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王族の付き人
5 お前には負けた
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「付き人っていうのはね、彼のように生徒の身の回りのお世話をするひとの事を言うのよ」
シエラはお茶とお菓子を運んできた男の人を指さした。男の人はペコリと頭を下げる。
「ほとんどの生徒は付き人を一人はつけているわ。いないのはヒースお兄様くらいよ。付き人がいなかったら食事の用意や着替えやベッドメイキング、洗濯すら自分でしなきゃならないの。そんな事してたらお勉強なんてできないわ」
ベッドメイキングって朝起きて布団を整えることだよな。そんなに難しかったかな。それともベッドを一から作るのか? シエラの手は白くて細くて重いものは何も持てそうにないから、木を切ったりするのは大変かも。
「それに、あなたにとってもいいお話だと思うわ。掃除をしているよりずっとお給料もいいし、その生徒に気に入られたら、学園を卒業しても護衛や従者としてお城や貴族の屋敷で働くこともできるのよ」
「やる!」
卒業しても一緒にいられるなんて付き人最高じゃないか。
「カル!」
「まあ、ありがとう!」
「俺、ヒースの付き人になる」
宣言すると、シエラとヒースはちょっとだけ固まった。
***
「もしかして、この物語のような……三角関係というものなのかしら……兄弟で一人の女性を奪い合い……なんてロマンチックなお話なの」
本をあちこち開いてはぶつぶつ言っているシエラをヒースと二人で眺める。
「シエラは少し……妄想が過ぎるんだ」
「よく分からないけど、ヒース、俺を付き人にしてくれる? 俺、洗濯だって得意だし、ベッドも作れると思うよ。材料は山から採ってくるし」
「採ってこなくていい。ベッドならあるから」
ヒースは何か悩んでるみたいだった。前に聞いた時にも断られたから、今回も断られるかな。
「カル、俺の付き人になるとエリオットから嫌がらせを受けると思う。本当にやりたいのか?」
「うん」
「正直に言うと、付き人は持ちたくない。俺は弱くて自分を守るので手一杯だから、周りの人間まで守れない。お金が稼ぎたいなら、学園じゃない新しい仕事を探してやるから、そっちに移ってもいい。
エリオットも俺も王族だから、望まなくても争いに巻き込まれることが多いし、くだらない争いにお前を巻き込みたくない」
「大丈夫だよ。俺、強いから。それにヒースの役に立つって決めたんだ」
「強そうに見えないけどな……」
それまで妄想の世界に浸っていたシエラが現実に戻ってきた。
「ヒースお兄様、私、ヒースお兄様の恋も応援いたしますわ。カルがヒースお兄様を選んだのなら、エリオットお兄様には諦めていただかなくちゃ。私がうまく伝えておきますわね」
「それはいい。シエラが話すと余計にこじれそうだ」
「まあ、残念だわ。カル、悩みがあったらいつでも私に相談してね。特に恋の悩みは大歓迎よ」
「分かった」
ヒースが盛大にため息をついた。
「カル、もう行こう」
「うん」
「監督官には伝えるから、自分の荷物を持って戻ってこい」
「荷物?」
「付き人は生徒の隣の部屋で生活することになってる」
「それって、もしかして」
「お前には負けた。仕方ないから付き人にしてやるよ」
「い、いやったあああーー!」
俺の叫び声は廊下中に響き渡った。
シエラはお茶とお菓子を運んできた男の人を指さした。男の人はペコリと頭を下げる。
「ほとんどの生徒は付き人を一人はつけているわ。いないのはヒースお兄様くらいよ。付き人がいなかったら食事の用意や着替えやベッドメイキング、洗濯すら自分でしなきゃならないの。そんな事してたらお勉強なんてできないわ」
ベッドメイキングって朝起きて布団を整えることだよな。そんなに難しかったかな。それともベッドを一から作るのか? シエラの手は白くて細くて重いものは何も持てそうにないから、木を切ったりするのは大変かも。
「それに、あなたにとってもいいお話だと思うわ。掃除をしているよりずっとお給料もいいし、その生徒に気に入られたら、学園を卒業しても護衛や従者としてお城や貴族の屋敷で働くこともできるのよ」
「やる!」
卒業しても一緒にいられるなんて付き人最高じゃないか。
「カル!」
「まあ、ありがとう!」
「俺、ヒースの付き人になる」
宣言すると、シエラとヒースはちょっとだけ固まった。
***
「もしかして、この物語のような……三角関係というものなのかしら……兄弟で一人の女性を奪い合い……なんてロマンチックなお話なの」
本をあちこち開いてはぶつぶつ言っているシエラをヒースと二人で眺める。
「シエラは少し……妄想が過ぎるんだ」
「よく分からないけど、ヒース、俺を付き人にしてくれる? 俺、洗濯だって得意だし、ベッドも作れると思うよ。材料は山から採ってくるし」
「採ってこなくていい。ベッドならあるから」
ヒースは何か悩んでるみたいだった。前に聞いた時にも断られたから、今回も断られるかな。
「カル、俺の付き人になるとエリオットから嫌がらせを受けると思う。本当にやりたいのか?」
「うん」
「正直に言うと、付き人は持ちたくない。俺は弱くて自分を守るので手一杯だから、周りの人間まで守れない。お金が稼ぎたいなら、学園じゃない新しい仕事を探してやるから、そっちに移ってもいい。
エリオットも俺も王族だから、望まなくても争いに巻き込まれることが多いし、くだらない争いにお前を巻き込みたくない」
「大丈夫だよ。俺、強いから。それにヒースの役に立つって決めたんだ」
「強そうに見えないけどな……」
それまで妄想の世界に浸っていたシエラが現実に戻ってきた。
「ヒースお兄様、私、ヒースお兄様の恋も応援いたしますわ。カルがヒースお兄様を選んだのなら、エリオットお兄様には諦めていただかなくちゃ。私がうまく伝えておきますわね」
「それはいい。シエラが話すと余計にこじれそうだ」
「まあ、残念だわ。カル、悩みがあったらいつでも私に相談してね。特に恋の悩みは大歓迎よ」
「分かった」
ヒースが盛大にため息をついた。
「カル、もう行こう」
「うん」
「監督官には伝えるから、自分の荷物を持って戻ってこい」
「荷物?」
「付き人は生徒の隣の部屋で生活することになってる」
「それって、もしかして」
「お前には負けた。仕方ないから付き人にしてやるよ」
「い、いやったあああーー!」
俺の叫び声は廊下中に響き渡った。
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