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結婚式
23 戻ってきた平穏
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三日目の朝が来て、俺たち二人が本来の仕事と身分を思い出すまで、結局大部分の時間をベッドで過ごし、あとは庭と浴室を移動しただけだった。フィオネさんの想像通り、シーツの替えはたくさん必要だったし、結局食べて寝て愛し合うことしかしなかったけど、俺たち二人にとってはとても幸せな時間だった。
「もう少し休みをもらえば良かったな」
「ルーシェンは仕事人間だから、これ以上は無理だと思う」
「そうか?」
「そうだよ。本当は仕事のことが気になってるくせに」
「まあ、仕事は気になるが……。とりあえずどこかに城か別荘を買って、時々二人っきりで過ごそう。年に数回は休暇が必要だ」
「賛成!」
石板エレベーターはやっぱり帰りも怖かった。びくびくしながらルーシェンにしがみついてゆっくりと王宮まで降りていく。
王宮のプライベートエリアには、飛行部隊の隊員と従者や侍女たちが勢揃いして俺たちを待っているのが見えた。また王族の一員としてのプライバシーゼロの生活が始まると思うのに、前ほど嫌だとも思えない。整列して待っている部下たちを見て、なぜか胸がいっぱいになった。
「王子、王太子妃様、ご結婚おめでとうございます」
フィオネさんとアークさんが口を揃えて挨拶をし、部下たちが一斉に跪拝する。
「ご苦労だった。留守の間、何か変わったことはなかったか?」
「魔物の被害と砦での件についてご報告があるとハルバート殿が会議室でお待ちです。その他の報告書も会議室と執務室にご用意いたしております」
「分かった。ではこれから会議室に向かう。お前たちは各自持ち場に戻ってくれ」
兵士たちが返事をして一礼し持ち場に戻っていく。みんなチラリと俺を見て、目が合うと慌てたように去っていく。どうしたんだろう。
「ミサキ様もご一緒に会議室へどうぞ。王妃様からの書簡も届いております」
「王妃様から……なんだろう」
会議室は二十階にあるから、プライベートエリアを出て大階段をくだる。気になっていたから、下りる前にエルヴィンのいた建物をチラ見した。
全然黒くない。エルヴィン、エリアから出たんだろうな。少しだけほっとした。
「アークさん、式の間は迷惑かけました。いろいろありがとう」
歩きながらアークさんに挨拶すると、アークさんが露骨に動揺したので不思議に思って質問する。
「どうかしたんですか?」
「いえ……ミサキ様のご様子が、あまりに式の前と違うので……」
「どこか違いますか?」
「お気になさらないでください。お祝い申し上げます」
そんなに違うかな。もしかしたらこの金色の王族オーラのせいかも。みんなオーラの色なんて見えないと思ってたんだけど。
「ミサキ様、ご結婚おめでとうございます!」
ポリムが護衛の譲二さんと一緒に後ろから話しかけてきた。ポリムと話すのも久しぶりのような気がする。
「ありがとう、ポリム」
「神聖な儀式を三日も続けられたとか。大変ではありませんでしたか?」
ポリム、神聖な儀式ってどんな内容か知らないんだろうな。
「えっと、大丈夫。楽しかったよ」
話を聞いていたルーシェンが笑ってる。
「なんだか……ミサキ様から不思議な魔力を感じますわ。王族の方々と同じような。きっと儀式のせいですわね」
「そう?」
譲二さんも頷く。
「そうですね。逆らいがたい神聖さとでもいうのでしょうか。もとから忠誠を誓っている我々ですが、さらに気持ちを引き締め、いつでも命を投げ出す覚悟で護衛にあたります」
「あ、ありがとう」
ずっとベッドで過ごしていたなんて言えないな。
如月は会議室で待っていた。王妃様はまだ砦に残っているらしい。
王妃様の書簡は、王族の一員になったことのお祝いの言葉で、普段の威厳のある態度とは逆に可愛らしい言葉と内容でびっくりした。
如月の報告は俺が欲しがっていた情報そのものだった。エルヴィンがルーシェンに近づくために状態異常の魔法を飛行部隊の兵士や王子にかけたという事実を、如月は詳細に調べ上げて報告書に記していた。証拠の魔法陣や魔法石、国王軍の部下やホレスの証言もセットだ。
俺とロベルトさんを眠らせて罠にはめた時の事や、俺を処刑しようとした罪を部下にきせて殺したこと。エストの状態異常を悪化させ、俺を脅迫していたこと。エルヴィンにはその他にもたくさんの余罪があった。
俺はよく知っている話だから驚かなかったけど、飛行部隊の兵士や国王軍、ルーシェンはきっと想像よりひどい内容に驚いたんじゃないかと思う。
その情報はまたたく間に王宮の兵士たちに広まった。号外が配られ、しばらくの間王都はその話でもちきりだった。
エルヴィンは俺の要望通り、王宮の医療所で監視下のもと治療を受けているという話だったから、ルーシェンがすぐに投獄するように指示を出す。浮島の魔法石を奪ったホレスも投獄されていて、二人とも島送りになるという話だ。
この時の俺は知らなかったが、エルヴィンはそのあと医療所から監獄に送られる途中で脱走する。
そして追い詰められて緑水湖に逃げ、結局溺れて命を落とすことになる。後から聞いた話では、エルヴィンはプライベートエリアを出た時点でほとんど魔力が残っていなかったそうだ。生まれつき魔力の高いエリート人生を送って来たエルヴィンには、魔力なしで脱走すれば簡単に捕まるし、湖で溺れたら死ぬこともあるなんて想像もできなかったんだろうな。もしかしたら、真っ黒な人たちに足を引っ張られたのかもしれないけど。真相は誰にも分からない。
俺に魔力なしの無能だと散々悪口を言っていたのに、自分が魔力を無くすなんて皮肉な話だ。かわいそうだけど、墓参りに行ってやるほど俺は優しい性格じゃない。
エルヴィンの事件が終わり、王宮にもプライベートエリアにも平穏が戻ってきた。
三日目の朝が来て、俺たち二人が本来の仕事と身分を思い出すまで、結局大部分の時間をベッドで過ごし、あとは庭と浴室を移動しただけだった。フィオネさんの想像通り、シーツの替えはたくさん必要だったし、結局食べて寝て愛し合うことしかしなかったけど、俺たち二人にとってはとても幸せな時間だった。
「もう少し休みをもらえば良かったな」
「ルーシェンは仕事人間だから、これ以上は無理だと思う」
「そうか?」
「そうだよ。本当は仕事のことが気になってるくせに」
「まあ、仕事は気になるが……。とりあえずどこかに城か別荘を買って、時々二人っきりで過ごそう。年に数回は休暇が必要だ」
「賛成!」
石板エレベーターはやっぱり帰りも怖かった。びくびくしながらルーシェンにしがみついてゆっくりと王宮まで降りていく。
王宮のプライベートエリアには、飛行部隊の隊員と従者や侍女たちが勢揃いして俺たちを待っているのが見えた。また王族の一員としてのプライバシーゼロの生活が始まると思うのに、前ほど嫌だとも思えない。整列して待っている部下たちを見て、なぜか胸がいっぱいになった。
「王子、王太子妃様、ご結婚おめでとうございます」
フィオネさんとアークさんが口を揃えて挨拶をし、部下たちが一斉に跪拝する。
「ご苦労だった。留守の間、何か変わったことはなかったか?」
「魔物の被害と砦での件についてご報告があるとハルバート殿が会議室でお待ちです。その他の報告書も会議室と執務室にご用意いたしております」
「分かった。ではこれから会議室に向かう。お前たちは各自持ち場に戻ってくれ」
兵士たちが返事をして一礼し持ち場に戻っていく。みんなチラリと俺を見て、目が合うと慌てたように去っていく。どうしたんだろう。
「ミサキ様もご一緒に会議室へどうぞ。王妃様からの書簡も届いております」
「王妃様から……なんだろう」
会議室は二十階にあるから、プライベートエリアを出て大階段をくだる。気になっていたから、下りる前にエルヴィンのいた建物をチラ見した。
全然黒くない。エルヴィン、エリアから出たんだろうな。少しだけほっとした。
「アークさん、式の間は迷惑かけました。いろいろありがとう」
歩きながらアークさんに挨拶すると、アークさんが露骨に動揺したので不思議に思って質問する。
「どうかしたんですか?」
「いえ……ミサキ様のご様子が、あまりに式の前と違うので……」
「どこか違いますか?」
「お気になさらないでください。お祝い申し上げます」
そんなに違うかな。もしかしたらこの金色の王族オーラのせいかも。みんなオーラの色なんて見えないと思ってたんだけど。
「ミサキ様、ご結婚おめでとうございます!」
ポリムが護衛の譲二さんと一緒に後ろから話しかけてきた。ポリムと話すのも久しぶりのような気がする。
「ありがとう、ポリム」
「神聖な儀式を三日も続けられたとか。大変ではありませんでしたか?」
ポリム、神聖な儀式ってどんな内容か知らないんだろうな。
「えっと、大丈夫。楽しかったよ」
話を聞いていたルーシェンが笑ってる。
「なんだか……ミサキ様から不思議な魔力を感じますわ。王族の方々と同じような。きっと儀式のせいですわね」
「そう?」
譲二さんも頷く。
「そうですね。逆らいがたい神聖さとでもいうのでしょうか。もとから忠誠を誓っている我々ですが、さらに気持ちを引き締め、いつでも命を投げ出す覚悟で護衛にあたります」
「あ、ありがとう」
ずっとベッドで過ごしていたなんて言えないな。
如月は会議室で待っていた。王妃様はまだ砦に残っているらしい。
王妃様の書簡は、王族の一員になったことのお祝いの言葉で、普段の威厳のある態度とは逆に可愛らしい言葉と内容でびっくりした。
如月の報告は俺が欲しがっていた情報そのものだった。エルヴィンがルーシェンに近づくために状態異常の魔法を飛行部隊の兵士や王子にかけたという事実を、如月は詳細に調べ上げて報告書に記していた。証拠の魔法陣や魔法石、国王軍の部下やホレスの証言もセットだ。
俺とロベルトさんを眠らせて罠にはめた時の事や、俺を処刑しようとした罪を部下にきせて殺したこと。エストの状態異常を悪化させ、俺を脅迫していたこと。エルヴィンにはその他にもたくさんの余罪があった。
俺はよく知っている話だから驚かなかったけど、飛行部隊の兵士や国王軍、ルーシェンはきっと想像よりひどい内容に驚いたんじゃないかと思う。
その情報はまたたく間に王宮の兵士たちに広まった。号外が配られ、しばらくの間王都はその話でもちきりだった。
エルヴィンは俺の要望通り、王宮の医療所で監視下のもと治療を受けているという話だったから、ルーシェンがすぐに投獄するように指示を出す。浮島の魔法石を奪ったホレスも投獄されていて、二人とも島送りになるという話だ。
この時の俺は知らなかったが、エルヴィンはそのあと医療所から監獄に送られる途中で脱走する。
そして追い詰められて緑水湖に逃げ、結局溺れて命を落とすことになる。後から聞いた話では、エルヴィンはプライベートエリアを出た時点でほとんど魔力が残っていなかったそうだ。生まれつき魔力の高いエリート人生を送って来たエルヴィンには、魔力なしで脱走すれば簡単に捕まるし、湖で溺れたら死ぬこともあるなんて想像もできなかったんだろうな。もしかしたら、真っ黒な人たちに足を引っ張られたのかもしれないけど。真相は誰にも分からない。
俺に魔力なしの無能だと散々悪口を言っていたのに、自分が魔力を無くすなんて皮肉な話だ。かわいそうだけど、墓参りに行ってやるほど俺は優しい性格じゃない。
エルヴィンの事件が終わり、王宮にもプライベートエリアにも平穏が戻ってきた。
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