転生したら神子さまと呼ばれています

カム

文字の大きさ
102 / 114
ep7.神官と聖騎士団

11 ナラミテの街

 ずっと空を飛び続けているのかと思うほど長い時間がすぎた頃、ようやく眼下に崖と大きな城壁のある都市が見え始めた。実際に飛んでいたのは多分一時間もないくらいだと思うけど。

「あれがナラミテの街?」
「ああ。聖騎士第七部隊の駐屯地がある」

 ナラミテの街はそれまでの村や集落と違ってちゃんとした都市だった。茶色い石の城壁が崖に向かって広範囲に続いている。城壁にお城といってもいいくらいの高い建物がくっついていて、壁の内側には路地が迷路のように並んでる。背の低い建物が路地の隙間を埋めるように建てられていた。初めて見たエルトリアの地方都市の様子が珍しくて怖さも忘れて見入ってしまった。

 近づくうちに大型の鳥が俺たちのそばに来て一緒に飛び始めた。ジャターユだ。偵察用の鳥。

「早いな。第一部隊が来てるのか」

 そういえば……昨日お風呂場でこっそり聞いた話では、第一部隊が王族を護衛してナラミテに向かっていると言っていた。もう到着してるのかな。王族って誰だろう。王様じゃないといいな。名前も忘れたけど、あの王様苦手だ。

「レイ隊長に会える?」
「おそらく。親しかったのか?」
「散歩するとき護衛してもらった」
「そうか。まあ、会いたくないやつもいるかもしれないけどな。見ろ、高そうな馬車が何台もナラミテに向かってる」

 確かに街の反対側、遠くの明るい方角に複数の馬車や大勢の人々が行列を作っているのが見えた。立派な馬車とその護衛たちみたいだ。みんな大丈夫だったのかな。アラン隊長やヨルグは来ていないのかな。

 そのうち都市の城壁からもグリフォンが三頭こっちに向かって来るのが見えた。聖騎士達も乗せてる。ロジェさんが手を振った。

「神子さま!」
「お迎えにあがりました!」

 初めて会う聖騎士たちだ。みんな嬉しそうだったけど、身体に包帯が巻かれているのが見えてはっとした。包帯の下が黒く滲んでる。あれは呪いだろうか。

 グリフォンとジャターユたちに先導されて、ナラミテの城壁の屋上部分にゆっくりと降りていく。集まっていた聖騎士や神官が膝をついているのが分かったから、下降する恐怖に必死で耐えた。怖すぎて泣いてる場合じゃない。しっかりしないと。俺は神子なんだから。

「うぅ……」

 ようやくゼフィーが城壁の上に着地して、先に降りたアルバートが俺を抱えておろしてくれる。吐きそうな俺の呻き声は、みんなの啜り泣きでかき消された。

「神子さま……!」
「よくご無事で……」

「かなめ様、救出が遅れて申し訳ありません。ご無事で何よりです。アルバート殿、ロジェ、ご苦労だった」

 よく知った声に顔をあげると、部下に支えられてジャック隊長がこっちに歩いてくるところだった。

「隊長!」

 アルバートが思わず声をあげる。俺も心臓がぎゅっとなった。ジャック隊長の足には棘付きの鎖がたくさん巻き付いていて、左半身が真っ黒だ。

「ジャック隊長、大丈夫ですか」

 跪いて挨拶しようとするジャック隊長に駆け寄ってとりあえず足に触れる。全部治すのには時間がかかりそうだけど、とりあえずこの大きな鎖はなんとか出来るはず。このままだとかなり痛いだろうから。

 両手に回復魔法をぎゅっと集めて鎖に触れると、黒い鎖はポロポロと崩れて消えた。集まっていた聖騎士や神官達が一斉に静かになる。

「凄いな。さすがは神子さまだ……」
「応急処置です。あとでもう少し治療しますね」

 顔をあげてそう言うと、なぜか周囲で大歓声が上がり、びっくりしてアルバートを振り返った。アルバートはうんうん頷いてるしロジェさんは涙ぐんでる。良かった。ここでも少しはみんなの役に立てそうだ。

***

「長い間、辛い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。この砦は大神殿と比べれば居心地は悪いかもしれませんが、できるだけかなめ様が快適に過ごせるよう準備をしています」
「ありがとう。イルケデニアスにいた頃は大変だったから、ここはとても居心地が良さそうです」
「アルバートの連絡で知りました。あの地下道に転移させられたのは不運でしたね」

 ジャック隊長に案内されて、城壁の屋上から階段を下り、お城みたいな建物の中に入る。ゼフィーのことはロジェさんに任せたのでアルバートと二人だ。隊長はまだ歩くのがつらそうだから、アルバートと二人で支えようとしたら断られた。

「でもまだ足が」
「かなめ様に触れられると恋に落ちてしまいそうです。そうなったらアルバートに殺されますので」

 ジャック隊長に笑顔でそう言われて慌てて手を引っ込めた。隊長は渋くて顔もいいし、そんなことさらっと言われると困る。もちろん冗談だと思うけど。

「かなめ様、聖騎士も神官ももとから神子さまを崇拝しておりますが、お目覚めになったかなめ様は、素晴らしい力と、さらに目も眩むような美しさをお持ちです。狂信的な者もいますのでお一人になることのないようくれぐれもお気をつけください」

「大丈夫だと思います。俺、男だし、もう結婚しているので」

 そう伝えると、ジャック隊長とアルバートは顔を見合わせた。何か変なこと言ったかな。

 


 
感想 244

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。