魔王降臨!勇者を討伐に行ってきます!

韋駄天

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魔王の配下の百足攻略戦

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ウオマとアランが夜飯の食卓を狩りたての新鮮魔獣で彩ろうと、森の中を疾走して探索していた頃。
リーナはクレイに稽古をつけてもらっていた。
そして、武器の扱いを練習中の最中、監督役のクレイが少しばかり回想に浸り、そしてふと我に返ると、そこには意識不明のリーナとその巨体を揺らす大百足があった。

面倒なことこの上ない。
それが、クレイの頭に浮上した最初の言葉だった。
仮にこれと戦闘をすることになると、ほぼ確実に持久戦となるだろう。
勿論、クレイにとっては大の不得意分野である。
クレイにしてみれば、一番得意な戦闘法は奇襲と援護なので、タイマンで正面戦闘等、丸っきり専門外なのである。
しかも、相手が相手だ。
百足の外骨格に対して自分の短刀がどれだけの決定打を与えられるか。
それが一番の難題であり、更に魔物の天然装甲を突破しえたとしても、急所を狙えるかどうかが更に難易度を猛烈に躍進させる。
この強敵に致命傷を与えうるのはウオマとアランのどちらかの破壊的な攻撃力しかないが、無い物ねだりしても意味がない。
正面には大事な犬人の少女も倒れている。
彼女がもし戦闘可能な状態だったら大いに心強かったが、生憎彼女は虫嫌いらしい。
参戦できる可能性は絶望的に低い。
こんな八方塞がりの状況、どう脱すればいいというのか。
一か八か、無謀に交戦するか。
もしくはなんとかここで他の二人が戻ってくるまで時間を稼ぐか。
どっちにしろ、昏倒しているリーナを守りながらの戦闘になってしまうが、他の手段はない。
仮にこいつをおびき寄せてなんとかウオマ達の方へ誘導しようにも、奴らの頭は理解出来ない。
向かって行った方向へ進んで、彼等がまだその方角にいる可能性は賭けられる程じゃない。
さて、どうするか。

そんな現在情報を整理し、思考に没頭するクレイを百足が待つ訳がない。
そんなご都合主義みたいな展開はあり得なく、魔物はクレイに向かって酸を射出する。
それに飛びのく緑髪の青年を最後まで見続ける事なく、百足が既に無防備な少女へとのしかかーーーっていなかった。
巨大な鉄筋が墜落したような鈍い轟音を響かせながら百足が地面に重圧を強いる。
そして、その下に血溜まりは出来ていなかった。
人の形だったかもしれない異物から紅い液体が滲み出るのを覚悟でクレイは自分の思考を後悔し、その上で後方へ飛び下がった自分を許されようのない外道として責める決意をしながら中空で眺めてた。
そんな惨憺たる光景を想像しながらも、その悲惨な景色はいつまで経っても出現しない。
それに混乱しながらも辺りを見回すと、探し求めていたもの、リーナの遺体、いや、実際は生きていたが、を見つけた。
クレイが焦りと後悔でおぼつかない脚を押して駆け寄ると、そこには、

ーーー白目を剥いたままのリーナがいた。

何が起こったのか、その説明自体は簡単である。
気絶したままのリーナは本能的に危機を回避した。
端的に言えば、それだけである。
しかし、クレイはその瞬間を目撃出来なかった為、少女が単なる偶然、いや、奇跡で生き残ったと判断する。
そんな冷静な分析をしたが、内心は怒り狂っている。
そして、その憤怒が一線を超える。
ブツン、と音がした。
その場にいた全員の鼓膜に届き、空間を震わせた殺戮の衝動とも呼べる感情が覚醒した怪音。
そして、綺麗な新緑の色彩を放つ青年の体が、ゆらりと立ち上がる。
その彼の目元は少し長めの髪に遮られた光を浴びず、暗い。
そして、大気を震動させるような殺気がどこからともなく溢れ出る。
そんなどす黒い闇の中、少年の顔、その上部の位置に一対の紅の光点が生まれる。

「直に、殺してやろう」

そんな言霊が周囲に反響したと思いきや、その音源の人影が消失する。
大百足が呆気に取られた、かのような雰囲気を漂わせ、混乱であちこちを索敵する。
その、次の刹那。
長い、長い、鬼火の光を反射する刃物のような寒色の暗い光が閃く。
一拍置き、鮮血が森を鮮やかに彩る。
百足が耳障りな奇声を上げ、その場に人間がいたのなら本能的に耳を塞いだであろう。
そんな悲鳴が木霊しながらも、小さな影の暗器は更なる歓喜の喝采をし、またしても一拍。
百足が威嚇のつもりか、歯を鳴らした途端、百足の体の尾から追うように血が噴出する。
魔物が地獄の痛苦を耐え忍べずに絶叫した、そう錯覚するような怪奇な金切り声で咆哮する。
そんな叫声すら受け付けないのか、影の化身がその両の紅眼を煌かせ、化け物の正面で短刀を振り下ろす。
生まれた斬撃波が稲光を伴い、百足に接近し、

ーーー両断した。



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