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帰還
4 こいつは敵
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エルヴィン。あまり聞きたくない名前だった。初対面の印象は最悪だったし、変な夢も見たせいで俺の中でエルヴィンは敵認定されてる。でも、変な先入観はなくしてとりあえず状況を聞こう。ルーシェンの治療をしてくれてるんだから。
小型飛行船は砦に接岸し、アークさんを先頭にみんなで石造りの広場に降り立った。
なんか、ゾワゾワする。砦ってこんな雰囲気だっただろうか。何か大きな魔法のエネルギーみたいなものがあるような気がする。その源がどこなのか分からずキョロキョロしたけど、近くに魔物はいないし、外ではなさそうだ。つまり砦の中。
砦の兵士たちも俺たちに膝を突いて挨拶してくれたけど、なんだこの疲れ切った感じは。空気が澱んでる。みんな気づかないのか?
中に入るとさらに空気が悪くなった。ずっと肩に乗っていた大根の聖獣が小さくなってすぽっと俺の服の中に入る。
「ミサキ様、よくご無事でお戻りくださいました」
『フィオネさん!』
廊下の先で待っていたフィオネさんに飛びつこうとして、直前で踏みとどまる。フィオネさん、どこか変だ。
『フィオネさん、腕、どうしたんですか?』
フィオネさんは珍しく苦笑いを浮かべて膝を突く。両手が真っ白だ。
「私のことはよいのです。ミサキ様、王子をお守りできず申し訳ございません」
『フィオネさん……』
「フィオネ殿も王子と一緒に討伐に出られていたのです。その時に王子と一緒にいた一部隊が全員、ある魔物の状態異常の魔法を受けてこのようなことに」
『状態異常?』
「はい。石化、硬直、混乱、猛毒、意識障害、沈黙などの異常を起こす魔法です」
『それ、全部ですか?』
「はい」
それはけっこう普通の怪我よりやばいんじゃないだろうか。
フィオネさんは立ち上がり、俺たちを部屋に案内してくれた。以前ルーシェンのためにエルヴィンが用意したという部屋だ。フィオネさんが白い腕でノックをする。
『フィオネさん、腕使わない方がいいです』
「定期的に回復魔法を唱えていますので、まだ大丈夫です」
フィオネさんは再びノックをすると、アークさんも含めた従者を全員下がらせた。それから扉を開く。
「ミサキ様、どうぞお部屋に。魔力酔いにお気をつけくださいませ」
うっ。
部屋の中は眩暈がするほど魔法の力に満ちていた。でも俺が気になったのは別のことだ。
「ルーシェン……」
ベッドにルーシェンが眠っている。その隣に座るエルヴィン。ルーシェンの首に腕をまわしている。一瞬怒りでキレそうになったけど、ルーシェンが心配だからその感情はいったん見て見ぬふりをした。ベッドに駆けよる。
『ルーシェン! 大丈夫ですか? 修平です。戻って来ました』
そこまで言った直後、見えない空気の圧力を感じて後方に倒れそうになる。フィオネさんが慌てて支えてくれた。
「ミサキ様、どうなさいました? お気をたしかに」
気は確かだけど、冷静でいられる自信がない。ベッド脇に座っていたエルヴィンを睨みつける。今のはこいつの魔法だからだ。やっぱりこいつは敵だ。間違いない。
「ミサキ様、支援物資を用意して砦に戻られたとか。ルーシェン王子に代わりお礼を申し上げます」
エルヴィンがにこやかに笑ってそう告げる。めちゃくちゃラフな服装してるんだけど。こいつ砦の兵士で隊長なんじゃないのか? なんで回復担当してるんだよ。
『エルヴィン、外してもらえませんか? ルーシェンと二人にさせてください』
「それは無理というものです。私が回復魔法を唱えていなければ、王子の症状は悪化します。それともミサキ様が代わって魔法をかけてくださるのですか?」
黙っている俺に、エルヴィンは嫌味を続けた。
「失礼、ミサキ様は異世界の方でしたね。それならこのお部屋から外した方がいいのはミサキ様の方では? たしか、認定式ですら魔力酔いで熱を出されたとか」
『フィオネさん、ポリムと如月を連れて来てください』
「畏まりました」
フィオネさんが部屋を出て行く。
『エルヴィン、回復は二人にやってもらいます。二人が来たら部屋から出て行ってください』
そう告げると、エルヴィンの笑みが消えた。悪いけど負ける気はないからな。
小型飛行船は砦に接岸し、アークさんを先頭にみんなで石造りの広場に降り立った。
なんか、ゾワゾワする。砦ってこんな雰囲気だっただろうか。何か大きな魔法のエネルギーみたいなものがあるような気がする。その源がどこなのか分からずキョロキョロしたけど、近くに魔物はいないし、外ではなさそうだ。つまり砦の中。
砦の兵士たちも俺たちに膝を突いて挨拶してくれたけど、なんだこの疲れ切った感じは。空気が澱んでる。みんな気づかないのか?
中に入るとさらに空気が悪くなった。ずっと肩に乗っていた大根の聖獣が小さくなってすぽっと俺の服の中に入る。
「ミサキ様、よくご無事でお戻りくださいました」
『フィオネさん!』
廊下の先で待っていたフィオネさんに飛びつこうとして、直前で踏みとどまる。フィオネさん、どこか変だ。
『フィオネさん、腕、どうしたんですか?』
フィオネさんは珍しく苦笑いを浮かべて膝を突く。両手が真っ白だ。
「私のことはよいのです。ミサキ様、王子をお守りできず申し訳ございません」
『フィオネさん……』
「フィオネ殿も王子と一緒に討伐に出られていたのです。その時に王子と一緒にいた一部隊が全員、ある魔物の状態異常の魔法を受けてこのようなことに」
『状態異常?』
「はい。石化、硬直、混乱、猛毒、意識障害、沈黙などの異常を起こす魔法です」
『それ、全部ですか?』
「はい」
それはけっこう普通の怪我よりやばいんじゃないだろうか。
フィオネさんは立ち上がり、俺たちを部屋に案内してくれた。以前ルーシェンのためにエルヴィンが用意したという部屋だ。フィオネさんが白い腕でノックをする。
『フィオネさん、腕使わない方がいいです』
「定期的に回復魔法を唱えていますので、まだ大丈夫です」
フィオネさんは再びノックをすると、アークさんも含めた従者を全員下がらせた。それから扉を開く。
「ミサキ様、どうぞお部屋に。魔力酔いにお気をつけくださいませ」
うっ。
部屋の中は眩暈がするほど魔法の力に満ちていた。でも俺が気になったのは別のことだ。
「ルーシェン……」
ベッドにルーシェンが眠っている。その隣に座るエルヴィン。ルーシェンの首に腕をまわしている。一瞬怒りでキレそうになったけど、ルーシェンが心配だからその感情はいったん見て見ぬふりをした。ベッドに駆けよる。
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そこまで言った直後、見えない空気の圧力を感じて後方に倒れそうになる。フィオネさんが慌てて支えてくれた。
「ミサキ様、どうなさいました? お気をたしかに」
気は確かだけど、冷静でいられる自信がない。ベッド脇に座っていたエルヴィンを睨みつける。今のはこいつの魔法だからだ。やっぱりこいつは敵だ。間違いない。
「ミサキ様、支援物資を用意して砦に戻られたとか。ルーシェン王子に代わりお礼を申し上げます」
エルヴィンがにこやかに笑ってそう告げる。めちゃくちゃラフな服装してるんだけど。こいつ砦の兵士で隊長なんじゃないのか? なんで回復担当してるんだよ。
『エルヴィン、外してもらえませんか? ルーシェンと二人にさせてください』
「それは無理というものです。私が回復魔法を唱えていなければ、王子の症状は悪化します。それともミサキ様が代わって魔法をかけてくださるのですか?」
黙っている俺に、エルヴィンは嫌味を続けた。
「失礼、ミサキ様は異世界の方でしたね。それならこのお部屋から外した方がいいのはミサキ様の方では? たしか、認定式ですら魔力酔いで熱を出されたとか」
『フィオネさん、ポリムと如月を連れて来てください』
「畏まりました」
フィオネさんが部屋を出て行く。
『エルヴィン、回復は二人にやってもらいます。二人が来たら部屋から出て行ってください』
そう告げると、エルヴィンの笑みが消えた。悪いけど負ける気はないからな。
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