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帰還
5 そんなわけないだろ
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フィオネさんが出て行ったから、嫌いなエルヴィンを見るのはやめて眠っているルーシェンの顔を見つめた。
やっと会えたのになんだか苦しそうだ。顔色も悪い。いつもの金のオーラじゃないし、オーラに何か強力な魔法の何かがまとわりついているような気がする。少しだけ疑っていたけど、エルヴィンから出ている魔法じゃなさそうだ。エルヴィンは一応ちゃんと回復魔法を使用している。オーラは俺に向けられるものは真っ黒だけど、それはルーシェンには向いていない。
ルーシェンの頬を撫でようとしたらエルヴィンの腕が伸びて来て俺の手を掴んだ。慌てて手を引っ込める。一応この国の法律では、王族には非常事態以外触ってはいけないことになってるはずなんだけど。やっぱり王族の一員とみられてないな。
『また魔法をかけるつもりですか? 何度かやったみたいに』
「まさか。王太子妃様の魔力酔いを気にしているだけですよ。それよりも、いずれ王太子妃様のお耳にも入ると思いますので、先にご報告いたしますが」
エルヴィンは笑顔を崩さず、声をひそめた。聞きたくないのに耳に入ってくる。
「王太子妃様が砦を出発なさってから、私が王子の夜のお相手をさせていただいておりました。王太子妃様ほどうまく務められたかはわかりませんが」
『嘘言うな!』
思わず頭にきて、眠っているルーシェンの前なのに怒鳴ってしまった。
「おしずかに。王子は具合が悪いのですよ。王太子妃様は異世界からこられたので、ご自分を特別だと思っていらっしゃるようですが、こちらでは王族が恋人を複数置くのは当たり前のことなのです」
『そんなわけないだろ! いくらルーシェンの意識がないからって……!』
ルーシェンは数日前の夜、転移魔法陣で雲の谷に来てくれてたんだ。エルヴィンの話なんて一言もしてなかった。
「信じられないのも無理はありませんが、このような非常時に王子を置いてお一人だけ避難される王太子妃様にも責任があるのでは?」
もっと反論しようと思ったけど、ノックの音と共にポリムと如月が入って来たから黙った。こんな話聞かれたくない。
ポリムがルーシェンのベッドに駆け寄る。
「王子様……!」
『……ポリム、如月、ルーシェンの症状をみてもらえますか?』
如月はベッドに眠るルーシェンに一礼をし、頭から足元まで視線をはしらせた。ポリムと顔を見合わせる。
「ミサキ様、状態異常の魔法が複数かかってますわ。それも強力な魔法です」
『治せそうですか?』
「症状を抑えることなら出来そうですけど、根本的に治すには、王都か、もう少し魔法の設備のある都市でないと……。もっと多くの薬や治療師や魔法陣が必要です」
「治すには王都に戻るのが一番ですね。それまで誰かが治癒魔法をかけ続けることが不可欠です。少しでも手を抜くと大変なことに」
如月はそこまで言うとエルヴィンに向き直った。
「はじめまして。国王軍のエルヴィン隊長ですね。私は魔法関連部のハルバートと申します」
エルヴィンはそこではじめて椅子から立ち上がると、如月に同じように挨拶を返した。
「あなたのことは存じ上げております。グレイブ部長の一番弟子とか。いろいろな功績をあげられているそうですね」
「ただの雑用係ですよ」
にこやかに話してるけど、二人のオーラがけっこうバチバチしてる。
「当時の状況を教えていただけますか? 遭遇した魔物と、受けた魔法と、負傷者の数の把握をしたいので」
「私はルーシェン王子の回復を担当していますので、詳しいことはアーク殿に聞いてください」
「そうですね。ですが私たちが到着したのでここはポリム嬢におまかせしてエルヴィン殿も休憩なさってはいかがですか?」
「私は治療師と薬師の資格を持っています。王子の回復を担当するのは当然のことです」
「治療師の資格なら私も持っています」
ポリムがそう言ったので、エルヴィンは肩をすくめた。
「では少し休憩して、これからの対策を話し合いましょう。王太子妃様には嫌われてしまったようなので。ですが、王子の容態が変化したらすぐに私をお呼びください。その魔法は想像より厄介ですので」
エルヴィンは捨て台詞を残して如月と部屋を出ていった。
「ミサキ様の前で王子様にべたべたして、なんて無礼な方なのでしょう。信じられませんわ!」
ポリムが怒ってる。
「ミサキ様、あんな無礼な方のことなど気になさる必要はありません。私が王子様を回復いたします」
ポリムは両手に回復魔法を唱え、ルーシェンの額のあたりに手をかざした。
『ポリム、ありがとう』
俺はさっきのエルヴィンの話がショックすぎて、それだけ返すのが精一杯だった。
やっと会えたのになんだか苦しそうだ。顔色も悪い。いつもの金のオーラじゃないし、オーラに何か強力な魔法の何かがまとわりついているような気がする。少しだけ疑っていたけど、エルヴィンから出ている魔法じゃなさそうだ。エルヴィンは一応ちゃんと回復魔法を使用している。オーラは俺に向けられるものは真っ黒だけど、それはルーシェンには向いていない。
ルーシェンの頬を撫でようとしたらエルヴィンの腕が伸びて来て俺の手を掴んだ。慌てて手を引っ込める。一応この国の法律では、王族には非常事態以外触ってはいけないことになってるはずなんだけど。やっぱり王族の一員とみられてないな。
『また魔法をかけるつもりですか? 何度かやったみたいに』
「まさか。王太子妃様の魔力酔いを気にしているだけですよ。それよりも、いずれ王太子妃様のお耳にも入ると思いますので、先にご報告いたしますが」
エルヴィンは笑顔を崩さず、声をひそめた。聞きたくないのに耳に入ってくる。
「王太子妃様が砦を出発なさってから、私が王子の夜のお相手をさせていただいておりました。王太子妃様ほどうまく務められたかはわかりませんが」
『嘘言うな!』
思わず頭にきて、眠っているルーシェンの前なのに怒鳴ってしまった。
「おしずかに。王子は具合が悪いのですよ。王太子妃様は異世界からこられたので、ご自分を特別だと思っていらっしゃるようですが、こちらでは王族が恋人を複数置くのは当たり前のことなのです」
『そんなわけないだろ! いくらルーシェンの意識がないからって……!』
ルーシェンは数日前の夜、転移魔法陣で雲の谷に来てくれてたんだ。エルヴィンの話なんて一言もしてなかった。
「信じられないのも無理はありませんが、このような非常時に王子を置いてお一人だけ避難される王太子妃様にも責任があるのでは?」
もっと反論しようと思ったけど、ノックの音と共にポリムと如月が入って来たから黙った。こんな話聞かれたくない。
ポリムがルーシェンのベッドに駆け寄る。
「王子様……!」
『……ポリム、如月、ルーシェンの症状をみてもらえますか?』
如月はベッドに眠るルーシェンに一礼をし、頭から足元まで視線をはしらせた。ポリムと顔を見合わせる。
「ミサキ様、状態異常の魔法が複数かかってますわ。それも強力な魔法です」
『治せそうですか?』
「症状を抑えることなら出来そうですけど、根本的に治すには、王都か、もう少し魔法の設備のある都市でないと……。もっと多くの薬や治療師や魔法陣が必要です」
「治すには王都に戻るのが一番ですね。それまで誰かが治癒魔法をかけ続けることが不可欠です。少しでも手を抜くと大変なことに」
如月はそこまで言うとエルヴィンに向き直った。
「はじめまして。国王軍のエルヴィン隊長ですね。私は魔法関連部のハルバートと申します」
エルヴィンはそこではじめて椅子から立ち上がると、如月に同じように挨拶を返した。
「あなたのことは存じ上げております。グレイブ部長の一番弟子とか。いろいろな功績をあげられているそうですね」
「ただの雑用係ですよ」
にこやかに話してるけど、二人のオーラがけっこうバチバチしてる。
「当時の状況を教えていただけますか? 遭遇した魔物と、受けた魔法と、負傷者の数の把握をしたいので」
「私はルーシェン王子の回復を担当していますので、詳しいことはアーク殿に聞いてください」
「そうですね。ですが私たちが到着したのでここはポリム嬢におまかせしてエルヴィン殿も休憩なさってはいかがですか?」
「私は治療師と薬師の資格を持っています。王子の回復を担当するのは当然のことです」
「治療師の資格なら私も持っています」
ポリムがそう言ったので、エルヴィンは肩をすくめた。
「では少し休憩して、これからの対策を話し合いましょう。王太子妃様には嫌われてしまったようなので。ですが、王子の容態が変化したらすぐに私をお呼びください。その魔法は想像より厄介ですので」
エルヴィンは捨て台詞を残して如月と部屋を出ていった。
「ミサキ様の前で王子様にべたべたして、なんて無礼な方なのでしょう。信じられませんわ!」
ポリムが怒ってる。
「ミサキ様、あんな無礼な方のことなど気になさる必要はありません。私が王子様を回復いたします」
ポリムは両手に回復魔法を唱え、ルーシェンの額のあたりに手をかざした。
『ポリム、ありがとう』
俺はさっきのエルヴィンの話がショックすぎて、それだけ返すのが精一杯だった。
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