59 / 68
旅行編 お墓参り〜赤砂の街
31
しおりを挟む
『そんな事言って、この先愛する人が出来たらどうするんですか?』
しつこく聞いてみると、アニキはその場に刺してあった串焼きの肉を俺に手渡した。
「食うか?」
『いただきます。これ、何の肉ですか?』
「それは俺が飼っていたペットのトカゲの肉だ」
頬張ろうとしてやめた。びっくりしてアニキの顔を見る。
「盗賊の頭が、俺のいない隙に殺して丸焼きにしやがった」
アニキは自嘲気味に笑う。
「頭は、俺の事を愛してるらしいぜ。あまりしつこく迫ってくるから刺してやったら、報復に俺のペットを殺しやがった。こいつを俺に食えってな」
『……ごめんなさい。埋めてあげますか……』
食べられなくなって串を眺めると、アニキはそれを取り上げた。
「いや、お前が食わないなら俺が食う。食って血肉にする」
『でも』
「子供や他人を犠牲にして、自分だけが助かりたいと思うのが愛ってやつか? 愛する人間のペットを殺してそいつに食わせるのは? そしてそれを食って血肉にすることが愛だと思うか? 俺の世界には愛なんてものは存在しない。この先も」
吐き捨てるように言うレヴィンに、胸が痛んだ。
『でも……レヴィンはずっと母親のイヤリングをしてます。それに、優しいところもたくさんあります。俺のことだって、助けようとしてくれました』
半分は自分に言い聞かせている気がした。少しくらい愛されてると実感したい。手を伸ばすと、逆に腕を掴まれた。レヴィンの目が炎に照らされてギラリと光る。
「いつか殺すかもしれないが、俺専属の奴隷になるか?」
『奴隷じゃ嫌です。レヴィンの事が好きです。一緒に幸せになりたいのに……少しでいいから俺のこと好きだって言ってください』
「変わったガキだな。そうだな、お前の事はーー」
アニキはそこで言葉に詰まり、少しだけ不思議そうな顔をした。
『どうしたんですか?』
「いや」
レヴィンは急に俺の腕を離し、視線を落とした。
『レヴィン?』
「もういい。向こうへ行け」
人を拒絶するような姿が悲しくて、その場から離れられずにずっとアニキの隣に座っていた。
***
意識が戻った時、アニキの腕の中にいた。
目の前にあるのは見慣れた悪魔の刺青だ。その契約の模様は見慣れすぎていて、どの場所にどんな模様が存在するのかほとんど理解している。アニキは嫌いだと思うけど、俺はアニキの肩にある鳥のような形の模様も、胸にある傷痕も、クロによく似た獅子の顔も好きだった。
腕が自由になっていたので指先で刺青にそっと触れる。腕の中から顔を見上げると、アニキはまだ眠ってた。
夢の中のレヴィンよりずっと大人だ。髪が少しだけ伸びてるけど、日に焼けた肌や目を閉じていても機嫌の悪そうな所は同じ。この角度からアニキの顔を見上げられる人間はそんなにいないんじゃないかと思う。
喉元にすり寄ると、乾いた砂と汗とこの地方特有の香辛料や香料を混ぜたような匂いがしてくんくん鼻をならした。毎日嗅いでたアニキの匂いだ。ドキドキするし安心もする大好きな匂い。
刺青にキスをして、眠ってるアニキに寄り添う。
あのペットの肉は食べたんだろうか。そしてアニキの血肉として身体の中にわずかでも存在してるのかな。
それはきっと愛情だと思う。アニキは愛し方が下手なだけで……きっと俺への愛情だって存在してる。こうして抱きしめてくれているし。
(アニキはミサキの事好き。言えないだけ)
スグリさんもそんな事言ってたから、そう思いたい。
そしてふと、夢の中で言葉に詰まっていたレヴィンを思い出す。
あの時何を言おうとしたんだろう。
もしかして、言えないだけっていうのは、アニキがシャイだからとか人間不信だからとかじゃなく、本当に言えないのだろうか。
(死ぬ前になったら言ってやるよ)
アニキがいつか言ってた言葉だ。
もしかしたら本当に、死ぬ前にしか言えないのかもしれない。分からないけど。
まあ、どっちでもいいか。
『レヴィン……大好きです』
そう言って再び腕の中で眠ることにした。
しつこく聞いてみると、アニキはその場に刺してあった串焼きの肉を俺に手渡した。
「食うか?」
『いただきます。これ、何の肉ですか?』
「それは俺が飼っていたペットのトカゲの肉だ」
頬張ろうとしてやめた。びっくりしてアニキの顔を見る。
「盗賊の頭が、俺のいない隙に殺して丸焼きにしやがった」
アニキは自嘲気味に笑う。
「頭は、俺の事を愛してるらしいぜ。あまりしつこく迫ってくるから刺してやったら、報復に俺のペットを殺しやがった。こいつを俺に食えってな」
『……ごめんなさい。埋めてあげますか……』
食べられなくなって串を眺めると、アニキはそれを取り上げた。
「いや、お前が食わないなら俺が食う。食って血肉にする」
『でも』
「子供や他人を犠牲にして、自分だけが助かりたいと思うのが愛ってやつか? 愛する人間のペットを殺してそいつに食わせるのは? そしてそれを食って血肉にすることが愛だと思うか? 俺の世界には愛なんてものは存在しない。この先も」
吐き捨てるように言うレヴィンに、胸が痛んだ。
『でも……レヴィンはずっと母親のイヤリングをしてます。それに、優しいところもたくさんあります。俺のことだって、助けようとしてくれました』
半分は自分に言い聞かせている気がした。少しくらい愛されてると実感したい。手を伸ばすと、逆に腕を掴まれた。レヴィンの目が炎に照らされてギラリと光る。
「いつか殺すかもしれないが、俺専属の奴隷になるか?」
『奴隷じゃ嫌です。レヴィンの事が好きです。一緒に幸せになりたいのに……少しでいいから俺のこと好きだって言ってください』
「変わったガキだな。そうだな、お前の事はーー」
アニキはそこで言葉に詰まり、少しだけ不思議そうな顔をした。
『どうしたんですか?』
「いや」
レヴィンは急に俺の腕を離し、視線を落とした。
『レヴィン?』
「もういい。向こうへ行け」
人を拒絶するような姿が悲しくて、その場から離れられずにずっとアニキの隣に座っていた。
***
意識が戻った時、アニキの腕の中にいた。
目の前にあるのは見慣れた悪魔の刺青だ。その契約の模様は見慣れすぎていて、どの場所にどんな模様が存在するのかほとんど理解している。アニキは嫌いだと思うけど、俺はアニキの肩にある鳥のような形の模様も、胸にある傷痕も、クロによく似た獅子の顔も好きだった。
腕が自由になっていたので指先で刺青にそっと触れる。腕の中から顔を見上げると、アニキはまだ眠ってた。
夢の中のレヴィンよりずっと大人だ。髪が少しだけ伸びてるけど、日に焼けた肌や目を閉じていても機嫌の悪そうな所は同じ。この角度からアニキの顔を見上げられる人間はそんなにいないんじゃないかと思う。
喉元にすり寄ると、乾いた砂と汗とこの地方特有の香辛料や香料を混ぜたような匂いがしてくんくん鼻をならした。毎日嗅いでたアニキの匂いだ。ドキドキするし安心もする大好きな匂い。
刺青にキスをして、眠ってるアニキに寄り添う。
あのペットの肉は食べたんだろうか。そしてアニキの血肉として身体の中にわずかでも存在してるのかな。
それはきっと愛情だと思う。アニキは愛し方が下手なだけで……きっと俺への愛情だって存在してる。こうして抱きしめてくれているし。
(アニキはミサキの事好き。言えないだけ)
スグリさんもそんな事言ってたから、そう思いたい。
そしてふと、夢の中で言葉に詰まっていたレヴィンを思い出す。
あの時何を言おうとしたんだろう。
もしかして、言えないだけっていうのは、アニキがシャイだからとか人間不信だからとかじゃなく、本当に言えないのだろうか。
(死ぬ前になったら言ってやるよ)
アニキがいつか言ってた言葉だ。
もしかしたら本当に、死ぬ前にしか言えないのかもしれない。分からないけど。
まあ、どっちでもいいか。
『レヴィン……大好きです』
そう言って再び腕の中で眠ることにした。
12
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる