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ep.2求婚者たち
6 ルーリーさん
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「神子さま、私と一緒に来ていただけませんか? 宴が始まる前に会場に行きましょう」
「ワイアット殿、今は私が神子さまとお話をしている時間なんですが」
「ヨルグ君、神子さまの独り占めはよくない。それに、両親も来ているし神子さまにぜひ会っていただきたいんだ」
両親? ということはアルバートの両親だよな。それなら挨拶しないと。俺にとっても義理の両親ってことになる。
「分かりました。行きます。本当ならもっと早く挨拶しないといけないですよね」
「神子さま!」
「ヨルグ、またね」
ヨルグに手を振ってそう言うと、ヨルグはなんとも言えない表情をした。なんだか悪い事をしたような気がするけど、この先何度も会えそうだしいいか。司祭さまとアラン隊長に一言伝えて、先にパーティー会場に行ってみることにした。ワイアット兄さんがそのまま俺の手をとってエスコートしてくれる。この国の人はみんな自然とこういう事ができるのかな。
「アルバートも一緒にいるんですか?」
「もちろんです。私が披露宴に家の皆を呼んだので」
「そうなんですね。朝から姿が見えなかったのでどこに行ったのかと思ってました」
実家のみんなに久々に会えたから話してたんだな。
安心していたら、ワイアット兄さんがじっと俺の顔を見ているのに気づいた。
「あの……?」
「神子さまは弟をどうお思いですか?」
「えっ?」
「弟は神子さまの期待に応えられているでしょうか。神子さまを満足させていますか?」
満足って……なんだろう。好みのタイプかどうかってことかな。朝エリンにも同じようなこと聞かれたけど。
「あの、ちゃんと優しくしてくれます」
これはちょっと嘘だ。二人っきりの時はそんなに優しくない。
でも多分だけど、俺はアルバートのことが嫌いじゃない。好きかと言われるとまだよく分からないけど、姿が見えないとどこに行ったのか気になるし。
まだ会って二日しかたっていないのに、昔から知っていたような気がする。ヨルグみたいに似ている人も思い浮かばないのに。
転生して初めて会った人だからかな。魔法契約してるから信頼しているのかも。
考え込んでいると、ワイアットの指が耳たぶに触れて身体がびくっとした。
「な、何か」
「失礼。耳飾りがずれていましたので」
「あっ、ありがとう」
びっくりした。急に触ってくるなんて思わなかった。それに飾りになんて触れてなかった気がするけど。
「神子さま、弟に退屈したらぜひ私をご指名くださいね」
「え?」
「弟は昔から堅物で気の利かない男ですから、物足りない時は私がお慰めしましょう。もちろん弟と一緒でも構いませんよ。私たちは仲の良い兄弟ですから」
なんだろう、ワイアット兄さんは優しいのになんとなく怖いし苦手だ。アルバートの方が無愛想なのに怖くない。
「あの、まだ目が覚めてから二日だし、何もわかっていないので」
「そうですね。神子さまがはやく今の暮らしに慣れるように私も尽力いたします」
パーティー会場までの短い距離がすごく長く感じる。やっぱりヨルグか司祭さまに案内してもらえば良かった。
朝、上の階から眺めた会場は神官たちが掃除をしているだけだったのに、今は昨日みたいにテーブルや椅子がきっちり並べられていた。お客さんもたくさんいて、神官たちはみんなとても忙しそうにしてる。声がとぎれとぎれにしか聞こえてこないけど、俺のことが話題にのぼっているのは分かる。
「一度庭に出ましょうか。ここから会場に入ると囲まれて身動きが取れなくなりますから」
「はい」
「神子さまは素直で可愛らしい」
ワイアット兄さんがいちいち褒めてくるのも気まずい。そろそろ手を離して欲しいんだけど、最初より強く握られてる気がする。
庭は朝散歩した場所とは違っていて、剪定された生垣が背の高さまで並んだ立体迷路みたいになっていた。こういう迷路、体験してみたかったんだよな。
小道を少し歩くと、その先に少し開けた場所がある。風に乗って誰かの話し声も聞こえてきた。
「大神殿の庭園は特別ね。こんなに素敵なお庭は見たことがないわ。お花の種類も豊富で、とても綺麗」
女の人の声だ。
神殿には女の人がいないから、お客さんの一人かな。
「私の夢を叶えてくれてありがとう。このドレスも。こんなに上等なドレスは一生着られないと思っていたわ。私、浮いていない?」
「俺は特に……何もしていない。別に浮いていないし、似合ってる」
思わず足が止まった。
この声、アルバートだ。
「不思議ね。アルの結婚式に呼ばれるなんて想像もしていなかったわ」
不意に胸が苦しくなった。
アルの結婚式……この言葉を聞いただけなのに、なぜか分からないけどすごく胸が痛い。
「神子さま、どうなさいました?」
そのまま立ち去ってしまいたかったのに、ワイアット兄さんは俺の手を握ったまま二人に近づいて行った。
「アル、神子さまを放ってルーリーと二人で会っているとは、伴侶失格なんじゃないか?」
驚いたアルバートと、その隣にいた女性、ルーリーさんが同時に振り返る。
ルーリーさんは長い髪を花で飾り、シンプルな水色のドレスを身に纏った大人っぽい女性だった。優しそうで綺麗で、アルバートの隣に立つと、とてもお似合いだと思った。
「ワイアット殿、今は私が神子さまとお話をしている時間なんですが」
「ヨルグ君、神子さまの独り占めはよくない。それに、両親も来ているし神子さまにぜひ会っていただきたいんだ」
両親? ということはアルバートの両親だよな。それなら挨拶しないと。俺にとっても義理の両親ってことになる。
「分かりました。行きます。本当ならもっと早く挨拶しないといけないですよね」
「神子さま!」
「ヨルグ、またね」
ヨルグに手を振ってそう言うと、ヨルグはなんとも言えない表情をした。なんだか悪い事をしたような気がするけど、この先何度も会えそうだしいいか。司祭さまとアラン隊長に一言伝えて、先にパーティー会場に行ってみることにした。ワイアット兄さんがそのまま俺の手をとってエスコートしてくれる。この国の人はみんな自然とこういう事ができるのかな。
「アルバートも一緒にいるんですか?」
「もちろんです。私が披露宴に家の皆を呼んだので」
「そうなんですね。朝から姿が見えなかったのでどこに行ったのかと思ってました」
実家のみんなに久々に会えたから話してたんだな。
安心していたら、ワイアット兄さんがじっと俺の顔を見ているのに気づいた。
「あの……?」
「神子さまは弟をどうお思いですか?」
「えっ?」
「弟は神子さまの期待に応えられているでしょうか。神子さまを満足させていますか?」
満足って……なんだろう。好みのタイプかどうかってことかな。朝エリンにも同じようなこと聞かれたけど。
「あの、ちゃんと優しくしてくれます」
これはちょっと嘘だ。二人っきりの時はそんなに優しくない。
でも多分だけど、俺はアルバートのことが嫌いじゃない。好きかと言われるとまだよく分からないけど、姿が見えないとどこに行ったのか気になるし。
まだ会って二日しかたっていないのに、昔から知っていたような気がする。ヨルグみたいに似ている人も思い浮かばないのに。
転生して初めて会った人だからかな。魔法契約してるから信頼しているのかも。
考え込んでいると、ワイアットの指が耳たぶに触れて身体がびくっとした。
「な、何か」
「失礼。耳飾りがずれていましたので」
「あっ、ありがとう」
びっくりした。急に触ってくるなんて思わなかった。それに飾りになんて触れてなかった気がするけど。
「神子さま、弟に退屈したらぜひ私をご指名くださいね」
「え?」
「弟は昔から堅物で気の利かない男ですから、物足りない時は私がお慰めしましょう。もちろん弟と一緒でも構いませんよ。私たちは仲の良い兄弟ですから」
なんだろう、ワイアット兄さんは優しいのになんとなく怖いし苦手だ。アルバートの方が無愛想なのに怖くない。
「あの、まだ目が覚めてから二日だし、何もわかっていないので」
「そうですね。神子さまがはやく今の暮らしに慣れるように私も尽力いたします」
パーティー会場までの短い距離がすごく長く感じる。やっぱりヨルグか司祭さまに案内してもらえば良かった。
朝、上の階から眺めた会場は神官たちが掃除をしているだけだったのに、今は昨日みたいにテーブルや椅子がきっちり並べられていた。お客さんもたくさんいて、神官たちはみんなとても忙しそうにしてる。声がとぎれとぎれにしか聞こえてこないけど、俺のことが話題にのぼっているのは分かる。
「一度庭に出ましょうか。ここから会場に入ると囲まれて身動きが取れなくなりますから」
「はい」
「神子さまは素直で可愛らしい」
ワイアット兄さんがいちいち褒めてくるのも気まずい。そろそろ手を離して欲しいんだけど、最初より強く握られてる気がする。
庭は朝散歩した場所とは違っていて、剪定された生垣が背の高さまで並んだ立体迷路みたいになっていた。こういう迷路、体験してみたかったんだよな。
小道を少し歩くと、その先に少し開けた場所がある。風に乗って誰かの話し声も聞こえてきた。
「大神殿の庭園は特別ね。こんなに素敵なお庭は見たことがないわ。お花の種類も豊富で、とても綺麗」
女の人の声だ。
神殿には女の人がいないから、お客さんの一人かな。
「私の夢を叶えてくれてありがとう。このドレスも。こんなに上等なドレスは一生着られないと思っていたわ。私、浮いていない?」
「俺は特に……何もしていない。別に浮いていないし、似合ってる」
思わず足が止まった。
この声、アルバートだ。
「不思議ね。アルの結婚式に呼ばれるなんて想像もしていなかったわ」
不意に胸が苦しくなった。
アルの結婚式……この言葉を聞いただけなのに、なぜか分からないけどすごく胸が痛い。
「神子さま、どうなさいました?」
そのまま立ち去ってしまいたかったのに、ワイアット兄さんは俺の手を握ったまま二人に近づいて行った。
「アル、神子さまを放ってルーリーと二人で会っているとは、伴侶失格なんじゃないか?」
驚いたアルバートと、その隣にいた女性、ルーリーさんが同時に振り返る。
ルーリーさんは長い髪を花で飾り、シンプルな水色のドレスを身に纏った大人っぽい女性だった。優しそうで綺麗で、アルバートの隣に立つと、とてもお似合いだと思った。
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