転生したら神子さまと呼ばれています

カム

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ep.2求婚者たち

8 危険な客

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 昼からの式典は結婚式の披露宴みたいな雰囲気だった。前世では恋人もいなかったし、病弱だったから実際の結婚式や披露宴を体験したことはない。だから細かいところは違うかもしれないけど。

 目の前には料理や花が並べられたテーブル。右隣にはアルバートが座っていて、少し離れた壁際の席に大司教のおじいちゃんと司祭さまや神官が並んでる。反対側には王様と王妃様、それに王子様やお姫様が続く。名前はなんだったかな。昨日一度聞いただけだから覚えてない。

 式典の初めに神官たちの祈りの呪文と王様のお言葉があって、それが終わると食事会が始まった。今日は何も話さなくて良さそう。話すとボロが出そうだから助かる。

 宴会が始まるとエリンとシリンが俺のそばにやって来て、シリンは飲み物を注いだり料理を取り分けたりしてくれた。
 エリンは分厚い巻物を持って立っていて、次々と食事中に挨拶にやって来る偉い人が、どこのなんて言う人で、貢物は何かを教えてくれる。
 その度に扇で顔を隠しつつお礼を言うことになるから食事どころじゃない。お客さんにも拝まれたり泣かれたり、じっと見つめられたり跪かれたりして大変だ。顔を隠すのは面倒だと思っていたけど、まじまじと顔を見てくる人が多くて、そのうえ大袈裟なくらい褒められるから扇を持って顔を隠すのは正解のような気がしてきた。

 お酒を勧めてきたり、触ってこようとした人は、隣にいたエリンとアルバートが牽制して追い払ってくれて、それでも無理を言って居座ったり暴れたりする人は控えていた聖騎士の隊員がどこかに連れて行く。感激して気絶した人も運ばれていく。
 何人も挨拶してるのに、いつまでも行列ができていて終わりが見えない。テレビで見たアイドルの握手会に似てる。俺が転生した神子さまは無駄に顔がいいからこの世界のアイドルなのかもな。

 宴会の途中で歌と踊りが始まった。
 その間は挨拶は中断だ。待っている人たちも拍手喝采で楽師たちを迎える。
 綺麗な男の人や女の人が楽器や花を持って会場に入ってくる。楽器は太鼓や笛や弦楽器があるけど、前世で知っている楽器とはどことなく違っている。素材や色が違うのかな。
 踊り子たちも男女混合で、綺麗な顔の人ばかり。初めて見る踊りだった。

「あれ、この曲……」

 楽器も踊りも初めてなのに、音楽には聞き覚えがあるような気がした。俺が知っている曲はこんなに華やかじゃなくて、もっと素朴で単調な曲だった気がするけど。

 でも、確かに覚えてる。
 秘密の隠れ家にしていた場所で、孤児たちがよく歌っていた。俺も、アルと……。

「かなめ様?」

 食事の手が止まっていたのをシリンに気づかれて、慌てて食器を置く。

「なんでもない。この曲は?」
「大神殿に昔から伝わる音楽ですよ。楽譜が残っていたので、何世代か前の楽師が復活させたらしいです」
「そう」

 懐かしさを感じたのは気のせいだろうか。今何か思い出せそうな気がしたのに。

「かなめ様、どなたかお気に入りがいたら神殿に呼ぶことも可能ですよ」
「え⁉︎」

 シリンがこっそり耳打ちするので懐かしさが吹き飛んでしまった。曲ばっかりに気を取られて踊り子は全然見てなかったけど、そういえばみんな踊る途中でチラチラとこっちを見てる。

「個人は呼ばなくていいけど、歌と踊りはまた見たいな」
「わかりました。そのように伝えますね」

***

「次の方はサデの国の……おい、どうして隣国の者をリストに入れているんだ」

 エリンが声を荒らげたので驚いてそっちを見る。

「どうしたの?」
「どうしたんですか?」

 俺とアルバートが同時にエリンに声をかける。

「いえ、リストに隣国の者が載っていたので」
「駄目なの?」
「かなめ様、大神殿はその国の者しか入れません。他国の者が入るには王族か神子、大司教の許可が必要です」

 アルバートが人前に出る時用の丁寧な口調で答えてくれる。

「誰かが許可したんじゃないの?」
「そんなはずは……エリン、レイ隊長を呼んでください」
「わかりました」

 どうして他国の人は入れないんだろう。不思議に思いながらエリンの後ろ姿を眺めていると、誰かの悲鳴が聞こえた。

 アルバートが素早く席を立って俺を後ろから羽交締めにする。そのまま抱き上げられてびっくりしたけど、表情は真剣そのものだった。

「アルバート⁉︎」
「静かに」

 聖騎士の第一部隊の人たちが一斉に出てきて俺の周りを取り囲んだ。悲鳴や人々の叫び声が続く。踊り子も楽師も客達も走ってその場を避け、空いた空間に一人の男の姿が見えた。

 みんなが遠巻きにしているのは、背の高い男の人だった。かなり歳をとっているような気がする。身なりは悪くないし古びたマントは聖騎士の物に似てるけどデザインが違う。
強そうな男だったけど、目には光が無く、顔色は悪く、なによりその人の身体にはぐるぐると何重にも太い鉄の鎖が巻き付いていた。

「神子さま……私はサデの国境を守る兵士……どうかサデに来て、サデの国をお救いください……」

 暗い声で男が囁く。こっちに歩いてこようとするけど、足を引きずっている。無理もない。足にも手にも首にも重そうな鎖が巻き付いている。

「呪術じゃ! そやつを神子さまに近づけるな!」

 大司教のおじいちゃんが叫ぶ。レイ隊長達が男に剣を向けて取り囲むけど、男の足取りが止まることはない。

「神子さま……これは私からの、貢物です……」
「アルバート! かなめ様を外へ!」

 ボロボロの男が懐から取り出したのは、針金のような物で巻かれた物だった。ボールのように見えるけど違う。もしかして、鳥?
 それを認識した瞬間、鳥だと思っていた物は爆発した。


 
 

 



 
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