ポメラニアン魔王

カム

文字の大きさ
57 / 62
三 タケルの話

37

しおりを挟む
 ケルピの背中に乗って上流に向かっているうちに、日が暮れかけて燃えるような夕焼け空になった。だんだん寒くなって来たころ、唐突に川上りは終了した。

「人間の気配がする。ここからは俺は気配を消すからちょっと下りてくれ」

 まだ川は続いていたけどケルピは水から丘に上がった。俺が背中から降りると馬の姿から小さな蛙の姿になる。何億年も前に海から地上に生活スタイルを変えた生物ってこんな感じだったのかな。ケルピはぴょんぴょん飛んで俺の足にしがみついたので、手のひらに乗せてやると肩の上に移動した。

「ケルピさんは水を乾かす魔法とか使えないんですか?」
「水は友達だ。濡れている方が楽しいだろ」
「寒いんですけど」
「贅沢言うなって。そのうち乾く」

 濡れたズボンは諦めてそのまま歩く。川の側にはたくさんの木々が生い茂っていたけど、そこを抜けると遠くに見える険しい山となだらかな斜面が見えた。この風景、なんとなく見覚えがあるような。

「ここからどのくらいの距離なんですか?」
「近いぞ。ここから丘の下に行けば人間達の村がある。丘の上にあるのが魔王城だ。今では崩れた石垣が残るだけだが」

 確かに、近くに石垣がある。
 壊れかけた石垣は迷路みたいになって斜面の上から下まで続いている。破壊の跡がたくさんあって、倒れた石像の欠片も散乱していた。
 間違いない。俺がはじめてこの世界にやってきた時に見た風景と同じだ。古戦場か遺跡みたいだと思ったけど、ここが魔王城の跡地だったのか。ということはこの壊れた石像は人間になった時のポメの姿をしていたのかな。そう思うとせつない。

「おい、戦いはどうだ⁉︎」

 人の声がしたので思わず生垣の陰に隠れた。なまはげみたいな格好の村人が数人、生垣の上へと走っていく。

「今度こそ大丈夫だ! 勇者様の圧勝さ。魔王達が消滅するのも時間の問題だ」

 俺とケルピは顔を見合わせた。

「やったな! 人間達の歴史的勝利だ!」

 歓声を上げながら丘の上へ走っていく村人たちを追いかけて、俺も走った。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。 ※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

処理中です...