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・島での生活
塩を作る(1)
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「あれ、塩がもうないや」
朝、セリムはカバンの中身を確認すると、調味料の塩をきらしてしまっていた。
強烈な視線に横を見やると、食事に貪欲なノエルが絶望的な表情でこちらを見ていた。
「だ、大丈夫。急いで作るから」
「セリー!」
朝の砂浜に少年ふたりとうさぎがしゃがんでいると、山の方からアダリヤが走ってきた。
「ああ、アダリヤ」
「リヤちゃん」
「洞穴にいないから探した! 砂浜で何してんの」
セリムは砂浜に両手のひらを当てているし、そのそばには鍋を抱えたノエルがしゃがんでいる。
うさぎも興味深げにセリムの手を覗き込んでいた。
「塩を作ってるんだ」
「しお?」
「肉が美味しくなるやつだよ」
「あのおいしい肉の!」
「セリムの塩は、そんじょそこらの塩とは違うんだぜ」
セリムも塩作りにはちょっとした自信があった。
今のところ、セリムのスキル『分解』が一番力を発揮するのが塩作りだからである。
「リヤも手伝う!」
右手を上げて、参戦する気満々のアダリヤを見て、セリムは苦笑した。
「いや、アダリヤはそのあたりで見ていて」
「……はーい」
アダリヤはしょぼんとしたが、なにせ、セリムのスキルで行う工程ばかりなので、横にいるノエルが手伝うこともないくらいなのだ。
アダリヤはうさぎの横にちょこんとしゃがみこんだ。
セリムは塩を作る作業を再開させた。
目を閉じて手に神経を集中させると、手が接触している部分にある物質の構成が頭の中に入ってきた。
これは、スキル『分解』のうちの『理解』を使用している。
やはり、砂浜の表面には、砂と塩分があるようだ。
次の段階は、塩の取り出しである。
その表面の砂の中で、塩分に当たるものだけを分けるイメージを頭の中に思い描いた。
頭に思い描くと、脳と手がつながっているような感覚が起こり、思い描いた通りの結果が得られるのである。
「ほら」
取り出し作業が完了したセリムはアダリヤに自分の手のひらを見せた。
手のひらには、無数の白い粒がくっついていた。
「おお、手に白いツブツブがついてる!これが塩?」
「そう。これとハーブを肉に擦り込んで焼くと、肉のくさみが取れて、美味しくなるんだよ」
「すごい!舐めてみていい?」
セリムは笑顔のままで固まった。
そんなセリムの困惑を察してか、ノエルが助け舟を出した。
「あー、まだだめだよ、リヤちゃん。まだまだいろんな工程があるんだ」
ノエルが場をつないでいる間も、セリムの脳は処理能力を超えてしまったのか、未だに手を差し出したまま、固まっていたのだった。
***
スキル『分解』。
それは、祖父と出会う8歳まで、忘れていた、いやむしろ、忘れようとしていたスキルである。
セリムが領地の別邸に初めて来た翌日、祖父と一緒に朝食をとっている時のことだ。
「セリム。分解とはどういうスキルなんだ」
「えっと……わかりません」
セリムは祖父に問われて思い出した。
剣聖ではなかったが、自分にもスキルがあることに。
「ふむ。わしもいろんな人間を見てきたが、『分解』などというスキルは初めて聞いた」
祖父のように沢山の本を読む人間でも、知らないということは、よっぽどの外れスキルかもしれない。セリムは内心がっかりした。
「……ああ、ちょうど分解するにはいいものがあるから、あとで私の部屋に来なさい」
「お祖父様。セリムです」
「入りなさい」
祖父の部屋は、華美ではないが、長く大事にしてきただろう家具――きれいに磨かれた飴色のデスクだったり、少しヘタリが見えるけど、艶のある革のソファが置かれていた。
デスクの奥には中ぶりで飾り気のない長剣に、沢山の本が積み上げられていた。
窓際に立っていた祖父は、セリムが入ってきたことに気づくと、ふたつの鎖がつながったような小物を手渡してきた。
「これは、知恵の輪という玩具で、このつながっている輪を外す道筋を楽しむものだ。そして、外すためにはこの玩具に対する理解が必要だ」
セリムは、上下左右に引っ張ってみたが、全く外れる気配がなかった。
「引っ張っただけでは外れないんですね」
「そうだ。工夫してそれを外してみなさい」
セリムは言われるままに、祖父から手渡された知恵の輪を外す方法を考えた。
手に持って2つの輪を観察していると、少しひねることで隙間を通すことができると解った。
そこからは、頭の中に外れた後の姿を思い浮かべて、上下左右に引っ張っていると、頭の中で中で手順が組み上がっていった。
その頭に浮かんだ手順通りにやれば、2つの輪はきれいに外れたのである。
「なるほど、この年齢で、知恵の輪をこの速さで解いてしまうということは、分解のスキルは理解力が上がるものなのだな」
祖父はひげを触りながら頷くと、ベルを鳴らした。
「私が思った通りなら、お前のスキルは剣聖なんかより、よっぽどすごいものだ」
その後、セリムのために大量の知恵の輪が用意された。
そして、最終的に、分解するための手順を頭に思い浮かべれば、知恵の輪をひっぱっただけで外せるようになってしまった。
朝、セリムはカバンの中身を確認すると、調味料の塩をきらしてしまっていた。
強烈な視線に横を見やると、食事に貪欲なノエルが絶望的な表情でこちらを見ていた。
「だ、大丈夫。急いで作るから」
「セリー!」
朝の砂浜に少年ふたりとうさぎがしゃがんでいると、山の方からアダリヤが走ってきた。
「ああ、アダリヤ」
「リヤちゃん」
「洞穴にいないから探した! 砂浜で何してんの」
セリムは砂浜に両手のひらを当てているし、そのそばには鍋を抱えたノエルがしゃがんでいる。
うさぎも興味深げにセリムの手を覗き込んでいた。
「塩を作ってるんだ」
「しお?」
「肉が美味しくなるやつだよ」
「あのおいしい肉の!」
「セリムの塩は、そんじょそこらの塩とは違うんだぜ」
セリムも塩作りにはちょっとした自信があった。
今のところ、セリムのスキル『分解』が一番力を発揮するのが塩作りだからである。
「リヤも手伝う!」
右手を上げて、参戦する気満々のアダリヤを見て、セリムは苦笑した。
「いや、アダリヤはそのあたりで見ていて」
「……はーい」
アダリヤはしょぼんとしたが、なにせ、セリムのスキルで行う工程ばかりなので、横にいるノエルが手伝うこともないくらいなのだ。
アダリヤはうさぎの横にちょこんとしゃがみこんだ。
セリムは塩を作る作業を再開させた。
目を閉じて手に神経を集中させると、手が接触している部分にある物質の構成が頭の中に入ってきた。
これは、スキル『分解』のうちの『理解』を使用している。
やはり、砂浜の表面には、砂と塩分があるようだ。
次の段階は、塩の取り出しである。
その表面の砂の中で、塩分に当たるものだけを分けるイメージを頭の中に思い描いた。
頭に思い描くと、脳と手がつながっているような感覚が起こり、思い描いた通りの結果が得られるのである。
「ほら」
取り出し作業が完了したセリムはアダリヤに自分の手のひらを見せた。
手のひらには、無数の白い粒がくっついていた。
「おお、手に白いツブツブがついてる!これが塩?」
「そう。これとハーブを肉に擦り込んで焼くと、肉のくさみが取れて、美味しくなるんだよ」
「すごい!舐めてみていい?」
セリムは笑顔のままで固まった。
そんなセリムの困惑を察してか、ノエルが助け舟を出した。
「あー、まだだめだよ、リヤちゃん。まだまだいろんな工程があるんだ」
ノエルが場をつないでいる間も、セリムの脳は処理能力を超えてしまったのか、未だに手を差し出したまま、固まっていたのだった。
***
スキル『分解』。
それは、祖父と出会う8歳まで、忘れていた、いやむしろ、忘れようとしていたスキルである。
セリムが領地の別邸に初めて来た翌日、祖父と一緒に朝食をとっている時のことだ。
「セリム。分解とはどういうスキルなんだ」
「えっと……わかりません」
セリムは祖父に問われて思い出した。
剣聖ではなかったが、自分にもスキルがあることに。
「ふむ。わしもいろんな人間を見てきたが、『分解』などというスキルは初めて聞いた」
祖父のように沢山の本を読む人間でも、知らないということは、よっぽどの外れスキルかもしれない。セリムは内心がっかりした。
「……ああ、ちょうど分解するにはいいものがあるから、あとで私の部屋に来なさい」
「お祖父様。セリムです」
「入りなさい」
祖父の部屋は、華美ではないが、長く大事にしてきただろう家具――きれいに磨かれた飴色のデスクだったり、少しヘタリが見えるけど、艶のある革のソファが置かれていた。
デスクの奥には中ぶりで飾り気のない長剣に、沢山の本が積み上げられていた。
窓際に立っていた祖父は、セリムが入ってきたことに気づくと、ふたつの鎖がつながったような小物を手渡してきた。
「これは、知恵の輪という玩具で、このつながっている輪を外す道筋を楽しむものだ。そして、外すためにはこの玩具に対する理解が必要だ」
セリムは、上下左右に引っ張ってみたが、全く外れる気配がなかった。
「引っ張っただけでは外れないんですね」
「そうだ。工夫してそれを外してみなさい」
セリムは言われるままに、祖父から手渡された知恵の輪を外す方法を考えた。
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そこからは、頭の中に外れた後の姿を思い浮かべて、上下左右に引っ張っていると、頭の中で中で手順が組み上がっていった。
その頭に浮かんだ手順通りにやれば、2つの輪はきれいに外れたのである。
「なるほど、この年齢で、知恵の輪をこの速さで解いてしまうということは、分解のスキルは理解力が上がるものなのだな」
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「私が思った通りなら、お前のスキルは剣聖なんかより、よっぽどすごいものだ」
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