好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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帰還

23 弟子にしてください

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「だからあまり気にせず王都に帰りなさい。そして、ルーシェンにも話したけれど、先に結婚の儀式を行うといいわ。結婚式をすればあなたも王族の一員。守り神と正式に契約を結ぶことになり、魔力酔いなどもなくなるわ。今よりもう少しこの世界で過ごしやすくなるわよ」

『結婚式……』

 そういえば、俺があげたのって婚約式で、結婚式じゃなかったんだよな。如月が言うには、日本の結婚式に近いのが婚約式で、結婚式は二人っきりでするって言ってた。

「婚約旅行の残りは、式が終わり、魔物の襲来被害が落ち着いてから行えばいいわ。エリアに建てる新しい建物も、本当はあなたの宮殿にする予定よ」

 王妃様がそんなところまで考えていてくれたなんて知らなくて、ほっとしたせいなのか、涙がぽろりと出た。

『王妃様……ありがとうございます。本当は、もうここに居場所がないから日本に帰ろうかと思ってました』

「そんなこと言わないで。息子があなたを必要としているのだから。それにわたくしも国王陛下もあなたを気に入っているわ。もちろん回復の聖獣も、王宮の守り神もあなたを気に入ってる。部下たちもね。魔力酔いしなければ、転移魔法で時々は帰れるわよ。
 それからエルヴィンという男だけれど、ハルバートから少し話を聞いたわ。あのような男はいろいろな策を練ってくるから、プライベートエリアで下の階の人間と切り離していた方が無害化できるのよ。その間に証拠を集めておくから」

 王妃様はそこで一呼吸おき、俺を見据えた。

「証拠が揃えば、あとはあなたに対処をまかせるわ。息の根を止めるなり、追放するなり、島送りにするなり、好きなようになさい」

『王妃様、ありがとうございます』

「いいのよ。息子に状態異常の魔法をかけるなんてわたくしも頭にきてるの。浮島の魔法石は王宮の財産だから、もしも盗んだのなら島送りは当然ね」

 王妃様はそこまで話すと、お茶を飲み部屋を出ようとした。今がチャンスかもしれない。慌てて引き止める。

『王妃様、もしよかったら私を弟子にしてください!』

「弟子はとらない主義なの。ミサキは面白いけど、まだまだ修行がたりないわね」

 王妃様へ弟子入り計画があっさり却下された。また次回チャレンジしよう。

***

 王妃様の飛行船に、砦の地下にいた石化した兵士たちが慎重に運び込まれていく。どこも壊れないように布が巻かれている。この石像がみんな生身の兵士だったと思うと恐ろしい。飛行中も治療師が付き添って少しずつ回復するようなので、衝突して破損する心配はそれほどないと聞いて安心した。

 石化兵の次に大勢の負傷兵が飛行船に乗り込んでくる。ほとんどが国王軍で、王都に帰れるからみんな嬉しそうだったけど、感謝の気持ちは王妃様とルーシェン、それにエルヴィンに向けられていて、会話を聞いていると少しだけもやもやした。
 数日寝込んでいたせいで体力は戻っていないし、ルーシェンの後をついてまわっているエルヴィンを見るのも嫌だ。だから本当は部屋で寝ていたかったけど、やっぱり王太子妃という立場だし、王妃様を見送ったり兵士や従者を労ったり、俺にもできることがあるはずだ。さすがに物を運んだり作業を手伝うことは断られたけど。

 帰還する兵士が全員乗り込むと、砦に残る王妃様と挨拶をかわす。

「ルーシェン、しばらく魔物のことは忘れて回復に専念なさい。儀式の準備も忘れないように。ミサキ、あなたもよ。エルヴィン、プライベートエリアで次に会える時を楽しみにしているわ」

 ルーシェンは複雑な表情で、エルヴィンは嬉しそうに王妃様の言葉にお礼を言っていた。さっきまでの俺なら絶望する場面だけど、今なら王妃様の真意がわかるから同じようにお礼の言葉を伝える。

 その後、飛行船は砦から飛び立った。発着場でこちらを見上げる王妃様と、周りにいる兵士たちに手を振る。この重苦しい雰囲気の砦からようやく脱出できた。



 


 
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