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エピローグ
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岩の点在する荒地に飛竜の影が六つ。左側には緑色の丘とその先に続く森。ここは森林地帯と砂漠地帯の境目だ。荒地の空気は魔法防御に守られていても暑い。比較的低空を飛んでいるというのも暑い理由の一つだ。
「太郎、あと少しだから頑張ってくれよ」
そう言って竜の鱗を撫でる。生まれてまだ二年も経っていないのに、子供だった飛竜の太郎は成竜と変わらないほどの大きさになっていた。性格は相変わらず少しおバカだけど、そこも可愛い。次郎は今日はお休みだ。一緒に行けなくてふてくされていた。
前方を飛ぶのは白い飛竜のエスト。騎乗している王子様は頻繁に俺の方を振り返る。やっぱりまだ心配らしい。大丈夫だと手をあげてみせた。
俺が少ない魔力で覚えた魔法は三つ。これさえあればどうにかなるとルーシェンに教えてもらった。一つは簡単な回復魔法。二つ目は解毒魔法。三つ目が魔法防御の呪文。
魔法防御を覚えたおかげで、こうして飛竜に乗る時も自分で魔法をかけて調整できるし、たとえ墜落しても命を落とす可能性は低い。それに今はどんな魔法を使っても魔力酔いをすることはなくなった。
風をきって飛竜で飛ぶのは最高の経験だ。慣れるまでは何度もきつい練習を繰り返したけど、一度飛べたらやみつきになる。景色は美しいし、飛竜は可愛いし、飛ぶのは楽しい。もちろん、飛竜は生き物だから無理をさせないようにしないといけないけど。
でも今日は楽しんではいられない。今日は大事な任務でここに来ている。ここは隣国との国境付近で花粉の被害が多かった場所だ。村人たちはいまだに避難をしていて、眼下に見える村や街は全て無人だ。
「見つけた! ルーシェン!」
今日の大事な任務は俺にしかできない。それは空から影食いを探すことだ。影食いは地中に隠れているため見つけるのが困難な危険度の高い魔物だ。味方の被害を最小にするには俺が探すのが早い。
国境付近の森の中に真っ黒い影が見えた。黒い円形をしている。大きい。以前無人の集落で飛竜を食べたあいつだ。
ちなみに集落に住んでいた人たちには森に墜落した浮島を立て直して提供した。けっこう喜ばれているらしい。俺とルーシェンの部屋は観光名所になっているという話だ。ジャージとか置いてあるんだけど、無駄に奉られていて取りに行けない。
影食いはゆっくりと移動して、荒地の方へ進んでいる。おそらく飛竜の気配を魔力で察知して食べに来たのだろう。影食いは大きくなるほど大型の餌を狙うようになる。
「どこにいる!?」
「森から出て来た! 今はあの三つ並んだ岩の柱の近くだ。大きさは飛竜を十頭並べたくらい」
「分かった! 飛行部隊は攻撃体制をとれ! シュウヘイは上空で待機だ」
俺以外の飛行部隊の隊員がいっせいに高度を落とし、魔法を唱えて見えない影食いに接近する。アークさんが魔法の込められた矢をつがえて地面を射ると、土の中から巨大な口が現れた。
***
巨大な影食い一頭と、生き残りの中型の魔物二頭を倒し、魔物の亡骸に生え始めた妖花の芽を数えきれないほど焼いて、今回の任務は無事終了した。
荒地のテントで地平線を眺めながらみんなと食事をしたり野営をするのは楽しい。一度幽体離脱した時にお邪魔したけど、生身で参加できるとは思ってもいなかった。
岩山に日が沈むのを眺めてから太郎に餌をあげて軽く鱗を磨き、寝かしつける。俺の歌はルーシェンには下手だと言われたけど飛竜には人気だ。すぐに寝てくれる。
ルーシェンが飛竜のテントまで迎えに来てくれたので、二人で散歩しながら任務の話をした。
「この辺りはもう安全だな。村人を返しても良さそうだ」
「西側は?」
「明日ロベルトが合流するから、あとはアークとロベルトに頼もう」
「俺たちはどうするんだ? 先に王宮に帰るのか?」
「そうだな。帰る予定だが……」
「?」
ルーシェンがいたずらっ子のように笑って付け加える。
「少し遠回りして黄葉樹の街と、桃花村に寄っていこう」
約束、覚えていてくれたんだな。
「ルーシェン、ありがとう。そんなに寄り道して大丈夫かな」
「新しい城をどこに建てるか決めないといけないからな。少しくらい遅くなっても大丈夫だ」
「一から建てるのか?」
「古い城や邸宅を購入してもいい。城が嫌なら家でもいいぞ。シュウヘイと二人で過ごせる広さがあれば」
「二人か……」
結婚の儀式の時に見た夢では、俺とルーシェンは複数の子供と暮らしていた。それに一番下の子供はルーシェンによく似ていたような気がする。
日本人の俺が異世界に来て王子様と結婚し、魔力だって持ってしまうのだから、この先何があってもおかしくないよな。
「どうした? シュウヘイ」
「いや、なんでもない」
俺はルーシェンと手を繋ぎ、二人で眠るテントまで歩いて行った。
おわり
「太郎、あと少しだから頑張ってくれよ」
そう言って竜の鱗を撫でる。生まれてまだ二年も経っていないのに、子供だった飛竜の太郎は成竜と変わらないほどの大きさになっていた。性格は相変わらず少しおバカだけど、そこも可愛い。次郎は今日はお休みだ。一緒に行けなくてふてくされていた。
前方を飛ぶのは白い飛竜のエスト。騎乗している王子様は頻繁に俺の方を振り返る。やっぱりまだ心配らしい。大丈夫だと手をあげてみせた。
俺が少ない魔力で覚えた魔法は三つ。これさえあればどうにかなるとルーシェンに教えてもらった。一つは簡単な回復魔法。二つ目は解毒魔法。三つ目が魔法防御の呪文。
魔法防御を覚えたおかげで、こうして飛竜に乗る時も自分で魔法をかけて調整できるし、たとえ墜落しても命を落とす可能性は低い。それに今はどんな魔法を使っても魔力酔いをすることはなくなった。
風をきって飛竜で飛ぶのは最高の経験だ。慣れるまでは何度もきつい練習を繰り返したけど、一度飛べたらやみつきになる。景色は美しいし、飛竜は可愛いし、飛ぶのは楽しい。もちろん、飛竜は生き物だから無理をさせないようにしないといけないけど。
でも今日は楽しんではいられない。今日は大事な任務でここに来ている。ここは隣国との国境付近で花粉の被害が多かった場所だ。村人たちはいまだに避難をしていて、眼下に見える村や街は全て無人だ。
「見つけた! ルーシェン!」
今日の大事な任務は俺にしかできない。それは空から影食いを探すことだ。影食いは地中に隠れているため見つけるのが困難な危険度の高い魔物だ。味方の被害を最小にするには俺が探すのが早い。
国境付近の森の中に真っ黒い影が見えた。黒い円形をしている。大きい。以前無人の集落で飛竜を食べたあいつだ。
ちなみに集落に住んでいた人たちには森に墜落した浮島を立て直して提供した。けっこう喜ばれているらしい。俺とルーシェンの部屋は観光名所になっているという話だ。ジャージとか置いてあるんだけど、無駄に奉られていて取りに行けない。
影食いはゆっくりと移動して、荒地の方へ進んでいる。おそらく飛竜の気配を魔力で察知して食べに来たのだろう。影食いは大きくなるほど大型の餌を狙うようになる。
「どこにいる!?」
「森から出て来た! 今はあの三つ並んだ岩の柱の近くだ。大きさは飛竜を十頭並べたくらい」
「分かった! 飛行部隊は攻撃体制をとれ! シュウヘイは上空で待機だ」
俺以外の飛行部隊の隊員がいっせいに高度を落とし、魔法を唱えて見えない影食いに接近する。アークさんが魔法の込められた矢をつがえて地面を射ると、土の中から巨大な口が現れた。
***
巨大な影食い一頭と、生き残りの中型の魔物二頭を倒し、魔物の亡骸に生え始めた妖花の芽を数えきれないほど焼いて、今回の任務は無事終了した。
荒地のテントで地平線を眺めながらみんなと食事をしたり野営をするのは楽しい。一度幽体離脱した時にお邪魔したけど、生身で参加できるとは思ってもいなかった。
岩山に日が沈むのを眺めてから太郎に餌をあげて軽く鱗を磨き、寝かしつける。俺の歌はルーシェンには下手だと言われたけど飛竜には人気だ。すぐに寝てくれる。
ルーシェンが飛竜のテントまで迎えに来てくれたので、二人で散歩しながら任務の話をした。
「この辺りはもう安全だな。村人を返しても良さそうだ」
「西側は?」
「明日ロベルトが合流するから、あとはアークとロベルトに頼もう」
「俺たちはどうするんだ? 先に王宮に帰るのか?」
「そうだな。帰る予定だが……」
「?」
ルーシェンがいたずらっ子のように笑って付け加える。
「少し遠回りして黄葉樹の街と、桃花村に寄っていこう」
約束、覚えていてくれたんだな。
「ルーシェン、ありがとう。そんなに寄り道して大丈夫かな」
「新しい城をどこに建てるか決めないといけないからな。少しくらい遅くなっても大丈夫だ」
「一から建てるのか?」
「古い城や邸宅を購入してもいい。城が嫌なら家でもいいぞ。シュウヘイと二人で過ごせる広さがあれば」
「二人か……」
結婚の儀式の時に見た夢では、俺とルーシェンは複数の子供と暮らしていた。それに一番下の子供はルーシェンによく似ていたような気がする。
日本人の俺が異世界に来て王子様と結婚し、魔力だって持ってしまうのだから、この先何があってもおかしくないよな。
「どうした? シュウヘイ」
「いや、なんでもない」
俺はルーシェンと手を繋ぎ、二人で眠るテントまで歩いて行った。
おわり
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