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降り立った世界はハードモード
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「手荒な真似をされたくなかったらすぐにそこから出てきなさい。」
やばっ!と騎士の方を向くと彼はひたとこちらを見据えながら手は剣の柄に伸びている。
「待って!待ってください。抵抗とか何もしませんので!」
あんなもので切りかかられたら本物だろうが偽物だろうが絶対痛い。体資本の仕事をしている以上怪我をするのはごめんだとすぐに立ち上がって祭壇の裏から騎士の方へと歩き出す。もとより事情を説明して助けてもらおうとしていたんだ、少し状況は変わっているけどきっと大丈夫なはず。逃げ出してしまいたい気持ちをなんとか押し殺しながら騎士の目の前までたどり着いた。なんでか分からないが言葉が通じて良かった。いきなり切られたりしたら洒落にならない。
騎士は素直に出てきた涼貴の手に黒い腕輪を付けた後、外に待機していたらしい他の兵たちを中に呼び入れた。結果、涼貴は現在10人ほどの騎士に周りを囲まれ、丸腰なので危険性がないのは一目でわかりそうなものだが侵入者というレッテルゆえか敵意むき出しで睨みつけられており、なかなかに居心地が悪い。更に兵士たちは183cmある涼貴が見上げなければならない程に背が高く屈強なので威圧感もものすごい。剣を向けられていないだけまだマシだと思った方がいいんだろうか。なんで俺はこんな目に合っているんだ、俺が何したっていうんだ、もう何度めかも分からない嘆きを心の中で呟いてみてもなんの解決にもならなず心が沈むばかりである。そんな中さっきの騎士が口を開いた。
「協力者たちはどこに隠れている?」
「協力者?そんな人いないですよ。俺は一人です。」
「はっ、君一人でここに入り込むなど出来るはずがないだろう。陣を組み込むものなど少なくとも3人は協力者がいるはずだ。」
「まじで言ってる意味分かんないんだよ…。信じてもらえないかもしれませんが本当に起きたらここにいただけなんです、俺。」
協力者、というか自分をここに連れてきて放置した者を探し出せるなら協力なんて惜しむわけがない。探し出した上でどういうつもりなのか問いたださなければ、一番そいつに腹が立っているのは俺なんだ。だがいくらそう言い募ろうとも騎士たちが聞き入れてくれるはずもなく。協力者がいるいないの問答を繰り返し、苛立ちながら知りませんと何度目かの返答をした時、
「いつまでもしらは切り通せんぞ。言いたくなるようにしてやろうか。」
痺れを切らした一人の兵がそう叫ぶや否や持っていた槍を涼貴目掛けて突き出した。
「おい!素直に出たら手荒な真似はしないっていう約束だっただろ!?」
「質問に素直に答えぬ貴様が悪い!」
「素直に答えてただろ!今まで何聞いてたんだ!知らないから知らないと言ったのを信じなかったのはお前らじゃないか!」
流石にいきなり暴力に訴えられたら丁寧に説明して分かってもらおうなんて考えは捨てざるを得ない。穏便な話し合いを望んでいた涼貴にとっては非常に残念なことではあるが突っ立ったままでは自分の身が危険に晒される。相手の身勝手な言い分にイラっとして言葉を返しながらも涼貴は一番近くの兵士を軸に体を浮かせ、蹴りを繰り出して周りをけん制しつつそいつの肩を踏み台にするとふわりと包囲円を抜けた。あまりに素早い動きに呆気にとられていた兵たちもすぐに気を取り直し涼貴を捕えようと動き出す。
じわじわと迫ってくる兵士たち、この狭さにこの追手の数、いくら涼貴が身軽だからといってこのままぐるぐると逃げ続けることはできない。
外に繋がっていそうなところといえば窓だな。外がどうなっているか一切分からないけど一か八かに賭けるか。
ここでぐずぐずしていると捕まってしまう、逃げ出しもしたしもう一度捕まれば今度こそどんな扱いを受けるか。その前に窓から逃げる、そう決めると涼貴は近くの壁を力いっぱい蹴りながら駆け上がり、柱上部の装飾に飛びついた。そこからわずかな突起を足がかりに壁の中ほどにある梁に上る。そこを辿っていけば窓まで届きそうであった。
まさか涼貴が純粋な身体能力だけで高所にある窓まで登ったとは知らない兵たちは大慌てである。
「身体強化をしたのかっ」
「団長殿、奴は魔力封じの腕輪をしているはずではないのですか!?」
「どうなっている!?」
「とりあえず捕縛の術を組め!」
魔力やら術やらと現実離れした言葉にもはや驚く力も残っておらず、もうどうとでもなれと半ば投げやりに教えてやる。
「魔法じゃなくてただのパルクールだよ。俺、仕事でこんな感じのこといっぱいすんの。逃げて申し訳ないけれどひどいことはされたくないし見逃してほしい。」
じゃ、と言って窓に向かって飛び出した瞬間、何かが涼貴の足首に巻き付いた。驚いて自分の足に目を向けるも何も絡みついている様子はない。何が何だか分からないままいきなり体が引っ張られ、気付けば涼貴はバンジージャンプよろしく足首に絡みつく何かによって宙へと放り出されていた。
やばっ!と騎士の方を向くと彼はひたとこちらを見据えながら手は剣の柄に伸びている。
「待って!待ってください。抵抗とか何もしませんので!」
あんなもので切りかかられたら本物だろうが偽物だろうが絶対痛い。体資本の仕事をしている以上怪我をするのはごめんだとすぐに立ち上がって祭壇の裏から騎士の方へと歩き出す。もとより事情を説明して助けてもらおうとしていたんだ、少し状況は変わっているけどきっと大丈夫なはず。逃げ出してしまいたい気持ちをなんとか押し殺しながら騎士の目の前までたどり着いた。なんでか分からないが言葉が通じて良かった。いきなり切られたりしたら洒落にならない。
騎士は素直に出てきた涼貴の手に黒い腕輪を付けた後、外に待機していたらしい他の兵たちを中に呼び入れた。結果、涼貴は現在10人ほどの騎士に周りを囲まれ、丸腰なので危険性がないのは一目でわかりそうなものだが侵入者というレッテルゆえか敵意むき出しで睨みつけられており、なかなかに居心地が悪い。更に兵士たちは183cmある涼貴が見上げなければならない程に背が高く屈強なので威圧感もものすごい。剣を向けられていないだけまだマシだと思った方がいいんだろうか。なんで俺はこんな目に合っているんだ、俺が何したっていうんだ、もう何度めかも分からない嘆きを心の中で呟いてみてもなんの解決にもならなず心が沈むばかりである。そんな中さっきの騎士が口を開いた。
「協力者たちはどこに隠れている?」
「協力者?そんな人いないですよ。俺は一人です。」
「はっ、君一人でここに入り込むなど出来るはずがないだろう。陣を組み込むものなど少なくとも3人は協力者がいるはずだ。」
「まじで言ってる意味分かんないんだよ…。信じてもらえないかもしれませんが本当に起きたらここにいただけなんです、俺。」
協力者、というか自分をここに連れてきて放置した者を探し出せるなら協力なんて惜しむわけがない。探し出した上でどういうつもりなのか問いたださなければ、一番そいつに腹が立っているのは俺なんだ。だがいくらそう言い募ろうとも騎士たちが聞き入れてくれるはずもなく。協力者がいるいないの問答を繰り返し、苛立ちながら知りませんと何度目かの返答をした時、
「いつまでもしらは切り通せんぞ。言いたくなるようにしてやろうか。」
痺れを切らした一人の兵がそう叫ぶや否や持っていた槍を涼貴目掛けて突き出した。
「おい!素直に出たら手荒な真似はしないっていう約束だっただろ!?」
「質問に素直に答えぬ貴様が悪い!」
「素直に答えてただろ!今まで何聞いてたんだ!知らないから知らないと言ったのを信じなかったのはお前らじゃないか!」
流石にいきなり暴力に訴えられたら丁寧に説明して分かってもらおうなんて考えは捨てざるを得ない。穏便な話し合いを望んでいた涼貴にとっては非常に残念なことではあるが突っ立ったままでは自分の身が危険に晒される。相手の身勝手な言い分にイラっとして言葉を返しながらも涼貴は一番近くの兵士を軸に体を浮かせ、蹴りを繰り出して周りをけん制しつつそいつの肩を踏み台にするとふわりと包囲円を抜けた。あまりに素早い動きに呆気にとられていた兵たちもすぐに気を取り直し涼貴を捕えようと動き出す。
じわじわと迫ってくる兵士たち、この狭さにこの追手の数、いくら涼貴が身軽だからといってこのままぐるぐると逃げ続けることはできない。
外に繋がっていそうなところといえば窓だな。外がどうなっているか一切分からないけど一か八かに賭けるか。
ここでぐずぐずしていると捕まってしまう、逃げ出しもしたしもう一度捕まれば今度こそどんな扱いを受けるか。その前に窓から逃げる、そう決めると涼貴は近くの壁を力いっぱい蹴りながら駆け上がり、柱上部の装飾に飛びついた。そこからわずかな突起を足がかりに壁の中ほどにある梁に上る。そこを辿っていけば窓まで届きそうであった。
まさか涼貴が純粋な身体能力だけで高所にある窓まで登ったとは知らない兵たちは大慌てである。
「身体強化をしたのかっ」
「団長殿、奴は魔力封じの腕輪をしているはずではないのですか!?」
「どうなっている!?」
「とりあえず捕縛の術を組め!」
魔力やら術やらと現実離れした言葉にもはや驚く力も残っておらず、もうどうとでもなれと半ば投げやりに教えてやる。
「魔法じゃなくてただのパルクールだよ。俺、仕事でこんな感じのこといっぱいすんの。逃げて申し訳ないけれどひどいことはされたくないし見逃してほしい。」
じゃ、と言って窓に向かって飛び出した瞬間、何かが涼貴の足首に巻き付いた。驚いて自分の足に目を向けるも何も絡みついている様子はない。何が何だか分からないままいきなり体が引っ張られ、気付けば涼貴はバンジージャンプよろしく足首に絡みつく何かによって宙へと放り出されていた。
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