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三人の王子
11 出発
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荷物をまとめて廊下に出ると、ハロルドとヴィクターがいた。ヒースの部屋の前にいる兵士みたいな人と話してる。兵士は片付けが済むまで誰も王族の部屋の中の物を盗んだりしないか見回りをしているのだそうだ。たしかにイザベルあたりがやってきて荒らされても嫌だと思う。ハロルドとヴィクターは俺の荷物を見て分かってくれた。
「もう行くのか。はやいな」
「うん」
「どこに向かうんだ? 給料もらったから故郷に帰るのか?」
「違うよ。王都」
「来るなってヒースに言われたんだろ?」
「言われたけど、自由に好きなところに行っていいとも言ってたから」
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせて笑った。
「後片付けは俺たちに任せてはやく行け」
「うん。頼むよ。二人ともありがとう」
「お前とはまた会うことになりそうだ。ヒースをよろしくな」
「分かった」
手を振って二人と別れる。最後まで笑っていたハロルドとは対照的に、ヴィクターはちょっと困ったような心配そうな顔をしていた。二人にはすごくお世話になったな。結局二人がどんな関係なのか聞けなかったから、次に会えたら聞いてみよう。
宮殿みたいな生徒達の校舎を出て従業員棟に向かう。洗濯場ではおばちゃん達が午後の作業をしていた。みんな王族が王都に向かったことを知っていて、俺の顔を見ると心配そうに集まってきた。仕事を辞めることを告げて、ヒースにもらったお金の袋を一つ取り出す。
「ちょっとカル君、なんだいこれ」
「お世話になったからみんなで分けてよ」
「もらえないよ。あんたの給料なんじゃないのかい?」
「いいんだ。もらってよ。じゃあみんな元気でね!」
「ちょっと! カル! お別れなんて言わないでおくれ!」
「さようなら!」
「まぁ、こんなにあるじゃないか!」
「すごい大金だよ!」
おばちゃんたちにお金の袋を押しつけて逃げるように洗濯場を出る。みんな大騒ぎしてる声が聞こえてきたけど無視した。お金あげたら喧嘩にならないかな。でも配ってる暇もないし、みんなうまく分けてくれるだろう。
それからその辺りにいた人を捕まえてトムの場所を聞いた。トムは庭の掃き掃除をしていたからすぐに見つかった。
「トム!」
「カル、お前……大丈夫か? 王子様、王都に行ったんだろ?」
「そうなんだ。だから俺、ここの仕事辞めるよ」
「そっか」
トムは何か言いたそうにしていたけど、何も言わずに地面を見てる。俺がヒースの付き人になってから、あんまり話したことなかった。トムは俺と違って、身分とかそういうことを気にするタイプみたいだから。
「それでね、王都に行くことにしたんだ」
「それって」
「ヒースを追いかける」
「……大丈夫なのか? って言っても、お前は行くんだろうな。なんか、会った時からお前はなんか俺たちと違うって気がしてた」
「そうかな。でも俺はトムのこと友達だと思ってるよ。あとこれ、トムにやる」
「えっ、っていうか、これ何だよ?」
「ヒースにもらった給料」
「えええ⁉︎」
「大丈夫。まだあるから」
「マジか。えっ、本当にくれるのか?」
「トムの好きに使っていいよ。じゃ、俺もう行くから」
トムはしばらく呆然としていたけど、そのお金の袋をぎゅっと握りしめた。
「ありがとう。すごく助かる。本当にお金に困ってたんだ。カルのことは一生忘れないよ。いつか余裕ができたら返すから、これもらっていいか?」
「いいよ。俺、お金そんなに必要ないんだ。だからトムが使って」
「カル、本当にありがとう!」
「トム、元気でね」
手を振ってトムと別れた。おばちゃんたちとトムにあげたから給料は残りわずかになったけど、俺は竜だからお金はなくても平気だ。それからゲイルの飼育舎に向かう。王都まで一緒に着いてきてくれると嬉しいんだけど。
「もう行くのか。はやいな」
「うん」
「どこに向かうんだ? 給料もらったから故郷に帰るのか?」
「違うよ。王都」
「来るなってヒースに言われたんだろ?」
「言われたけど、自由に好きなところに行っていいとも言ってたから」
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせて笑った。
「後片付けは俺たちに任せてはやく行け」
「うん。頼むよ。二人ともありがとう」
「お前とはまた会うことになりそうだ。ヒースをよろしくな」
「分かった」
手を振って二人と別れる。最後まで笑っていたハロルドとは対照的に、ヴィクターはちょっと困ったような心配そうな顔をしていた。二人にはすごくお世話になったな。結局二人がどんな関係なのか聞けなかったから、次に会えたら聞いてみよう。
宮殿みたいな生徒達の校舎を出て従業員棟に向かう。洗濯場ではおばちゃん達が午後の作業をしていた。みんな王族が王都に向かったことを知っていて、俺の顔を見ると心配そうに集まってきた。仕事を辞めることを告げて、ヒースにもらったお金の袋を一つ取り出す。
「ちょっとカル君、なんだいこれ」
「お世話になったからみんなで分けてよ」
「もらえないよ。あんたの給料なんじゃないのかい?」
「いいんだ。もらってよ。じゃあみんな元気でね!」
「ちょっと! カル! お別れなんて言わないでおくれ!」
「さようなら!」
「まぁ、こんなにあるじゃないか!」
「すごい大金だよ!」
おばちゃんたちにお金の袋を押しつけて逃げるように洗濯場を出る。みんな大騒ぎしてる声が聞こえてきたけど無視した。お金あげたら喧嘩にならないかな。でも配ってる暇もないし、みんなうまく分けてくれるだろう。
それからその辺りにいた人を捕まえてトムの場所を聞いた。トムは庭の掃き掃除をしていたからすぐに見つかった。
「トム!」
「カル、お前……大丈夫か? 王子様、王都に行ったんだろ?」
「そうなんだ。だから俺、ここの仕事辞めるよ」
「そっか」
トムは何か言いたそうにしていたけど、何も言わずに地面を見てる。俺がヒースの付き人になってから、あんまり話したことなかった。トムは俺と違って、身分とかそういうことを気にするタイプみたいだから。
「それでね、王都に行くことにしたんだ」
「それって」
「ヒースを追いかける」
「……大丈夫なのか? って言っても、お前は行くんだろうな。なんか、会った時からお前はなんか俺たちと違うって気がしてた」
「そうかな。でも俺はトムのこと友達だと思ってるよ。あとこれ、トムにやる」
「えっ、っていうか、これ何だよ?」
「ヒースにもらった給料」
「えええ⁉︎」
「大丈夫。まだあるから」
「マジか。えっ、本当にくれるのか?」
「トムの好きに使っていいよ。じゃ、俺もう行くから」
トムはしばらく呆然としていたけど、そのお金の袋をぎゅっと握りしめた。
「ありがとう。すごく助かる。本当にお金に困ってたんだ。カルのことは一生忘れないよ。いつか余裕ができたら返すから、これもらっていいか?」
「いいよ。俺、お金そんなに必要ないんだ。だからトムが使って」
「カル、本当にありがとう!」
「トム、元気でね」
手を振ってトムと別れた。おばちゃんたちとトムにあげたから給料は残りわずかになったけど、俺は竜だからお金はなくても平気だ。それからゲイルの飼育舎に向かう。王都まで一緒に着いてきてくれると嬉しいんだけど。
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