訳あり男装執事は、女嫌いの騎士団長に愛され口説かれる

九重ネズ

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エンブレスト伯爵家には逆らえない!

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 リュドウィックとの話し合いが終わり、応接間を出たロザリアは、早速廊下にいるアンディの腕を取って、自分の腕に絡めながら嬉しそうに笑った。

「おや?ロザリア様、とても嬉しそうですね。今日の話し合いは、上手く行ったのですか?」
「ええ、そうよ!ふふっ。実は今日、リュドウィック殿下がとってもいい提案をしてくれてね。ふふふっ!殿下たちがここを離れたら、一緒にお話しましょ?」
「ロザリア様…。はい!貴女の仰せのままに!」

 自分に可愛く話しかけてくれる素敵なご主人様に、アンディはメロメロになりながら、うんうんと頷いた。
 しかも、その近くでオズワルドが頬を膨らませながら、ロザリアに嫉妬しているとも知らずに。

 そして、応接間から次に出て来たリュドウィックは、オズワルドの不機嫌に気付き、顔をニヤニヤさせながら彼の横腹を肘でつついた。

「おやおや~。不機嫌オズ君になってるぞ、オズく~ん。まるでトラフグじゃないか!ほーれ、うりうり~」
「ハッ!で、殿下!い、いつの間にそこに!?あと、とらふぐ、って?」
「……あー…ごめん。今のも忘れてくれ、オズ。…確かに、ここにトラフグはいなかったね…。はは…」

 自分の言ったものがこの国になかった事に気付いたリュドウィックは、冷や汗をかきながら苦笑いを浮かべる。
 その彼の様子に、アンディとロザリアはお互いに目を見合わせから、同時に首を傾げた。

 かくして、オズワルドと合流したリュドウィックは、ロザリアとエンブレスト伯爵と軽い会話をした後に、王家の馬車に乗って王城へと帰っていった。
 それを手を振って見守っていたアンディは、ふと自分の袖を掴んで引っ張るロザリアに気付いて、声をかけた。

「ロザリア様、どうしたのですか?あ。そういえば、話したい事があると仰ってましたよね?一体どんな話なのでしょう?」
「ふっ。ようやく思い出したようね、アンディ。いや、ここではと言った方がいいわね!」
「……ふぁっ!?」

 突然ロザリアから自分の本名を口にされて、アンディは身体を大きく跳ねさせた。

「ふっふっふ~。実はさっき、応接間でリュドウィック殿下とダブルデートの話し合いをしてきたのよ。私とアナベルと殿下と騎士団長様の四人で、『銀の繭』という最高級品の糸を見に行くのよ!アナベルとイチャイチャデートが出来るうえ、お父様の仕事も間近で見られる!さいっこうじゃないかしら!?」
「ふぁあああああ!?えっ、ほ、本当にダブルデート了承したのですか!?い、言っておきますが、今の僕は男ですよ!?しかも、女性の格好するのって一年ぶりぐらいなので、マナーとか忘れましたし、ガサツなので絶対笑われますし!」
「あら。まぁ確かに、アンディは男だけどアナベルは女性よね?でも、それとこれとは別の話!私が今話しているのはアナベルなの!マナーとかも大丈夫よ!そこは私がビシバシしごくわ!」
「ひ、ひえぇ…。え、エンブレスト伯爵様ぁ…」

 アンディは涙目になりながら、エンブレスト伯爵に縋るように手を伸ばす。
 けれどエンブレスト伯爵は、大きくため息をついて手を額に置いて首を横に振った。

「すまないな、アンディ。いや、ここはアナベルと呼ぼうか。…私がここ一年でアナベルの情報や存在自体を消したはずだったのだが、王家に知られてしまったから、もうダメだ。もし、アナベルを死なせてアンディしかいないと話しても、絶対にアンディがアナベルだと見破られてしまう。しかも、ロザリアもこのダブルデートに乗り気だ。…だから娘のために、ダブルデートが終わるまではアナベルになってくれないか?」
「…は、はひ…。え、エンブレスト伯爵の、仰せのままに…」
「まぁ!ありがとうございます、お父様!」

 ロザリアだけでなく、エンブレスト伯爵にもアナベルと呼ばれてしまい、しかも王家にアナベルを隠し通す事は難しいと断言されてしまったら、もう逆らえない。
 しかも、満面の笑みでキャッキャと楽しそうに笑うロザリアを見るのもすごく久しぶりで、これはもう到底後戻りが出来そうもない。

 こうして執事のアンディは、ダブルデートが始まる十日後まで、ライトナー子爵家のご令嬢・アナベルとして過ごすことになったのだった。

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