魔王降臨!勇者を討伐に行ってきます!

韋駄天

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魔王の狩り

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魔王一行の気鋭の新人、リーナが冒険者ギルドの認定試験の一つ、模擬戦闘をすることになった。
その様子を見にウオマ、クレイとアランが試験の様子を見に行くと、そこには無様に地に伏す巨人の醜態とその正面で仁王立ちする少女が存在した。

「「「何事?」」」

疑問声が響き、周囲の空間に木霊すると、戦闘試験を見物していた冒険者達の視線が一気に三人の乱入者へと向く。
ただでさえ新しく冒険者登録をしに来た少女に自分たちの知る最強の冒険者、このギルド支部の頂点のインパルフェが一蹴されたって混乱の最中なのに、その上見知らぬ顔ぶれが突如何もない物陰から出現したのである。
困惑するしか脳が状況を認識しきれないだろう。
しかし、魔王はそんな視線一切気にしない!
気にも止めずに自慢の『必殺!空気なんて読みません!』攻撃発動!

「おい!インパルフェ!この娘は俺の連れだから取り敢えず日を改めて冒険者証を取りに来るから絶対準備しろよな!俺らは忙しいから行く!準備してなかったらこの街は滅びると思え!因みに俺の事は内密にだ!お前の記憶だけ残しておくから頼んだぞ!じゃな!」

魔王が口早にそう言い残し、リーナを片手に抱いて突っ走って行く。
それを地面にうつ伏せのまま聞き届け魔王の去って行った方角を唖然として眺めていると、

「悪ィなそこのおっさん。あの人はまだ制御が取りきれてねぇんだ。今度来る時はちゃんと挨拶するから!じゃあな!リーナちゃんの冒険者証宜しくな!」
「すみませんこの騒ぎのお詫びはまた次回でお願いします。しっかり仕事だけは果たしておいてくださいね。では!」

と、二人の若者が謝罪と脅迫を同時に残して駆けていく。
その勢いに押され、そこらの成人男性を容易く薙払えそうな巨躯で蹲る男はただただそこで地に伏せているしか出来なかった。

*****

「狩りだーーー!」
「わーーー!」
「や、やったー?」
「リーナちゃんが流れについてこれてないじゃないですか。しっかりして下さい貴方達二人」

冒険者ギルドでの大騒動の後、四人はウオマを先頭にモワティエの近隣の森へ来ていた。
勿論、戦闘能力強化を目的とした魔物狩りである。

「今日の晩飯に一番美味そうな奴見つけた方が勝ちな!アラン、勝負だ!」
「望むところだ!と言いたいとこだが、俺じゃアンタに勝ち目無さすぎねぇ!?」
「しょうがねぇなぁアランは。よし、お前に俊剣ヴィテェスを貸してやる!使ってみりゃ分かるから勝負開始な!」

そんな急な開始宣言を残し、虚空から顕現させた魔剣をアランに放り投げ、魔王が森林の奥へと飛び出していく。
その後を追うようにアランが踏み出すと、彼は刹那の内に視界から掻き消える。
クレイがその異常な事象に目を見開いているが、これには大きな理由がある。
それもかなり察しやすいが、魔王が最後に置いていった俊剣ヴィテェスである。
この魔剣の能力はというと、要約すれば、ただ単に物凄く速いのである。
剣自体が途轍もない俊敏さで音をも置き去りにする。
しかし、その効果は使い手にも影響を及ぼし、この剣を携える人間は世界最速とも言える域の速度を手中にし、あらゆる物質を斬り刻む。
そんな世界各国が戦争も辞さない程の脅威的かつ圧倒的な力を持つこの魔剣を、魔王はハンデ、という名目でアランに貸したのである。
大陸全土を血色に染めるような扱いをされる武器が、夕食の材料調達競争の道具に使っている魔王はなんと贅沢な事か。
そして、その真の価値も知らずに調子に乗って剣を思う存分振り回しているアランの、なんと愚かな事か。
そんな、世界を揺るがす夕飯の食材調達が行われてる中、クレイはリーナの稽古をつけていた。

「さて、ではリーナちゃん、これから近接戦闘訓練、それも武器の扱いを主に鍛えましょう。魔法技術はウオマさんが秘策を持っているようなので、任せます。なので、先ずは僕の持つ短刀、その使い方を説明しましょう」
「はい!」

この面子では一番近接で武器を使いこなすクレイがリーナに教授する。
先ずは持ち方から教え、そこから力の込め方、体と一体に、と次々と短刀を自分の手のように操作する手順を叩きこんでいく。
リーナは闘神の霊魂複写で武術と近接格闘術は一通りマスターしたが、生憎闘神は素手でしか闘わない戦士だったので、武器は一から教えねばならないのである。
魔王のレパートリーにも、残念ながら武器を操る天才という人物はいなかったらしい。
リーナに対してウオマは不甲斐ないと言っていたが、十中八九、いや、ほぼ確実に演技であろう。
何せ、魔王的にはリーナは既に強化し過ぎて危険人物認定されているのである。
リーナが暴れ出したら、ウオマでさえ倒し切れるか分からない。
そんな事がないようにきちんとした教育はしているつもりだが。

そして、クレイがリーナの特訓の続きをしようとリーナの方へと振り向くと、そこでは、

ーーー仰向けで泡を吹く少女と、巨大な虫、正確には百足だろうか、がこっちを見据えていた。


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