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カム

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日曜日、午後2時

4 ガイドブックもらいました

 俺は名刺を見た。

『ラキ王国 魔法関連部
営業主任 如月隼人 (ハルバート)』

 確かにそう印されている。漢字とカタカナで。あと、何か読めない文字も。
その下に電話番号らしき数字。

何かの冗談かな?

「驚かれるのも無理はありませんね。あなたがたの世界では我々の世界の事は全く知られてませんから」
「別世界なのか……?」

 変な質問だと思ったが聞いてみた。

「はい。れっきとした異世界です。異空間にありますがあなた方の世界とは隣接してます」
「……」
「信じなければ世界中を歩かれても結構ですが……認めた方が楽ですよ」

 俺の顔はよほど疑いに満ちていたらしい。如月は続けた。

「で、私の仕事は魔法関連のトラブル解決とでも言いましょうか……まあ、今回のケースは召喚魔法迷子の救助ですね」
「召喚魔法迷子……救助?」

「はい。ほとんどの方は弾かれるんですが、ごくたまにいらっしゃるんです。魔方陣から我々の世界にやって来てお困りになる方が」

魔方陣、ってあれか。

「今回はお二人だったので焦りました。普通は一人なんですけど。二人も一気に来られて、今の時期忙しいですから小さい部署は完全にパニックですよ」

 そう言うと、如月は振り返って現地の言葉で何か話した。

『あの、お茶もらえます?二つ』

 しばらくして俺と如月の前に村の女の人がお茶を出してくれる。

「ええと、ではここからが本題です。もとの世界に帰りたいですか?」

 如月が聞いてきたので、俺は激しく頷いた。ここもいいところだと思うが、生まれ故郷にはかなわない。知り合いも家族も友達もいる。

「帰れるのか?」
「帰れますよ。来た時のように魔方陣に乗ればすぐです」

 如月の答えを聞いて、俺はかなり安堵した。二度と帰れないとか言われたら、軽く心臓とまるところだった。

「魔方陣はいくつかあるんですが、安心安全でここから近いのは王都にある魔方陣ですね。ただし、魔方陣にはある程度魔力がたまらないと使えません。あとは呪文を唱える魔導師が必要です。魔導師はこちらで頼んでおきます」

 如月は持っていた手帳をぱらぱらとめくった。

「では、魔方陣に魔力が溜まる日をお教えしますね……ええと、次は日曜日ですね。来週の日曜の午前零時に魔方陣が使用できます」
「来週の日曜日?」

 今日が日曜だから、ちょうど一週間後くらいか。

「ラッキーですね。普通はそんなに簡単に魔力はたまらないんですよ。もしかしたら最短かもしれません」
「魔力ってどうやってたまるんだ?」
「月の魔力が関係してきます。星の配置なども重要で……」

占いみたいなもんか。

「つまり、来週の日曜の午前零時に魔方陣に入ったら、来たときみたいにもとの場所に帰れるって事か」
「はい。その通りです」

 如月はにっこり笑顔で頷いた。
なんか胡散臭い営業スマイルのような気がするな。

「ただ、一つ問題がありまして……」

ほらきた!
どこかに落とし穴がある気がしたんだ。

「私、今とても忙しく、本来ならお帰りまである程度面倒見るのですが」

 如月は小さな本を取り出し俺に手渡した。

「申し訳ないですが、お兄さんお一人で魔方陣のある王都まで行っていただけませんか?」

なんだ、そんな事か。

「別にいいぞ」

俺は如月にもらった本を見た。

『旅のガイドブック 
楽しく歩こうラキ王国』

と日本語で書かれてる。
表紙にはドレスアップした女性と騎士のような格好の男が微笑みを浮かべたイラストが描いてある。何だこれ……。

 ぱらぱらめくってみると、旅行ガイド本のように観光名所やおいしい食べ物、ラキ王国とかいう国の歴史が書いてあった。

「後ろ半分は辞書になってます。簡単な挨拶文やよく使うフレーズも載ってますよ」

 確かに。
『ありがとう』や『すみません』『トイレはどこですか?』とか使えると便利だ。でも、相手が何て言っているのかわかればもっといいのにな。
 そんな俺の気持ちを見透かしたように、如月は鞄から小さな部品を取り出した。

「こちらをどうぞ。自動翻訳機です」

え!?

「耳にはめてみて下さい」

 おそるおそる、その自動翻訳機というイヤホンみたいな小さなものを片耳にはめてみる。

「……!」

 すると、それまでBGMでしかなかった村人の声が言葉になって流れ込んできた。

「……あの兄ちゃん、異世界人だってなあ~」
「それで花の中にいたのか」
「わし、異世界人初めて見たけど、あんまりわしらと変わらねえなぁ」

 みんな俺の噂をしてるみたいだ。

「お母さんおなかすいた。ご飯まだ?」
「王都の偉い人のお話が終わったらね」

 あの子供と女の人が話してる言葉も分かった。やっぱり親子だったのか。

「すごいな!ラキ王国!」

 俺はその小さな翻訳機を耳から出してまじまじと見た。かなり高度な技術だ。

「いえ、科学技術ではあなた方の世界の足元にもおよびません。あなた方の世界の科学技術を参考に、魔法でアレンジしているのです」

と如月は得意気に言った。
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