訳あり男装執事は、女嫌いの騎士団長に愛され口説かれる

九重ネズ

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騎士団長からまさかのお誘い!? 2

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 オズワルドの口から聞かされた令嬢の名前に、アンディは身体がカチンコチンに固まった。
 今は執事のアンディの格好をしていても、アナベル・ライトナーは自分であるため、どう返せばいいか分からない。
 しばらくグルグルと考えあぐねていると、オズワルドはアンディを見て頬を少し赤らめながら、優しく笑ってこう言った。

「アンディ殿。きっとアンディ殿なら、アナベル嬢の事を知っているだろうなと思い、この話題を口にしたのだが、今彼女と連絡とれたりとか出来るか?」
「え!?え、えっと…その…」
「ああ。もちろん、無理にとは言わない。けれど、この件はロザリア嬢にも話す予定だ。男嫌いのロザリア嬢が殿下と二人きりデートとなると、色々大変な事になる未来は想像できるからな。近くに女性が一人いるだけで、ロザリア嬢は息がしやすいかもしれないしな」

 女嫌いのオズワルドが、こんなにもロザリアを気にかけている事に驚き、アンディは数回瞬きを繰り返した。
 これだったら、ダブルデートに参加してもいいと思ったが、所詮今は男なうえ、女性の格好をするのは一年ぶりで粗相があるかもしれないと思い止まる。

 けれど、オズワルドの誘惑はむしろ、これだけではなかった。

「あと、カミーユ曰く『アナベル嬢は昔、女性騎士候補生だった』そうだな。きっと彼女は、ロザリア嬢とリュドウィック殿下の護衛役としても、打ってつけだと思うのだが…」
「うっ!ぐっ…ううぅ…」
「あ、そうそう。もしダブルデートで、アナベル嬢が俺のパートナーになってくれれば、女避けが出来て、尚且つ面倒な令嬢も寄ってこないだろう。まぁダブルデートとは言ったが、この催しの真の目的は、最高級糸『銀の繭』の視察とその歴史の勉強。そしてロザリア嬢用の『銀の繭』で作られたオーダーメイドドレスを作る事だからな。もちろん今は、ロザリア嬢とアナベル嬢が仲良くしている状態でも構わない。…どう、だろうか?」
「ふっ、んぐぅ…!」

 上目遣いでそうオズワルドに懇願されてしまったら、泣きそうな顔をする可愛い大型犬に見えてしまって、つい頷きそうになる。
 けれど、最も大事なのはロザリアの気持ちだ。
 ロザリアが頷いてくれないと、このダブルデートは実現しないだろう。

 アンディは精一杯頭を働かせて、言葉を一つずつ選び出したあと、声を振り絞ってこう返答した。

「…わ、分かりました!で、ですが!一番大事なのはロザリア様のお気持ちです!ロザリア様が頷いて下されば、わたっ…あ、アナベル嬢に、ご連絡いたします!」
「っ!アンディ殿、本当か!?…やった…!」

 目の前で顔を赤くしながら了承の返事をしたアンディに、オズワルドはとても嬉しくなって晴れやかな笑顔を浮かべ、小さくガッツポーズをした。
 なにせ、初めて出逢った時から気になっていたからの返事である。
 と言ってもまだ本当に確定って訳ではないが、もう既にオズワルドの目には、アンディは男性ではなく女性として、アナベル・ライトナーとして映っているのだ。

 (よっし!これで一歩踏み出せたな!…まぁ、アナベル嬢が一体どういう形でデートに応じてくれるのかは、分からない。けれど、もし今まで出会った女性と違っていたら…可愛かったら…きっと俺はアナベル嬢の事を…)

 話し合いが終わった救護室の中で、顔を真っ赤にしながら黙りこくっている、アンディとオズワルド。
 その様子を、ベッドの布団から顔を少し出して見ていたリュドウィックは、その場で楽しそうにニヤニヤと笑っていたのであった。
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