ポメラニアン魔王

カム

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三 タケルの話

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どうやって息をすればいいのかと必死で考えているうちに唇が離れる。

「……ぶはっ」

ようやく息が出来て、呆然とした顔で男の人を見上げると、彼は満足そうに頷いた。

「やはり人の姿の方が吸収は速いな」

意味の分からない事を話してる。人の姿!?と言うことはやっぱりポメなのか?
いや、そんな事より一日のうちに二度もキスしてしまった。それも別の人と。
高校の時からずっと春樹さん一筋だったのに。あっさり浮気してしまった。そんな自分がショックだ。

「あ、あの……なんで急にキスとか。それにあなたはポメなんでしょうか?」

彼は俺の言葉には答えず起き上がると、両手を地面へと向ける。俺も条件反射で自分の寝ていた地面に視線を落とすと、周囲に光り輝く模様が浮き上がった。
これは……プロジェクションマッピングかな。
こんな田舎なのにどこにそんな装置が、と思っていたら、いきなりポメ疑惑の男の人に抱きしめられた。

「うわ……!何ですか!?」

そのまま荷物みたいに肩の上に担ぎ上げられる。すごい力だ。

「飛ぶぞ」
「え?」

え?え?ええっ!?

そして光る映像も、田舎の夜の暗い木々も、遠くで燃える炎もかき消え、次の瞬間には俺は空の上にいた。

「うわあああぁーーー」
「騒ぐな」

と、飛んでる!
飛ぶぞの意味がようやく分かった。グライダーもプロペラもないのに人間二人(犬?)だけで空を飛んでる。
しかも結構な高速飛行だ。足下の真っ暗な森と小さな集落の灯りが、すごい勢いで遠ざかっていく。
後ろ向きのジェットコースターで運ばれてる感じに似てる。レールも何もないけど。

図上にある大きな月に照らされて見えるのは、起伏に富んだ山々と、森と岩場だ。高い山を通り過ぎ、大きな沼と深い崖を通り過ぎ、男の人と俺は飛行した。

放物線を描くように高度を下げ、男の人が降り立ったのは、森のそばにある洞窟の入り口だった。
地に足が着いた途端にへたり込む。怖かった。

「ここはどこなんでしょうか……えっ!?」

男の人は俺を地面に下ろした瞬間、膝を着いた。そのままモヤモヤした何かに包まれる。

「大丈夫ですか!?」

力を使い果たしたのだろうか。
俺が手を伸ばした時には男の人は黒い子犬に戻っていた。

「ポメ……」

やっぱりさっきの男の人はポメだったんだ。
フラフラしているポメを抱いて頭を撫でてやると、ポメはふんっと鼻で息をした。人の姿なら緊張するけど、犬の姿なら平気だ。

「この場所なら少しは時間が稼げるだろう」

確かに。春樹さんのいた村からはかなり離れているような気がする。主要な道路もないし、あの村には車もなかったから、しばらく矢を持った村人や賢者さんに追いかけられることはなさそうだ。春樹さんと離れたのは寂しいけど。

「ポメは空も飛べるし、人間の姿にもなれるんだな。知らなかった」
「あれが本来の姿だ。魔力は勇者に奪われた。おかげでこのような獣の姿を取らざるを得ない」

ポメはそう言うと、腕から出てじっと俺の顔を見上げた。

「ひとつだけ確認しておく。タケル……貴様まさか、勇者の一味ではないだろうな」
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