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三人の王子
10 目指すは王都
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何も言えないうちに学園の先生がヒースを迎えに来た。ヒースは俺の頭を撫でて、そのまま部屋を出て行く。
廊下には教師が数人、それに監督官の人たち。生徒達は遠くから見守っている。窓から外を覗けば、学園の庭にはいつのまにか豪華な馬車が三台、それに学園では見たことのない大勢の護衛兵や従者達がすでに馬に乗って集まっていた。
馬車が三台あるのは、エリオットとシエラ姫もそれに乗って王都に向かうから。エリオットもシエラ姫も、この学園には戻って来ないのかな。エリオットは戻って来なくていいけど。
ヒースの後について一階まで行くと、相変わらず渋い外見をした護衛のジェイソンが待っていた。
「ヒース様、お迎えにあがりました」
「ああ。王都まで頼む」
ヒースは後ろにいた俺を見て微笑み、それから馬車に乗り込んだ。こんなに大勢の人がいたら、魔法をかけてさらって逃げるなんて無理だな。ヒースだってお父さんには会いたいだろうし。じゃあ馬車に飛び乗る? いやきっとヒースに怒られて降ろされる。
ジェイソンが教師や監督官に挨拶をし、生徒達が大勢見送る中、三台の馬車はそれぞれ学園を出発していった。
「ああ、ヒース様」
「王族の方々がいらっしゃらないと学園も寂しくなりますわね」
「国王が崩御されたら、この国はどうなるんだ」
「ケネス王太子が次期国王では?」
「そううまくまとまるはずがない。エリオット王子やヒース王子を次期国王に推す声もある。第一ケネス様は病弱だ」
みんな好き勝手な噂話をしている。ヒースがいない部屋に戻るのが悲しくて、その場に立ち尽くしているとイザベルに話しかけられた。
「あなた、捨てられたんですってね。いい気味だわ。掃除の従業員なんかが王子様の隣にいられるなんてそもそもおかしいのよ。これからまた這いつくばって床を磨くといいわ」
イザベルにかまっている時間はないから無視しようとしたら取り巻きに囲まれた。面倒くさいな。今機嫌が悪いから優しくできないんだけど。
「イザベル、その子はヒース王子のお気に入りだ。付き人はやめてもお気に入りにかわりない。あまり虐めない方がご自分のためだと思うけど」
「ハロルド様、どうして貴族のあなたまでそんな子を庇うの?」
「まあまあ、貴族の君が庶民のことを気にする必要はないだろ」
ハロルドとヴィクターが間に入ってくれた。二人の行為に甘えてその場から退散する。だけど部屋に向かう途中で従業員達の監督官に呼び止められた。
「カル君だね。ヒース王子から聞いたと思うが、王子は王都に戻られた。学園に戻って来られるか分からないから、付き人の君の契約も終了したと思うんだが……」
「聞いたよ」
「君は力持ちだと聞いている。もとは石運びなどの力仕事もやっていたとか。君がよければここに残ってくれないか? 給料なら前の倍は出そう」
俺は目を閉じて、ここに来てからのことを思い浮かべた。石運びも洗濯も、どんな仕事も楽しかったな。でも、楽しかったのはヒースのそばにいられたから。
「ごめん。俺ここの仕事やめるよ。みんなによろしく言っといて」
「そうか、残念だよ」
俺は急いで自分の部屋に向かった。ヒースが用意してくれた俺のための部屋。ヒースにもらった石板や本や服。思い出がいっぱいだ。石板や本はヒースの部屋の荷物と一緒にお城に持っていってもらおう。ヒースにもらった付き人の服と大事な枕カバー、それにジークさんの飴を鞄に詰めた。目指すは王都だ。
廊下には教師が数人、それに監督官の人たち。生徒達は遠くから見守っている。窓から外を覗けば、学園の庭にはいつのまにか豪華な馬車が三台、それに学園では見たことのない大勢の護衛兵や従者達がすでに馬に乗って集まっていた。
馬車が三台あるのは、エリオットとシエラ姫もそれに乗って王都に向かうから。エリオットもシエラ姫も、この学園には戻って来ないのかな。エリオットは戻って来なくていいけど。
ヒースの後について一階まで行くと、相変わらず渋い外見をした護衛のジェイソンが待っていた。
「ヒース様、お迎えにあがりました」
「ああ。王都まで頼む」
ヒースは後ろにいた俺を見て微笑み、それから馬車に乗り込んだ。こんなに大勢の人がいたら、魔法をかけてさらって逃げるなんて無理だな。ヒースだってお父さんには会いたいだろうし。じゃあ馬車に飛び乗る? いやきっとヒースに怒られて降ろされる。
ジェイソンが教師や監督官に挨拶をし、生徒達が大勢見送る中、三台の馬車はそれぞれ学園を出発していった。
「ああ、ヒース様」
「王族の方々がいらっしゃらないと学園も寂しくなりますわね」
「国王が崩御されたら、この国はどうなるんだ」
「ケネス王太子が次期国王では?」
「そううまくまとまるはずがない。エリオット王子やヒース王子を次期国王に推す声もある。第一ケネス様は病弱だ」
みんな好き勝手な噂話をしている。ヒースがいない部屋に戻るのが悲しくて、その場に立ち尽くしているとイザベルに話しかけられた。
「あなた、捨てられたんですってね。いい気味だわ。掃除の従業員なんかが王子様の隣にいられるなんてそもそもおかしいのよ。これからまた這いつくばって床を磨くといいわ」
イザベルにかまっている時間はないから無視しようとしたら取り巻きに囲まれた。面倒くさいな。今機嫌が悪いから優しくできないんだけど。
「イザベル、その子はヒース王子のお気に入りだ。付き人はやめてもお気に入りにかわりない。あまり虐めない方がご自分のためだと思うけど」
「ハロルド様、どうして貴族のあなたまでそんな子を庇うの?」
「まあまあ、貴族の君が庶民のことを気にする必要はないだろ」
ハロルドとヴィクターが間に入ってくれた。二人の行為に甘えてその場から退散する。だけど部屋に向かう途中で従業員達の監督官に呼び止められた。
「カル君だね。ヒース王子から聞いたと思うが、王子は王都に戻られた。学園に戻って来られるか分からないから、付き人の君の契約も終了したと思うんだが……」
「聞いたよ」
「君は力持ちだと聞いている。もとは石運びなどの力仕事もやっていたとか。君がよければここに残ってくれないか? 給料なら前の倍は出そう」
俺は目を閉じて、ここに来てからのことを思い浮かべた。石運びも洗濯も、どんな仕事も楽しかったな。でも、楽しかったのはヒースのそばにいられたから。
「ごめん。俺ここの仕事やめるよ。みんなによろしく言っといて」
「そうか、残念だよ」
俺は急いで自分の部屋に向かった。ヒースが用意してくれた俺のための部屋。ヒースにもらった石板や本や服。思い出がいっぱいだ。石板や本はヒースの部屋の荷物と一緒にお城に持っていってもらおう。ヒースにもらった付き人の服と大事な枕カバー、それにジークさんの飴を鞄に詰めた。目指すは王都だ。
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