盗賊とペット(レヴィン編)

カム

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旅行編 お墓参り〜赤砂の街

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『違います。私は店員ではありません。だからそんなサービスしません』

 セクシーなお兄さんがされている行為が同意なのか無理矢理なのか分からないけど、同意の上の過剰なサービスなんだと信じてそう言ってみる。
 そのまま後退してトイレから逃げなければ。こいつらにどうにかされるのも嫌だけど、それ以上にこの現場をアニキに知られたらと思うとゾッとした。
 アニキは独占欲の塊だし、俺が襲われてたらこいつら皆殺しにするかもしれない。そうしたら捕まってまた島送りにされるかも。それだけは避けたい。

「おい待てよ、かたいこと言わずに俺たちと楽しもうぜ。気持ちよくさせてやるよ」

 酔っ払いの一人に腕を掴まれて、焦って解こうとするのに、力が強くて無理だ。こいつら兵士か傭兵なのか? 体格差のせいで簡単にトイレの奥に引きずり込まれた。

『待ってください! 私を襲うと大変な事になります。独占欲の強い恋人がいて……!』
「だったらそいつも後で混ぜてやるよ」

 酔っ払いの男たちはゲラゲラ笑い、一人が俺を羽交い締めにした。デジャブか。昔もこんなことがあったような……。

『やめて下さい、今ならまだ間に合います!』

 男の一人が俺の着ていたシャツを捲りあげる。そして首をかしげた。

「ああ? なんだこりゃ? お前、やけに複雑な模様いれてんな」

 そう言って俺の身体にある契約印を撫でた。

『うう……あっ』

 なんだこれ。すごく気持ち悪い。
 アニキじゃない指が入れ墨の模様や身体を這い回る感覚が気持ち悪くて耐えられない。悪魔の契約のせいなのか? それともアニキが好きだから?

『や、やめてくださ……』
「おい、誰からにする? 手っ取り早く全員で……」

 気持ち悪さに顔を背けていると、酔っ払いが俺の髪を掴む。顔を近づけられても逃げられない。酒臭くて最悪だ。泣きそう。こんな奴にキスでもされたらアニキに殺される。

「そいつから離れろ」

 ぎゅっと目を閉じていると、アニキの低くて機嫌の悪い声がトイレに響いた。

 アニキ……来てくれたんだと目を開けた瞬間、俺に顔を近づけていた男が消えた。
 えっと思った時には男はトイレの壁に頭を打ち付けて血を流していた。蹴ったのか? それとも何か投げた? 全然見えなかった。酔っ払い男、全然動かないけどまさか死んだんじゃないよな……?

「テメェ、何しやがる!」

 残りの酔っ払い三人が怒ってアニキを囲む。アニキがトイレの入り口にあった巨大サボテンを、酔っ払いに向かって振り下ろすのが視界にはいった。
 怖くて見ていられない。放りだされた俺は、巻き込まれないようにトイレの奥でぐったりしているセクシー衣装のお兄さんの元に駆け寄った。
 背後から怖い音が響く。ドカッとかバキッとか。聞こえる怒声と悲鳴は全て酔っ払い達のものだ。

『大丈夫ですか?』
「か、回復魔法を……」
『すみません。持っていなくて。これをどうぞ』

 ポケットに持っていた薬を少しだけ渡すと、お兄さんは微笑んで気を失った。心配だけど大きな怪我はなさそうだ。着ていた上着をお兄さんにかけてトイレから出る。アニキが捕まらないようにすぐにこの街から出よう。

 手洗い場には四人の酔っ払いが伸びていた。アニキは手にサボテンの残骸らしきものを持っていたけど、俺を見て残骸を壁に放り投げた。酔っ払い達の身体にサボテンのトゲが刺さってる。大丈夫かな、死んでないよな。

「ミサキ」
『アニキ、早く逃げましょう!』

 しがみつこうとしたらアニキに喉を掴まれて壁に押し付けられた。

『あ、アニキ……』

 アニキの手は血まみれだ。酔っ払いの血なのか、サボテンのトゲのせいなのか分からない。目がすわってる。

「……身体を他人に触らせるな」
『すみません……』

 アニキの片方の手が、俺のむき出しの契約印に触れて、身体が熱くなった。
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