のお風呂まで案内した。ダイコンの精霊たちが後ろからついてくる。
 それから一緒に回復の水入りのお風呂に入る事にした。浴槽は二人で入っても十分な広さだ。狭くてもいいけど。
 ルーシェンの服の紐を解いて脱がせていく。久々だからドキドキするな。

『朝には砦に戻るんですよね』
「ああ。何事もなければまた明日の夜ここに来る」

 それはすごく嬉しい。誰もいないから堂々とイチャイチャできるし誰にも邪魔されない。

「それにしても、ここは懐かしいな」
『王妃様の故郷ですよね。ルーシェンも子供の頃に遊びに来てたとか』
「子供の頃と、それから大怪我をした時に二度ほど利用した」
『毒を飲まされた時ですか?』
「ああ。シュウヘイに取り憑いていた侍女だ。それ以前にも一度怪我をして」
『護衛の兵士に襲われたんですか?』

 聞くとルーシェンは少し驚いた顔をした。

「よく知っているな。信頼していた護衛兵だったが、襲われて死にかけた」
『魔法村のお城の広間にいた兵士ですよね』
「……シュウヘイにはかなわないな。まさか護衛兵にも取り憑かれているんじゃないだろうな」
『それはないです』

 本当は名前もなぜか知ってるんだよな。ルーシェンがその護衛兵を好きだったこともなんとなく知ってる。妖精さんが夢で見せてくれた。あの時の治療でルーシェンも回復の泉を利用したんだな。

「シュウヘイ、せっかく二人きりなんだ。そんな話より」
『そうですね』

 ルーシェンの服を全部脱がせて、自分も脱ごうとしたら、パンツを脱ぐ前に抱えられてお風呂に入れられた。



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