転生したら神子さまと呼ばれています

カム

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ep.4 呪術師

5 新しい魔法

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 鳥籠の中、何もすることがなくてうとうとしているうちに過去の夢を見た。

***

 神子さま候補だと言われて村を出て、隣町の神殿に送られたのが半年ほど前だ。ここは神殿といってもどこか要塞みたいで、俺の住む部屋は高い塔の上にあった。国中から神子の候補生が送られて来ていたのに、俺の登場でほぼ全員が故郷に返されることになったらしい。

 神子になるには国一番の強い魔力とそれを使いこなす力が必要だから、結界を貼ったり呪文を唱えたり、毎日が厳しい修行の連続だった。
 俺はアルのもとに帰りたかったから、はやく俺より強い魔力を持つ神子さま候補が現れないかと期待していたのに、結局それから誰も現れなかった。
 結界も呪文も俺ほど簡単に作り出せる人がいないと聞いて愕然としたことを覚えてる。

 毎日結界を強化する練習をして、武器や防具や魔道具に祝福を授け、へとへとになるまで魔力を使っては、一人で住む部屋に戻る。 部屋は狭くて厳重に鍵がかけられていて、一人では外に出られない。魔法の呪文は突破できても、物理的な鍵はお手上げだった。
 窓には格子があり、そこから遠くの空を眺めて絶望的な気分になる。もしかしたら、死ぬまでここで生きていかないといけないのかも。親しい人にも会えず、恋もできなくて友達もいなくて、神官たちは怖くて厳しい人ばかりだ。
 たまに神殿を出ることを許されても、国王や貴族に回復魔法をかけるためだけで、自由に行動できることはなかった。

「アルに会いたいな……」

 アルには何通も手紙を書いたけど、返事は来なかった。忙しいのかな。それとも俺のことはもう忘れてしまったのかも。

 その日の夜も俺は格子のある窓から夜空を眺めていた。
 比較的怖くない神官に楽器を差し入れてもらったから、笛を吹いて寂しさを紛らわせる。今度、竪琴を要望してみよう。片手に収まるくらいの楽器なら許してもらえるかも。

 演奏していると部屋の外からトントンと音がした。最初は神官から怒られたのだと思って慌てて演奏をやめる。でもよく聞くと音は窓の方から聞こえた。窓の外に足場なんてないのに。

「カナ」

 聞こえてきた声に耳を疑う。アルの声だ。

「アル?」

 椅子を引っ張ってきて窓の外を覗くと、懐かしい幼なじみの顔が見えた。小さい窓だから顔しか見えない。

「アル! どうしてここに?」
「しーっ。黙って侵入したんだ。バレるとまずい」
「でも、ここは高いし、外は何もないよ! どうやって……」
「屋根を伝って来た。命綱はつけてるから安心しろ」
「でも……」

 神殿は一般の人間は入れない。侵入者には重い罰がある。アルが見つかるんじゃないかと気が気じゃなかった。

「それよりお前、こんな狭いところに閉じ込められてるのか? 何が国で一番大切にされてる神子だよ。牢獄と同じじゃんか。もっと文句言えよ」
「無理だよ。神官たち誰も俺の言葉なんて聞いてくれない……」

 神官たちは俺の魔力が必要なだけで、俺という個人のことなんて誰も考えていないような気がした。

「力の強い神子さまなんだろ? もっと力をつけて偉い奴と戦え。自分の身を守るんだ。分かったな」
「アルこそ、見つからないうちに早く逃げて」
「俺は頑丈だから大丈夫」

 アルが格子の向こうから手を伸ばした。窓には魔法の結界も張られている。アルの手を握りたくて、俺はその薄い膜を破ってしまった。すごく後悔することになるとも知らずに。

 手を握ると、アルはにっこり笑った。回復の魔法をかけようとしたその時、俺の部屋の扉が開いて、恐ろしい顔をした神官たちが入って来た。

***

「ごめんなさい……アルを許して。お願いします」

 罰として、アルは俺の部屋の窓から見える塔の先端から吊るされる事になった。神官たちに暴力を振るわれぐったりしたアルは、縛られたまま数日、飲まず食わずのまま吊るされていた。俺がどれだけ謝っても神官たちは許してくれず、遠くからでは回復魔法を送ることもできない。死ぬまで放置するつもりなのは明らかだった。

 何度も泣きながら謝って神官たちの言うことに従い、たくさんの契約を交わしたのに、アルの待遇は少しも変わらず、絶望したその日の夜、俺は悟った。

 もっと強い力が必要だ。
 この程度では大切な一人すら守れない。神官たちの言いなりではダメなんだ。

 俺は床に涙と血の混ざる魔法陣を描き、一晩で新たな回復魔法を作り上げた。誰も知らない新しい魔法だ。この魔法なら遠距離のアルに届く。
 もしも届かなければ俺も一緒に死のう。国なんてどうだっていい。アルが一番大切だから。




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