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カム

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日曜日、午後2時

3 異世界の村で童心にかえってみた

 料理はどれも美味しかった。特にパンと肉。野菜のスープは、味と形が微妙に俺の思っている味と違って新鮮だった。
外国の料理を味わってる感じだ。

『お母さん、この人どこから来たの?』
『さあねえ。この辺りの人じゃなさそうね』
『花から生まれたんじゃない?』
『花から人は生まれないのよ』
『でも裸だったよ』
『それはね……花に服を溶かされたのよ』
『ちんこ見えた』
『こらっ、下品な事言うもんじゃありません』

 俺が食事に専念している間に、女の人と子供はあれこれ話している。
もしかしたら親子かも。
でも、何かいいな。この雰囲気。

 俺の母親は俺が中学生の頃亡くなったし、親父は再婚して、兄貴と姉ちゃんは結婚して出て行ってるから、家族の団らんみたいな雰囲気は久しぶりだ。
 まあ、今でも家族集まれば仲はいいんだけど。それは過去の家族の団らんとは違うんだ。もうみんな自分の家族がいて、やっぱりそっちが優先っていうか。

……俺、その前に日本に戻れるのかな。

 食事を終えて、片付けようとすると女の人に止められた。

『いいのよ。ゆっくり休んでいて』
「バイトで皿洗いとかしてたんで大丈夫です」

 分からない言葉でもお互いに譲らず、結局俺は皿を拭かせてもらう事にした。

『律儀な子ねぇ~この辺りの男はみんな家事は一切しないのよ。あなた珍しいわ。最初見知らぬ男が来たって聞いた時は警戒したけど、村の男たちよりずっと優しくて可愛いわね』

 この言葉……何か褒められてる気がするぞ。
俺ははりきって皿を拭いた。

 片付けが終わると、子供が俺の手を引っ張って外に連れ出した。

「何だ?どこか行くのか?」
『外に行こう』

遊んで欲しいんだな、きっと。

 家の外の光景に、俺は少しびっくりしてしまった。
 俺が寝ていた家以外に数軒の家があり、ここが村だという事を知るのだが、村のまわりに木が生えていて、その木がやたらでかいのだ。

何十メートル?そんな大きさだ。

 ひょろりと長い木の下にある村の家は、実際には大きいのに、ミニチュアハウスに見える。初めて見た光景に俺は何本もの木を見上げた。

『お兄ちゃんはあっちから来たよ』

 子供の声に指さした方向を見ると、少し離れた場所に花畑が見えた。
うう、嫌な思い出の場所だ。
 この世界は、人間以外の動物や植物が大きいのかもしれない。
 この考えは後で完全に間違いだった事を知るのだが、大きな植物達はなかなか神秘的で、俺は完全に圧倒されていた。

 それから子供に小さな村を案内してもらった。

『ここがお店で……ここがみんなが集まる広場』

 よく分からないが、とりあえず頷く。
なかなか住み心地の良さそうな村だな。
村人はのんびり仕事をしていて、俺の姿を見ると声をかけてくれた。

「大丈夫だ。ありがとう」

 気さくな笑顔に笑顔で返す。
俺を発見してくれた子供の友達にも、伝わらないかもしれないけど、お礼を言って歩いた。

 それから何故か子供たちと鬼ごっこをする事になり、童心に返って延々と遊んでいるとすっかり日が暮れてきた。

こんな事でいいのだろうか。

 木の根元に座り込んで休憩していると、子供たちが集まって俺の服を引っ張り始める。

『お兄ちゃんの負けー』
『早く逃げてよ』
「俺はもう疲れた。子供は子供同士で遊べ」
『早くー立ち上がって!』

 よくテレビ番組でやってた海外ロケってこんな感じかもしれない。
いきなり知らない村に行って、泊めてもらうっていうあれ。
 俺、けっこう初対面の相手って得意だな。
 子供達のされるがままになっていると、俺を助けてくれた村人の一人が俺を呼びに来た。

『すっかり元気になったようだね。あんたにお客さんが来てるよ』

 よく分からず見上げてると、一緒にご飯を食べた子供が俺の手を引っ張った。

『お客さんだって』

 遊びすぎたかな?
仕事か何か手伝えって事か。

 昼に寝かされていた建物に戻ると(どうやらここが村長の住む建物らしい)数人の村人が待っていた。
 子供は俺の手を離し、料理を作ってくれた女性に飛びついた。

『お母さん、ただいま』
『お兄さんに迷惑かけなかった?』
『いっぱい遊んだよ』

 村人は数人いたけど、みんな正月に集まる親戚のような雰囲気で、思い思いの場所に座ってくつろいでいる。

 だが、その中に明らかに浮いた存在の男が一人混ざっていた。多分俺と同じくらいの妙な格好だ。

 おしゃれ眼鏡に明るすぎない茶色の髪。白いシャツにネクタイを締め、グレーのパンツスタイルに黒い革の靴。
それに革の黒いバッグはA4の書類が入る大きさだ。
 持っているジャケットこそ中世ヨーロッパのような襟付きのマントだったけど、それ以外は営業の若いにいちゃんといっても過言ではない。

ネクタイの柄は……杖?

 その男は俺を見て立ちあがると、にっこりと笑って俺にカードを差し出した。
カードもとい名刺だった。

「はじめまして。わたくし如月隼人きさらぎはやとと申します。またの名をハルバート、ハルでも隼人でも如月さんでも、好きなように呼んでください」

とその若い男は流ちょうな日本語で言った。

「日本人!?」

 俺が驚いていると、奴、如月隼人またの名をハルバートは
「まあ取り合えず座ってください」
と椅子を引いて俺に座るように促した。

 名刺を受取り、呆然と椅子に座る。
あれ……ここ、別の星でもなんでもなく日本なのか?山奥で映画のロケとか。

「映画関係者ですか?」

「いえ。名刺にも書いてある通り、私はこの国の魔法関連部署に勤めるしがないサラリーマンです」

と如月隼人は言った。
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