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ep7.神官と聖騎士団
11 ナラミテの街
ずっと空を飛び続けているのかと思うほど長い時間がすぎた頃、ようやく眼下に崖と大きな城壁のある都市が見え始めた。実際に飛んでいたのは多分一時間もないくらいだと思うけど。
「あれがナラミテの街?」
「ああ。聖騎士第七部隊の駐屯地がある」
ナラミテの街はそれまでの村や集落と違ってちゃんとした都市だった。茶色い石の城壁が崖に向かって広範囲に続いている。城壁にお城といってもいいくらいの高い建物がくっついていて、壁の内側には路地が迷路のように並んでる。背の低い建物が路地の隙間を埋めるように建てられていた。初めて見たエルトリアの地方都市の様子が珍しくて怖さも忘れて見入ってしまった。
近づくうちに大型の鳥が俺たちのそばに来て一緒に飛び始めた。ジャターユだ。偵察用の鳥。
「早いな。第一部隊が来てるのか」
そういえば……昨日お風呂場でこっそり聞いた話では、第一部隊が王族を護衛してナラミテに向かっていると言っていた。もう到着してるのかな。王族って誰だろう。王様じゃないといいな。名前も忘れたけど、あの王様苦手だ。
「レイ隊長に会える?」
「おそらく。親しかったのか?」
「散歩するとき護衛してもらった」
「そうか。まあ、会いたくないやつもいるかもしれないけどな。見ろ、高そうな馬車が何台もナラミテに向かってる」
確かに街の反対側、遠くの明るい方角に複数の馬車や大勢の人々が行列を作っているのが見えた。立派な馬車とその護衛たちみたいだ。みんな大丈夫だったのかな。アラン隊長やヨルグは来ていないのかな。
そのうち都市の城壁からもグリフォンが三頭こっちに向かって来るのが見えた。聖騎士達も乗せてる。ロジェさんが手を振った。
「神子さま!」
「お迎えにあがりました!」
初めて会う聖騎士たちだ。みんな嬉しそうだったけど、身体に包帯が巻かれているのが見えてはっとした。包帯の下が黒く滲んでる。あれは呪いだろうか。
グリフォンとジャターユたちに先導されて、ナラミテの城壁の屋上部分にゆっくりと降りていく。集まっていた聖騎士や神官が膝をついているのが分かったから、下降する恐怖に必死で耐えた。怖すぎて泣いてる場合じゃない。しっかりしないと。俺は神子なんだから。
「うぅ……」
ようやくゼフィーが城壁の上に着地して、先に降りたアルバートが俺を抱えておろしてくれる。吐きそうな俺の呻き声は、みんなの啜り泣きでかき消された。
「神子さま……!」
「よくご無事で……」
「かなめ様、救出が遅れて申し訳ありません。ご無事で何よりです。アルバート殿、ロジェ、ご苦労だった」
よく知った声に顔をあげると、部下に支えられてジャック隊長がこっちに歩いてくるところだった。
「隊長!」
アルバートが思わず声をあげる。俺も心臓がぎゅっとなった。ジャック隊長の足には棘付きの鎖がたくさん巻き付いていて、左半身が真っ黒だ。
「ジャック隊長、大丈夫ですか」
跪いて挨拶しようとするジャック隊長に駆け寄ってとりあえず足に触れる。全部治すのには時間がかかりそうだけど、とりあえずこの大きな鎖はなんとか出来るはず。このままだとかなり痛いだろうから。
両手に回復魔法をぎゅっと集めて鎖に触れると、黒い鎖はポロポロと崩れて消えた。集まっていた聖騎士や神官達が一斉に静かになる。
「凄いな。さすがは神子さまだ……」
「応急処置です。あとでもう少し治療しますね」
顔をあげてそう言うと、なぜか周囲で大歓声が上がり、びっくりしてアルバートを振り返った。アルバートはうんうん頷いてるしロジェさんは涙ぐんでる。良かった。ここでも少しはみんなの役に立てそうだ。
***
「長い間、辛い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。この砦は大神殿と比べれば居心地は悪いかもしれませんが、できるだけかなめ様が快適に過ごせるよう準備をしています」
「ありがとう。イルケデニアスにいた頃は大変だったから、ここはとても居心地が良さそうです」
「アルバートの連絡で知りました。あの地下道に転移させられたのは不運でしたね」
ジャック隊長に案内されて、城壁の屋上から階段を下り、お城みたいな建物の中に入る。ゼフィーのことはロジェさんに任せたのでアルバートと二人だ。隊長はまだ歩くのがつらそうだから、アルバートと二人で支えようとしたら断られた。
「でもまだ足が」
「かなめ様に触れられると恋に落ちてしまいそうです。そうなったらアルバートに殺されますので」
ジャック隊長に笑顔でそう言われて慌てて手を引っ込めた。隊長は渋くて顔もいいし、そんなことさらっと言われると困る。もちろん冗談だと思うけど。
「かなめ様、聖騎士も神官ももとから神子さまを崇拝しておりますが、お目覚めになったかなめ様は、素晴らしい力と、さらに目も眩むような美しさをお持ちです。狂信的な者もいますのでお一人になることのないようくれぐれもお気をつけください」
「大丈夫だと思います。俺、男だし、もう結婚しているので」
そう伝えると、ジャック隊長とアルバートは顔を見合わせた。何か変なこと言ったかな。
「あれがナラミテの街?」
「ああ。聖騎士第七部隊の駐屯地がある」
ナラミテの街はそれまでの村や集落と違ってちゃんとした都市だった。茶色い石の城壁が崖に向かって広範囲に続いている。城壁にお城といってもいいくらいの高い建物がくっついていて、壁の内側には路地が迷路のように並んでる。背の低い建物が路地の隙間を埋めるように建てられていた。初めて見たエルトリアの地方都市の様子が珍しくて怖さも忘れて見入ってしまった。
近づくうちに大型の鳥が俺たちのそばに来て一緒に飛び始めた。ジャターユだ。偵察用の鳥。
「早いな。第一部隊が来てるのか」
そういえば……昨日お風呂場でこっそり聞いた話では、第一部隊が王族を護衛してナラミテに向かっていると言っていた。もう到着してるのかな。王族って誰だろう。王様じゃないといいな。名前も忘れたけど、あの王様苦手だ。
「レイ隊長に会える?」
「おそらく。親しかったのか?」
「散歩するとき護衛してもらった」
「そうか。まあ、会いたくないやつもいるかもしれないけどな。見ろ、高そうな馬車が何台もナラミテに向かってる」
確かに街の反対側、遠くの明るい方角に複数の馬車や大勢の人々が行列を作っているのが見えた。立派な馬車とその護衛たちみたいだ。みんな大丈夫だったのかな。アラン隊長やヨルグは来ていないのかな。
そのうち都市の城壁からもグリフォンが三頭こっちに向かって来るのが見えた。聖騎士達も乗せてる。ロジェさんが手を振った。
「神子さま!」
「お迎えにあがりました!」
初めて会う聖騎士たちだ。みんな嬉しそうだったけど、身体に包帯が巻かれているのが見えてはっとした。包帯の下が黒く滲んでる。あれは呪いだろうか。
グリフォンとジャターユたちに先導されて、ナラミテの城壁の屋上部分にゆっくりと降りていく。集まっていた聖騎士や神官が膝をついているのが分かったから、下降する恐怖に必死で耐えた。怖すぎて泣いてる場合じゃない。しっかりしないと。俺は神子なんだから。
「うぅ……」
ようやくゼフィーが城壁の上に着地して、先に降りたアルバートが俺を抱えておろしてくれる。吐きそうな俺の呻き声は、みんなの啜り泣きでかき消された。
「神子さま……!」
「よくご無事で……」
「かなめ様、救出が遅れて申し訳ありません。ご無事で何よりです。アルバート殿、ロジェ、ご苦労だった」
よく知った声に顔をあげると、部下に支えられてジャック隊長がこっちに歩いてくるところだった。
「隊長!」
アルバートが思わず声をあげる。俺も心臓がぎゅっとなった。ジャック隊長の足には棘付きの鎖がたくさん巻き付いていて、左半身が真っ黒だ。
「ジャック隊長、大丈夫ですか」
跪いて挨拶しようとするジャック隊長に駆け寄ってとりあえず足に触れる。全部治すのには時間がかかりそうだけど、とりあえずこの大きな鎖はなんとか出来るはず。このままだとかなり痛いだろうから。
両手に回復魔法をぎゅっと集めて鎖に触れると、黒い鎖はポロポロと崩れて消えた。集まっていた聖騎士や神官達が一斉に静かになる。
「凄いな。さすがは神子さまだ……」
「応急処置です。あとでもう少し治療しますね」
顔をあげてそう言うと、なぜか周囲で大歓声が上がり、びっくりしてアルバートを振り返った。アルバートはうんうん頷いてるしロジェさんは涙ぐんでる。良かった。ここでも少しはみんなの役に立てそうだ。
***
「長い間、辛い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。この砦は大神殿と比べれば居心地は悪いかもしれませんが、できるだけかなめ様が快適に過ごせるよう準備をしています」
「ありがとう。イルケデニアスにいた頃は大変だったから、ここはとても居心地が良さそうです」
「アルバートの連絡で知りました。あの地下道に転移させられたのは不運でしたね」
ジャック隊長に案内されて、城壁の屋上から階段を下り、お城みたいな建物の中に入る。ゼフィーのことはロジェさんに任せたのでアルバートと二人だ。隊長はまだ歩くのがつらそうだから、アルバートと二人で支えようとしたら断られた。
「でもまだ足が」
「かなめ様に触れられると恋に落ちてしまいそうです。そうなったらアルバートに殺されますので」
ジャック隊長に笑顔でそう言われて慌てて手を引っ込めた。隊長は渋くて顔もいいし、そんなことさらっと言われると困る。もちろん冗談だと思うけど。
「かなめ様、聖騎士も神官ももとから神子さまを崇拝しておりますが、お目覚めになったかなめ様は、素晴らしい力と、さらに目も眩むような美しさをお持ちです。狂信的な者もいますのでお一人になることのないようくれぐれもお気をつけください」
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