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部下たちのお話3
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②ポリム
「お食事中でしたのに、お邪魔ではありませんでしたか?」
ポリムが十階のカフェを訪れた時、ハルバートは別の魔法関連部の男性と食事をとっていた。だが、ポリムの姿を見てハルバートは場所を変えてくれるという。
「大丈夫です。仕事の話なら個室の方がいいでしょう。彼のことは気になさらず。偶然会っただけですから」
「助かります」
地位の高い人々が仕事で使用する眺めのいいテラス席に移動すると、ハルバートはさらに人払いの魔法をかけた。その鮮やかで正確な魔法にポリムはいつもときめいてしまう。魔法を扱う人間なら、呪文の正確性や魔力の多さ、威力の高い呪文を習得している魔法使いはすぐに分かる。ハルバートはポリムが知る限り、同世代の魔法使いの中では群を抜いて優秀だった。次期魔法関連部の部長と言われているのも頷ける。
「ミサキ様のことでハルバート様に相談が」
ポリムは持ち歩いていた鞄から紙や巻物などの書類を取り出した。そこには各地の建物や城が記載されている。
「実は王子様に頼まれてミサキ様の新しい住居を探していますの。ハルバート様は異世界担当課ですし、ミサキ様や異世界の住居にも詳しいので、候補地や家具などを選んでいただけないでしょうか。注意すべきことがあれば何でもおっしゃっていただけると助かりますわ」
「分かりました。では明日までに候補地や住居をいくつか選んでおきましょう。ミサキ様の耳には入れない方が良さそうですね」
「そうなんです。王子様は次の休暇にミサキ様を旅行に誘う予定なのです。ですからどうかそれまでご内密に」
ポリムは主人の喜ぶ顔を想像し、決意を新たにした。台無しになった婚約旅行の代わりに、何がなんでも素晴らしい旅を準備しなければ。
***
ハルバートと別れ、他の雑用を済ませるとポリムは自宅に戻ることにした。ポリムたちプライベートエリアの従者は専属の塔に住居が集中している。王宮に住むエリートの中でもその塔に部屋を借りられるのはごく一部だ。その塔のカードキーを持っているだけで羨望の的になる。
塔に向かう空中回廊を歩いていると、見覚えのある飛竜がすぐそばを飛行するのが視界に入った。乗っていた飛行部隊と目が合う。ポリムは彼の飛竜が広場に降り立つのを眺め、しばらくその場で待つ事にした。飛竜から降りた金髪の兵士が石板エレベーターでポリムの待つ回廊にやって来る。
「こんな所で会うなんて珍しいな」
「今日は午後からお休みをいただいたの。ジョージ、あなたは?」
「俺も今日の任務は終わりだ」
飛行部隊のジョージはポリムの主人である王太子妃ミサキ様の専属の護衛兵だ。ミサキ様の危機に二人で何度も立ち向かった結果、お互いすっかり同志のような存在になっていた。二人とも王子が好きでそれぞれの職場を選び、その後王太子妃のことも大好きになった。主人たちの幸せを願う気持ちは誰よりも強いと自負している。ただ、前回の婚約旅行で同志だった二人の関係は微妙に変化していた。
「休みなら一緒に食事でもとらないか?」
ジョージがそう言ったので、ポリムも頷いた。
「お食事中でしたのに、お邪魔ではありませんでしたか?」
ポリムが十階のカフェを訪れた時、ハルバートは別の魔法関連部の男性と食事をとっていた。だが、ポリムの姿を見てハルバートは場所を変えてくれるという。
「大丈夫です。仕事の話なら個室の方がいいでしょう。彼のことは気になさらず。偶然会っただけですから」
「助かります」
地位の高い人々が仕事で使用する眺めのいいテラス席に移動すると、ハルバートはさらに人払いの魔法をかけた。その鮮やかで正確な魔法にポリムはいつもときめいてしまう。魔法を扱う人間なら、呪文の正確性や魔力の多さ、威力の高い呪文を習得している魔法使いはすぐに分かる。ハルバートはポリムが知る限り、同世代の魔法使いの中では群を抜いて優秀だった。次期魔法関連部の部長と言われているのも頷ける。
「ミサキ様のことでハルバート様に相談が」
ポリムは持ち歩いていた鞄から紙や巻物などの書類を取り出した。そこには各地の建物や城が記載されている。
「実は王子様に頼まれてミサキ様の新しい住居を探していますの。ハルバート様は異世界担当課ですし、ミサキ様や異世界の住居にも詳しいので、候補地や家具などを選んでいただけないでしょうか。注意すべきことがあれば何でもおっしゃっていただけると助かりますわ」
「分かりました。では明日までに候補地や住居をいくつか選んでおきましょう。ミサキ様の耳には入れない方が良さそうですね」
「そうなんです。王子様は次の休暇にミサキ様を旅行に誘う予定なのです。ですからどうかそれまでご内密に」
ポリムは主人の喜ぶ顔を想像し、決意を新たにした。台無しになった婚約旅行の代わりに、何がなんでも素晴らしい旅を準備しなければ。
***
ハルバートと別れ、他の雑用を済ませるとポリムは自宅に戻ることにした。ポリムたちプライベートエリアの従者は専属の塔に住居が集中している。王宮に住むエリートの中でもその塔に部屋を借りられるのはごく一部だ。その塔のカードキーを持っているだけで羨望の的になる。
塔に向かう空中回廊を歩いていると、見覚えのある飛竜がすぐそばを飛行するのが視界に入った。乗っていた飛行部隊と目が合う。ポリムは彼の飛竜が広場に降り立つのを眺め、しばらくその場で待つ事にした。飛竜から降りた金髪の兵士が石板エレベーターでポリムの待つ回廊にやって来る。
「こんな所で会うなんて珍しいな」
「今日は午後からお休みをいただいたの。ジョージ、あなたは?」
「俺も今日の任務は終わりだ」
飛行部隊のジョージはポリムの主人である王太子妃ミサキ様の専属の護衛兵だ。ミサキ様の危機に二人で何度も立ち向かった結果、お互いすっかり同志のような存在になっていた。二人とも王子が好きでそれぞれの職場を選び、その後王太子妃のことも大好きになった。主人たちの幸せを願う気持ちは誰よりも強いと自負している。ただ、前回の婚約旅行で同志だった二人の関係は微妙に変化していた。
「休みなら一緒に食事でもとらないか?」
ジョージがそう言ったので、ポリムも頷いた。
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