盗賊とペット(レヴィン編)

カム

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悪魔との契約

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『アニキが……』

 かろうじてそれだけ言うと、骨占いの爺さんは少ない歯を見せて笑った。

「いつかは来ると思っていたが、思ったより遅かったのう」

『アニキの事を知っていたのですか?』

 問い詰めると、爺さんはくるりと踵を返し

「着いてこい。お前の欲しがっている情報をやろう」

と言った。


 半信半疑で爺さんの後について歩いていくと、爺さんは迷路のような路地裏を進み、一軒の家に入っていった。
 その家は表札も飾りも何もなく、周りの家も似たような家ばかりで、一度出てしまうと見分けがつかなくなりそうだ。

 家の中は思いの他まともだった。
 重厚な家具が並べられた居間は、空気は重苦しいけど、きれいに片付いている。
 ただ、天井から吊された鳥かごには鳥は一羽もいなくて、何かの動物の頭の骨が入っていたけど。

「突っ立ってないで座れ。見下ろされるのは好かん」

 骨占いの爺さんは、トレーにカップを乗せて持ってきた。意外とおもてなしの心を持っている爺さんだ。
 カップには緑色の液体が入っていた。緑茶?青汁……かな。その二つならまだ飲めるけど、それ以外の何かだったら怖いからやめておこう。

『アニキの名前が……図書館の処刑者リストに載ってました』

 小さく呟くと、爺さんは向かいのソファーに埋もれるように座り、懐から小さな骨を出して磨き始めた。

「お前さん、この国の処刑がどう行われているか知っているか?」

『え?』

 処刑方法?
 そういえば、半年この世界にいたけど、一度も耳にした事がない。
 犯罪者が捕まったとか、投獄されたっていう話は聞くけど、正直牢獄がどこにあるかも分からない。

「なんじゃ知らんのか。一般人なら無理もないかもしれんな。この国ではな、処刑は島送りなんじゃ」

『島送り!?』

 江戸時代か。
 いや、江戸時代の島送りは死罪じゃなかったような気がする。

「そうじゃ。その島には凶暴な動植物が生きていてのう、一度送られたら二度と帰れんのじゃ」

 ……怖い話だ。処刑なんだから仕方ないのか?

『じゃあアニキは……』

「あいつも馬鹿な男じゃ。ワシがせっかくグリモフの命を狙える瞬間を占ってやったのに、みすみす無駄にしおって」

 このジジイ……。
 のんきにグリモフのパーティーで荒稼ぎしてなかったか? アニキの気持ちも知らずに、どの口がそんな事言うんだ。

「しかしあやつは悪魔と契約しておるからの。島に送られたくらいでは死ねまいよ」

 カッカッカ、と笑う爺さんの方が悪魔に見える。

『アニキはまだ生きているのですか?』

「グリモフを殺すまでは不死身じゃよ。一生島からは出られんが」

 アニキが生きてる……。
 その言葉だけが、頭の中でくり返された。

 爺さんが、磨いていた骨をテーブルに転がす。

「一人の盗賊の為に全てを捨てる覚悟があるなら、お前さんに悪魔を紹介してやろう。その覚悟が無いなら、レヴィンの事は忘れてうちに帰る事だな」
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