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黒姫もヤバイらしいから染まっちまう前に早く番を引き離したい!
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「ねぇグレンさん。聞いてます?」
「ちょっと黙っててくれるか」
契約期限は三ヶ月、黒姫が夫の視察に同行する間の増員だ。
長く部屋を開けるため、今まで借りていた部屋を引き払う事にしたが、何故かリミオが着いてきてる。今後三ヶ月は一緒にやっていく訳だがコイツの頭の中は黒姫の事だらけで口から出るのは黒姫の話し。聞いてるうちに俺も詳しくなっちまった。
「もう。グレンさんサルターンに来て三ヶ月で汚部屋とはびっくりですよぉ。しかもここから黒の姫様のお屋敷を覗いていたなんて、やっぱり排除しとけば良かったかなぁ」
「止めろ、止めてくれ。俺の番は黒姫じゃねぇ」
「ならいいですけど。そうそう、番と言えば黒の姫様の夫の幻獣人の内二人はレーンの騎士をしているんですが、更にその内の一人は第一部隊の副隊長してまして、これがまためちゃくちゃ強いんですよ」
「へぇ」
また始まった。
俺はせっせとゴミを袋に投げ込みながらも何となく耳を傾ける。話にアリエルが出てくるかもしれないからな。
レーンの第一部隊と言えば幻獣王アレクシスの直轄部隊だ。
そこで副隊長っていやあ強いなんてもんじゃねぇだろうな。
「幻獣人だから当然獣化するんですけどね?羨ましい事に姫様に撫でてもらうらしいんです」
リミオが右手で撫でる仕草をしながらため息を吐く。
「・・・・・・・・・撫でるたってちょっと触る位だろ?」
獣人に触る人間の女だって滅多に居ないんだ。幻獣人の、しかも獣化した獣の姿を触るなんてのはちょっとご褒美って感じで一撫でする位なんだろう。
「ワシワシと揉みながら腹に顔を埋めて嗅ぐんだそうで」
「はあ!?嗅ぐ!?顔を埋めて!?いやいやそれこそガセだろう。黒姫は人間だぞ」
「そうなんですよぉ。本当に羨ましいですよね」
「・・・・・・・・おいおい、マジか」
「マジです」
これが本当なら黒姫もかなりヤバイ奴だな。
そんなヤバイ奴の傍にアリエルがいる?
駄目だ。早く引き剥がさないとアリエルに変態が移っちまう。
「あー、そう言えばグレンさん牧場で聞きましたよね?」
「あ?何が」
「僕、ギルドに登録して半年です」
「・・・・・・・冗談か」
「いえ、本当に」
「半年だと?」
こんなに小っこいのにか?
実力があれば確かに無くはない、が。
「半年の人間がよく俺のことを知っていたな」
「知ってますよ?グレンさんの番、アリエーラ様ですよね?僕、姫様のことなら何でも知ってるんです。だから近付いちゃいました。もしグレンさんがアリエーラ様を使って姫様に近付くなら始末しちゃおうかと」
「なら俺が何でこの依頼を取りたかったか知ってるのか」
「多分。でも僕口は出しませんから安心してください。基本姫様の事以外は知識としては知っていても興味が無いので」
「そうか」
「あ、終わりましたね?じゃあ急ぎましょうか。今日中にお屋敷に入らないと行けませんから」
ヤバイ奴だとは思ってたが、これは予想以上だ。
こいつはあれだな。最近よく聞くストーカーって奴だ。
「・・・・髪とか触ったもんとか持ってそうだな」
聞こえていたはずのリミオはふいっと顔を背けて部屋を出ていった。
「・・・・・・持ってそうだな」
***
「今日からしばらくお世話になります!リミオ・ビダです!よろしくお願いいたします!!」
「グレン・カーソンだ、よろしく頼む」
やっと屋敷に入ることが出来た俺達は、屋敷のものに案内されてあのジン・グルードと中庭にいる。直ぐに黒姫に会えるかと思ったがさすがにそれは無いようだ。
「お前らの実力を図らせてもらう。二人とも殺す気で来い」
そう言うと牧場でも展開していた結界を張り袖をまくった。
ジン・グルードと言えば腕利きの冒険者。Aランクの俺より上だ。勝てるかどうかよりも手を抜いたら腕の一本持ってかれそうな雰囲気だ。
綺麗な顔してやる事はエグい。ギルドじゃあ結構有名な話だ。
「グレンさん!」
「ああ、悪ぃな!」
リミオが俺に身体強化をかけ、まずは一振。
ジンは素早く腰の剣を抜き片手でそれを受ける。
体格は俺の方が上だ。身体強化もかけている。
全体的な筋肉を見ても俺の方がある。
なのにこいつはあっさりと片手で受けやがった。
何度打ち込んでも変わらず、片手で制し涼しい顔をしてる。
こいつの筋肉はしなる。ただ筋肉がついているだけじゃなく全体的に柔軟性がある。下半身のバランスもよく荷重移動が上手い。
連続で何度も打ち込むが一度も通らねえ。足技や体術を交えても躱される。
リミオは後方から支援しつつ攻撃魔法を繰り出すが全て弾かれる。
こりゃマジでキツイ。
「グレンさん、もっと攻めて!」
「ああ!言われなくても、分かってる!!」
俺も今まで以上に打ち込み、リミオも今までで一番炎弾を打ち込んだ。
打ち込んだ剣が弾かれ、ぐらりと体制を崩した。
体をひねり一回、二回とジンの攻撃を躱すが、反撃までに体制が整わない。
殺られるっ、か、よっ!
一旦後ろに飛んでから剣に電気を纏わせもう一度振り下ろした。
ジンの唇がくっと持ち上がり、ジンの剣が鈍く光る。
すぐ脇を風が通り抜け、シュッと空を切る。リミオがジンのすぐ目の前まで迫り細く刃の長い短剣を喉元目掛けて振る。
鈍い音が上がり、俺の持っていた剣は呆気なく空へ飛ばされた。
「ぐっ!」
弾かれた衝撃で強烈な痺れが腕を襲い、ジンの剣が目の前で止まる。
リミオの剣は左手の二本の指で抑えられ、それでもリミオは力を込め悔しそうに眉根を寄せる。
「悪くねぇな。だが剣に魔力を込める時は素早くギリギリでやれ。じゃなきゃ今みたいに弾かれる。お前は魔術系じゃなくやっぱり暗殺系か。殺る時は殺気を殺せ」
「・・・・参りました」
「俺もだ。参った」
髪に乱れも無く汗一つかいていない姿に、格の違いを思い知らされた。この見た目、この強さ。
こいつか?こいつがアリエルの………
「着いてこい」
そして俺達は、屋敷の地下にある転移門ってのであっという間に国を超えて幻獣国レーンへと連れていかれ、レーンの騎士団でボコボコにもまれる事になった。
「ちょっと黙っててくれるか」
契約期限は三ヶ月、黒姫が夫の視察に同行する間の増員だ。
長く部屋を開けるため、今まで借りていた部屋を引き払う事にしたが、何故かリミオが着いてきてる。今後三ヶ月は一緒にやっていく訳だがコイツの頭の中は黒姫の事だらけで口から出るのは黒姫の話し。聞いてるうちに俺も詳しくなっちまった。
「もう。グレンさんサルターンに来て三ヶ月で汚部屋とはびっくりですよぉ。しかもここから黒の姫様のお屋敷を覗いていたなんて、やっぱり排除しとけば良かったかなぁ」
「止めろ、止めてくれ。俺の番は黒姫じゃねぇ」
「ならいいですけど。そうそう、番と言えば黒の姫様の夫の幻獣人の内二人はレーンの騎士をしているんですが、更にその内の一人は第一部隊の副隊長してまして、これがまためちゃくちゃ強いんですよ」
「へぇ」
また始まった。
俺はせっせとゴミを袋に投げ込みながらも何となく耳を傾ける。話にアリエルが出てくるかもしれないからな。
レーンの第一部隊と言えば幻獣王アレクシスの直轄部隊だ。
そこで副隊長っていやあ強いなんてもんじゃねぇだろうな。
「幻獣人だから当然獣化するんですけどね?羨ましい事に姫様に撫でてもらうらしいんです」
リミオが右手で撫でる仕草をしながらため息を吐く。
「・・・・・・・・・撫でるたってちょっと触る位だろ?」
獣人に触る人間の女だって滅多に居ないんだ。幻獣人の、しかも獣化した獣の姿を触るなんてのはちょっとご褒美って感じで一撫でする位なんだろう。
「ワシワシと揉みながら腹に顔を埋めて嗅ぐんだそうで」
「はあ!?嗅ぐ!?顔を埋めて!?いやいやそれこそガセだろう。黒姫は人間だぞ」
「そうなんですよぉ。本当に羨ましいですよね」
「・・・・・・・・おいおい、マジか」
「マジです」
これが本当なら黒姫もかなりヤバイ奴だな。
そんなヤバイ奴の傍にアリエルがいる?
駄目だ。早く引き剥がさないとアリエルに変態が移っちまう。
「あー、そう言えばグレンさん牧場で聞きましたよね?」
「あ?何が」
「僕、ギルドに登録して半年です」
「・・・・・・・冗談か」
「いえ、本当に」
「半年だと?」
こんなに小っこいのにか?
実力があれば確かに無くはない、が。
「半年の人間がよく俺のことを知っていたな」
「知ってますよ?グレンさんの番、アリエーラ様ですよね?僕、姫様のことなら何でも知ってるんです。だから近付いちゃいました。もしグレンさんがアリエーラ様を使って姫様に近付くなら始末しちゃおうかと」
「なら俺が何でこの依頼を取りたかったか知ってるのか」
「多分。でも僕口は出しませんから安心してください。基本姫様の事以外は知識としては知っていても興味が無いので」
「そうか」
「あ、終わりましたね?じゃあ急ぎましょうか。今日中にお屋敷に入らないと行けませんから」
ヤバイ奴だとは思ってたが、これは予想以上だ。
こいつはあれだな。最近よく聞くストーカーって奴だ。
「・・・・髪とか触ったもんとか持ってそうだな」
聞こえていたはずのリミオはふいっと顔を背けて部屋を出ていった。
「・・・・・・持ってそうだな」
***
「今日からしばらくお世話になります!リミオ・ビダです!よろしくお願いいたします!!」
「グレン・カーソンだ、よろしく頼む」
やっと屋敷に入ることが出来た俺達は、屋敷のものに案内されてあのジン・グルードと中庭にいる。直ぐに黒姫に会えるかと思ったがさすがにそれは無いようだ。
「お前らの実力を図らせてもらう。二人とも殺す気で来い」
そう言うと牧場でも展開していた結界を張り袖をまくった。
ジン・グルードと言えば腕利きの冒険者。Aランクの俺より上だ。勝てるかどうかよりも手を抜いたら腕の一本持ってかれそうな雰囲気だ。
綺麗な顔してやる事はエグい。ギルドじゃあ結構有名な話だ。
「グレンさん!」
「ああ、悪ぃな!」
リミオが俺に身体強化をかけ、まずは一振。
ジンは素早く腰の剣を抜き片手でそれを受ける。
体格は俺の方が上だ。身体強化もかけている。
全体的な筋肉を見ても俺の方がある。
なのにこいつはあっさりと片手で受けやがった。
何度打ち込んでも変わらず、片手で制し涼しい顔をしてる。
こいつの筋肉はしなる。ただ筋肉がついているだけじゃなく全体的に柔軟性がある。下半身のバランスもよく荷重移動が上手い。
連続で何度も打ち込むが一度も通らねえ。足技や体術を交えても躱される。
リミオは後方から支援しつつ攻撃魔法を繰り出すが全て弾かれる。
こりゃマジでキツイ。
「グレンさん、もっと攻めて!」
「ああ!言われなくても、分かってる!!」
俺も今まで以上に打ち込み、リミオも今までで一番炎弾を打ち込んだ。
打ち込んだ剣が弾かれ、ぐらりと体制を崩した。
体をひねり一回、二回とジンの攻撃を躱すが、反撃までに体制が整わない。
殺られるっ、か、よっ!
一旦後ろに飛んでから剣に電気を纏わせもう一度振り下ろした。
ジンの唇がくっと持ち上がり、ジンの剣が鈍く光る。
すぐ脇を風が通り抜け、シュッと空を切る。リミオがジンのすぐ目の前まで迫り細く刃の長い短剣を喉元目掛けて振る。
鈍い音が上がり、俺の持っていた剣は呆気なく空へ飛ばされた。
「ぐっ!」
弾かれた衝撃で強烈な痺れが腕を襲い、ジンの剣が目の前で止まる。
リミオの剣は左手の二本の指で抑えられ、それでもリミオは力を込め悔しそうに眉根を寄せる。
「悪くねぇな。だが剣に魔力を込める時は素早くギリギリでやれ。じゃなきゃ今みたいに弾かれる。お前は魔術系じゃなくやっぱり暗殺系か。殺る時は殺気を殺せ」
「・・・・参りました」
「俺もだ。参った」
髪に乱れも無く汗一つかいていない姿に、格の違いを思い知らされた。この見た目、この強さ。
こいつか?こいつがアリエルの………
「着いてこい」
そして俺達は、屋敷の地下にある転移門ってのであっという間に国を超えて幻獣国レーンへと連れていかれ、レーンの騎士団でボコボコにもまれる事になった。
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