転生したら神子さまと呼ばれています

カム

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ep7.神官と聖騎士団

9 素晴らしいこと

 夜明け前、窓の外が少し明るくなる気配で目を覚ました。一瞬自分がどこにいる誰なのか分からなくてぼんやりする。
 白いカーテン。窓の形からして病院じゃない。自分の身体にまわされた手に触れて八百年前でもないと理解した。

 隣にアルバートが眠っていた。起こさないように慎重に動いて身体の向きを変える。アルバートより先に起きたの初めてかもしれない。眠っているアルバートはいつもより少しだけ年相応に見える。いつもは険しい顔をしているか無表情で、もちろんそれもかっこいいんだけど、寝ている時の顔も好きだ。

 手を伸ばして頬に触れて、力を入れないように抱きしめる。大好きな俺の結婚相手。アルバートには迷惑だと思うけど、このくらいなら甘えてもいいかな。抱きしめてから自分がほとんど裸に近いことに気づいた。下着は身につけてる。でもズボンも上着もない。
 裸でアルバートに迫っている自分が恥ずかしくて慌てて離れようとしたら、アルバートが目を開けた。

「お、おはよう」
「……神子さま、今日も我々に祝福を与えてくださってありがとうございます」

 アルバート、寝ぼけてる?

「哀れな護衛を試しておいでなのですか?」
「試してないよ」
「護衛は神子さまに触れると厳罰に処せられますので……」

 そう言って目を閉じたけど、言葉とは裏腹に俺を抱き寄せる。眠ったのかな。

「うわ」

 違った。寝てない。背中を撫でる手がやらしい。お尻も触られてる。

「アル、起きてるだろ!」

 小声で文句を言うとアルバートは目を閉じたまま笑った。

「眠っていますのでかなめ様の好きなようにどうぞ」
「別に俺は何もしてないし……!」
「では私の気のせいだったのですね」
「うう……」

 俺の気持ち、アルバートには完全に見透かされてる気がする。でもあまり重いと思われたくないから何とか振り払って起き上がった。

「目が覚めたからもう起きるよ」
「かなめ様、裸で国民の前に出るのはさすがにやめた方が」
「服を探してるんだって」

 おかしい。服が見当たらない。俺がパンツ一枚で服を探し回るのをアルバートがベッドからニヤニヤ眺めてる。

「アル、俺の服どこにあるか知らない?」
「かなめ様の衣装ならガルーダが巣に運んでいたような」
「えっ?」

 おもちの籠を見ると、確かに俺の服がくしゃくしゃに運び込まれていて、おもちがその中で眠っていた。だいぶ汚れてる。

「灯台守の爺さんに言って新しい服をもらえばいい」

 アルバートがいつもの話し方に戻った。後ろから抱きしめられて、そのままベッドに押し倒される。昨日の夜のことを思い出して顔が熱くなった。

「でもまだ起きるには早いから、もう少し眠ろう」
「……うん」

 アルバートが軽く俺に口付けして、それから少し頭を抱えた。

「どうしたの?」
「お前のその格好、やっぱり目の毒だな」

***

「神子さま、昨夜はよく眠れましたでしょうか」
「……はい。ぐっすり眠れました」
「それはよろしゅうございました。今日もお目覚めくださりありがとうございます」

 俺がまた長い眠りにつくとか心配されてるのかな。

「新しい服もありがとう」
「いえいえ、あまり上質な衣装ではないので心苦しいのですが」

 灯台守のお爺さんは何の疑問も持たずにすぐに新しい衣装を用意してくれた。話を聞けば昨日は夜通し起きてお祈りをしたり見回りなんかもしたそうだ。でも、俺とアルバートの事は何も言わなかった。

「神子さま、実は素晴らしいことが」
「えっ?」
「外をご覧ください」

 お爺さんに案内されて灯台の二階部分からテラスに出る。そこは村の周囲や遠くの海まで一望できるようになっていた。

「明るい……」

 昨日より空がずっと明るい。それに視界に淡いピンク色が映ってる。この色の少ない辺境で明るいピンクなんて見たことなかったのに。

「今朝、夜があけて大変驚きました。もともとこのような時刻に空が明るくなる事はまずなかったのですが、庭にこれまで見たことのない花が咲いていたのです。この辺境ではこのように鮮やかな色の花は一度も目にした事はございません」

 淡いピンクは一面の花だった。灯台を囲むようにピンクの花が咲いてる。遅れてテラスにやって来たアルバートが、同じように外を見て絶句している。

「私はきっとこの景色を見るために生まれてきたのでしょう。皆の祈りが通じて神子さまがお目覚めくださった。この奇跡に感謝を」

 お爺さんが涙ぐんでる。バタバタと子供達が走って部屋に入ってきた。

「お爺さま! 神子さまにお花を摘んできました!」
「お前たち、神子さまの前で大声を出すんじゃない」
「ごめんなさい」
「神子さま、聖騎士さま、朝食の用意も整っております。お食事はどちらで召し上がりますか? お部屋でも食堂でも準備いたしますが」
「後で食堂に行きます」
「ではお待ちしております」

 お爺さんが部屋に戻っても、アルバートはまだ辺境の風景を眺めていた。

「アル、朝ごはん食べに行く?」

 誘うと、アルバートは感慨深い表情で俺を見た。

「お前は本当にすごいな」
「そう? 俺もびっくりした。綺麗だけど、どうしてピンクの花が咲いたんだろうね」

 不思議に思って言うと、アルバートは声をひそめた。

「それは昨日かなめ様が可愛い声で喘いで魔力を振り撒いていたからじゃないか?」

 うっ、意外とそれが正解のような気がする。
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