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帰還
6 状況説明
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『ルーシェン……』
苦しそうなルーシェンの頬に触れて髪を撫でていると、ポリムが心配そうに付け加えた。
「ミサキ様、あまり長時間王子様に触れられるとミサキ様にも魔法がかかってしまうかもしれません」
『そうなんですか?』
「石化や毒は触れるだけで移ります」
そういえばむかし譲二さんが石化した時、俺も腕が白くなったんだった。あの時譲二さんに触ってたから移ったってことなのかな。
『でもエルヴィンは触ってました』
「ええ。回復魔法を唱えているから大丈夫なのでしょうけど、いくら王子様の意識がなく、状態異常をおこしているからといって、無断で触るなど許せません。不敬罪で永久追放してやりたいですわ。私たち選ばれたプライベートエリアの侍女にも鉄の掟がありますのに。私はミサキ様の専属侍女ですから、ミサキ様に触れることは許されていますけど、触れていい場所だって決められてますし、王子様に触ることは許されていませんわ。隊長だか指揮官だか知りませんけど、あのようなただの、兵士の分際で……!」
『ポリム、落ち着いてください……』
怒っているポリムをなだめてはみたけど、ポリムが俺の気持ちを代弁してくれて少しすっきりした。それでもルーシェンに触っていると扉がノックされた。開けるとロベルトさんと俺について来た飛行部隊の全員が廊下に跪いていた。後ろにテレサさんやアークさんと如月の姿も見える。エルヴィンがいなくてほっとした。
「ミサキ様、王子はどのようなご様子でしょうか。せめて一目だけでも面会をお許しください」
あのいつも強いロベルトさんが弱ってる。俺は自分ばかりルーシェンに会いたくて、飛行部隊のメンバーのことを考えてなかった。みんなルーシェンを心から崇拝してるんだよな。心配して当然だ。
『ポリムが回復魔法をかけてくれて眠っています。みなさんどうぞ』
ロベルトさん達を部屋に入れると、みんなルーシェンのベッドに押し寄せた。
「ルーシェン王子!」
「王子様!」
「王子! 目を開けてください!」
土下座する勢いでベッドにすがりつき、泣いたり名前を呼んだりしてる。あまりの迫力に呆然としていたらポリムに一喝された。
「皆さま! 王子様の前でうるさくなさらないで。追い出しますよ!」
その言葉で我にかえったロベルト隊長が咳払いをし、隊員たちも落ち着きを取り戻した。でもその目には涙が滲んでる。後ろにいるアークさんと如月だけは冷静だ。
「アーク、お前がついていながら何故このようなことになったのだ」
アークさんは深く息を吐いて、頭を下げた。
「そうだな。俺がついていながら、このような事態になり、本当に申し訳ないと思っている。事態が落ち着けばどんな罰でも受ける覚悟だ。だがその前に、ミサキ様やロベルト達にこうなった状況を説明したいと思う」
アークさんの提案で、飛行部隊と如月と俺は隣の部屋に移動した。ルーシェンはポリムとテレサさんに任せることにした。あの二人ならエルヴィンが戻って来ても追い払ってくれると思う。
隣の部屋はフィオネさんが使っていた小さな部屋だけど、なぜかテーブルと椅子以外の家具は全て運び出されている。部屋に入るとアークさんは人払いの魔法をかけた。それから俺の前に膝をついて正式な挨拶をする。
『アークさん……』
「ミサキ様、よく戻って来てくださいました。恥ずかしながら俺一人では対応出来ず、おのれの不甲斐なさに憤り、焦りばかりが募っていました」
『何があったのですか? 話してください』
「二日前の事です。魔物が同時に二方向から砦に到達し、王子とエルヴィン隊長がそれぞれの魔物討伐に出られました。私は村人の住む砦の下方部分が崩落したため、村人の救助に当たっていました。王子はフィオネ様と飛行部隊を五名、国王軍の兵士十二名連れて森の北側の魔物を討伐に行かれました。エルヴィン隊長は西側の魔物を討伐していたと思われます。
日が暮れても王子が戻られないので、私と残りの飛行部隊兵が探索に向かったところ、北側にいた王子の部隊は状態異常の魔法を受け酷いありさまだったとか。私より先に救助に向かったエルヴィン隊長の隊員と協力して、なんとか王子とフィオネ様、それに十数体の石化兵を砦に連れ戻しました」
話を聞くだけで怖くて震えが止まらなくなった。
「回復魔法を使えるものが圧倒的に不足しており、石化兵を戻すことは一旦諦め、兵士たちは砦の地下に隔離しております。王子の回復を優先しておりましたが、それも間に合わず、隣国の国王陛下と王妃様に使者を送って援軍を要請しております」
苦しそうなルーシェンの頬に触れて髪を撫でていると、ポリムが心配そうに付け加えた。
「ミサキ様、あまり長時間王子様に触れられるとミサキ様にも魔法がかかってしまうかもしれません」
『そうなんですか?』
「石化や毒は触れるだけで移ります」
そういえばむかし譲二さんが石化した時、俺も腕が白くなったんだった。あの時譲二さんに触ってたから移ったってことなのかな。
『でもエルヴィンは触ってました』
「ええ。回復魔法を唱えているから大丈夫なのでしょうけど、いくら王子様の意識がなく、状態異常をおこしているからといって、無断で触るなど許せません。不敬罪で永久追放してやりたいですわ。私たち選ばれたプライベートエリアの侍女にも鉄の掟がありますのに。私はミサキ様の専属侍女ですから、ミサキ様に触れることは許されていますけど、触れていい場所だって決められてますし、王子様に触ることは許されていませんわ。隊長だか指揮官だか知りませんけど、あのようなただの、兵士の分際で……!」
『ポリム、落ち着いてください……』
怒っているポリムをなだめてはみたけど、ポリムが俺の気持ちを代弁してくれて少しすっきりした。それでもルーシェンに触っていると扉がノックされた。開けるとロベルトさんと俺について来た飛行部隊の全員が廊下に跪いていた。後ろにテレサさんやアークさんと如月の姿も見える。エルヴィンがいなくてほっとした。
「ミサキ様、王子はどのようなご様子でしょうか。せめて一目だけでも面会をお許しください」
あのいつも強いロベルトさんが弱ってる。俺は自分ばかりルーシェンに会いたくて、飛行部隊のメンバーのことを考えてなかった。みんなルーシェンを心から崇拝してるんだよな。心配して当然だ。
『ポリムが回復魔法をかけてくれて眠っています。みなさんどうぞ』
ロベルトさん達を部屋に入れると、みんなルーシェンのベッドに押し寄せた。
「ルーシェン王子!」
「王子様!」
「王子! 目を開けてください!」
土下座する勢いでベッドにすがりつき、泣いたり名前を呼んだりしてる。あまりの迫力に呆然としていたらポリムに一喝された。
「皆さま! 王子様の前でうるさくなさらないで。追い出しますよ!」
その言葉で我にかえったロベルト隊長が咳払いをし、隊員たちも落ち着きを取り戻した。でもその目には涙が滲んでる。後ろにいるアークさんと如月だけは冷静だ。
「アーク、お前がついていながら何故このようなことになったのだ」
アークさんは深く息を吐いて、頭を下げた。
「そうだな。俺がついていながら、このような事態になり、本当に申し訳ないと思っている。事態が落ち着けばどんな罰でも受ける覚悟だ。だがその前に、ミサキ様やロベルト達にこうなった状況を説明したいと思う」
アークさんの提案で、飛行部隊と如月と俺は隣の部屋に移動した。ルーシェンはポリムとテレサさんに任せることにした。あの二人ならエルヴィンが戻って来ても追い払ってくれると思う。
隣の部屋はフィオネさんが使っていた小さな部屋だけど、なぜかテーブルと椅子以外の家具は全て運び出されている。部屋に入るとアークさんは人払いの魔法をかけた。それから俺の前に膝をついて正式な挨拶をする。
『アークさん……』
「ミサキ様、よく戻って来てくださいました。恥ずかしながら俺一人では対応出来ず、おのれの不甲斐なさに憤り、焦りばかりが募っていました」
『何があったのですか? 話してください』
「二日前の事です。魔物が同時に二方向から砦に到達し、王子とエルヴィン隊長がそれぞれの魔物討伐に出られました。私は村人の住む砦の下方部分が崩落したため、村人の救助に当たっていました。王子はフィオネ様と飛行部隊を五名、国王軍の兵士十二名連れて森の北側の魔物を討伐に行かれました。エルヴィン隊長は西側の魔物を討伐していたと思われます。
日が暮れても王子が戻られないので、私と残りの飛行部隊兵が探索に向かったところ、北側にいた王子の部隊は状態異常の魔法を受け酷いありさまだったとか。私より先に救助に向かったエルヴィン隊長の隊員と協力して、なんとか王子とフィオネ様、それに十数体の石化兵を砦に連れ戻しました」
話を聞くだけで怖くて震えが止まらなくなった。
「回復魔法を使えるものが圧倒的に不足しており、石化兵を戻すことは一旦諦め、兵士たちは砦の地下に隔離しております。王子の回復を優先しておりましたが、それも間に合わず、隣国の国王陛下と王妃様に使者を送って援軍を要請しております」
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