転生したら神子さまと呼ばれています

カム

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ep.3神子さまの仕事

5 幼なじみのアル

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「あんな事言って良かったのかな」

 夜に行われる祭事用の衣装に着替えるため、俺は部屋に戻って来ていた。身支度をエリンに整えてもらいながらさっきあった事を反省する。

「かなめ様、何かご心配なことでも?」
「ヨルグを明日の護衛にってアラン隊長に言われたのに断ったんだ」

 エリンは俺の髪をまとめては金色の飾りを付けていく。毎回思うけど、この装飾品も高そうだな。

「ヨルグ殿は甘やかされて育てられた貴族のお坊ちゃんです。実践経験も少ない。護衛についても役には立たないでしょう」

 エリン、けっこう厳しいな。
 俺の表情に気づいたエリンが慌てて訂正する。

「申し訳ありません。かなめ様の第二位の婚約者候補の方に対して言い過ぎました」
「いいよ。聞かなかったことにする。エリンは聖騎士が苦手なの? アルバートにもなんとなくよそよそしい気がするけど」
「そういうわけでは……。しかしヨルグ殿は頼りないわりに、神殿や神子さまを自分の権力のために利用したいという気持ちが見え見えです。アルバート殿のヘニング家も同じ。それにアルバート殿はかなめ様の素晴らしさをあまり分かっていらっしゃいません。かなめ様が八百年の眠りから目覚められた時も、涙一つ見せなかった。奇跡を目の当たりにしたのに信じられません。他にもグリフォンをかなめ様のお部屋に勝手に入れたりとやりたい放題です」
「ゼフィーは可愛がってるから仕方ないよ」

 そう言いながら、エリンの言うことが真実すぎて心にグサグサと突き刺さった。

「かなめ様、権力が一箇所に集中しすぎるのはよくありません。誰かに特別に心を許すのは慎重に、よく考えてからなさっては?」
「アルバートを好きになるなってこと?」
「形ばかりの結婚にとらわれる必要はないということです。結婚とは名ばかりで実質は神子さまの護衛。護衛なら複数おいて好きなように使えばいいのです。この国の者はみな、かなめ様のしもべなのですから」

 エリンはにっこりと微笑み、俺の耳たぶに触れる。そのまま指でなぞられてくすぐったい。金色のアクセサリーを耳に付けるだけだと思ってたから予想外の行動に動揺する。

「かなめ様、私やシリンは幼少の頃よりずっとかなめ様をお世話してまいりました。けっしてかなめ様を裏切りません」

「あ、ありがとう……」

 耳元で囁かれて顔が熱くなる。なんだか変な気持ちだ。それから耳にひやりとした冷たさが伝わって金色のアクセサリーが付けられた。

「かなめ様の支度は終わりましたか?」

 戸口にアルバートが立っているのに気づかなかった。声をかけられて飛び上がりそうになる。エリンはいたって冷静で、焦っているのはなぜか俺だけ。

「もう少しで終わります」

 エリンに鳥の羽根の扇を手渡されて身支度は終了した。アルバートが手を差し出したので、なんとなく握る。

「アルバート殿、しっかりとかなめ様を護衛してくださいね」

 エリンの言葉を聞きながし、アルバートはそのまま俺の手を引いて扉の外に出た。アルバートも祭事用の豪華な衣装だ。相変わらず歩くのが速くてついていくのが精一杯だ。何か怒ってるのかな。

「アルバート、さっきの話だけど」
「あの神官が言っていることは一理あるな。態度は気に入らないが」
「えっ?」
「神子に群がってくるのは野心のあるやつばかりだ。俺の実家もそうだけどな。だから誰を信頼するかは慎重に考えた方がいい。だが神官みたいな崇拝者も一歩間違えると危険だ。お前も苦労するな」
「アルバートは?」

 アルバートはそこでようやく歩く速度を落としてくれた。俺の息が上がっていることに気づいたんだと思う。まだ全然体力が戻ってない。

「俺はそういう苦労は覚悟の上で結婚を承諾した。でもお前は寝てただろ?」
「うん。寝てた。でも、俺は結婚相手がアルバートで良かったと思ってるよ。アルには迷惑かもしれないけど。それとも結婚相手が複数の方がいいの?」

 勇気を振り絞って言う。でもアルバートはちらっと俺の顔を見てから、黙々と歩き続けただけだった。

 大神殿の前にある庭園は、木々にたくさんの灯りが吊されて幻想的な雰囲気に変わっていた。テーブルに料理が並べられ王族や貴族たちが集まって宴会がはじまろうとしている。昨日爆発があったなんて嘘みたいだ。庭園に続く神殿の入り口にはジャック隊長とアラン隊長、それに聖騎士が整列してした。
 どこかに遊びに行っていたおもちが戻って来て俺の服のポケットに入り込む。美しい庭園の光景と聖騎士たちに見惚れていた俺に、アルバートが言った。

「やはり複数の結婚相手は無しだな」
「え?」
「どうしてもと言うなら俺が死んでから考えてくれ。神子に言える立場じゃないが、幼なじみのアルが言うならいいだろ」
「アル?」

 幼なじみのアル。その言葉を聞くと胸がきゅっと締め付けられた。
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