悪役神子は徹底抗戦の構え

MiiKo

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降り立った世界はハードモード

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とりあえず手始めに頭がパンクしそうなほどの怒涛の展開を整理しないと。

まず涼貴は、否定する材料も尽きてしまったので、今のところここは異世界であると無理やり納得をした。そうした方が色々と抵抗なく呑み込めそうなので本当に仕方なく、である。

自分が一番初めにいたあの建物。涼貴は教会だろうと当たりを付けていたが騎士たちの話を聞くに礼拝堂であるらしい。なんという神を祀っているかまでは分からないが、壁画に描かれていた老人か青年のどちらか、もしくは両方が信仰対象であることは間違いないはずだ。また、一番最初にやってきていた濃色のローブのおじいさんは司祭と呼ばれていた。大神殿という単語も聞こえたのできっと比較的大きい宗教で、体系だったシステムを確立しているのだろう。権力も持っていそうである。そして、自分はその中でもよりにもよって立ち入り制限のかかった、周りを衛兵で警備されているような建物に放置されていた。なんともまあ運がないというか何というか、放られたのがそこら辺の道とかだったら今頃もう少し丁寧に扱われていたかもしれない。セオリーなら俺は望まれて異世界に降り立っているはずなんだけどな、などとひとりごちてみても仕方ない。物語と現実は別物だ。きっと自分を取り囲んで睨んでいた兵士たちはあの宗教を信仰していたのだろう。

「俺は大事にしている神聖な場所への侵入者だもんな、そりゃ敵意剥きだしで蹴りたくもなるか。」

蹴ったことはもちろん許せないが蹴った理由は理解出来てしまうのが悔しい。でもやはり腹は立つので蹴ったお返しはいつかしてやろう。
しかし、彼らの服装はどういうことなのだろう。司祭がローブを羽織るのはわかる。宗教に携わる人たちは往々にして特徴のある衣服を身にまとっているからだ。しかし、兵たちも中世ヨーロッパ然とした格好をしていた。涼貴は衣装の方面には明るくないが、兵たちはチェインメイル、騎士は甲冑と一般的に言われるものを着ていたように思う。それぞれ胸に紋章のようなものも付けていたが流石にそんな細かなところまで観察している余裕はなかった。バチカンのスイス衛兵のように神聖な場を守る者だからこその服装だろうか。いや、騎士は副団長と呼ばれていたし、それ以前にあの騎士は陛下に報告するとか言っていなかったか、そこから考えればこの国は王制が敷かれており中世ヨーロッパ風の服装が一般的だと思うのが妥当だろう。文明のレベルもそれくらいなのだろうか。人々の暮らしも見てみたい気もするが、そういえば自分は囚われの身、まず無事に外に出してもらえるかの保証もないのだった。また暗い思考に沈みそうになるのを頭を振ってストップする。

さて、一番最後にして涼貴を混乱させている最大の存在、魔力について。初め陣やらといった言葉を聞いた時には混乱はしたものの何か専門的な用語か宗教関連の何かだろうと本気で信じはしなかった。しかし、実際に遥か頭上にいた涼貴を捕まえて地面まで引きずりおろした上に四肢と口を拘束されてしまえば、信じないわけにはいかないのだろう。どうやら、この世界には魔力が存在して人はその魔力を使うことが出来るらしい。魔力はどのようなものか、魔法と同じなのだろうか。涼貴の魔法の知識、映画や小説から得た想像力で理解できる仕組みなのだろうか。全員が魔力を持っていて生活は魔力が頼りなのか、それとも選ばれた人間にしか使えないのか、属性なんてものはあるのか、かっこよく詠唱なんかしちゃうのか。

自分も使えちゃったりなんかして。

こんな状態ではあるが、ワクワクしないわけがない。誰しも一度は特別な力を持つことに憧れただろう。涼貴だって子どもの頃は自分にも魔法学校から手紙が来ないかと胸をときめかせながら郵便受けを確認していたし、空を飛ぶ夢を見た朝にはなんだか出来る気がして階段から飛び、友達とは印を結んで遊んだ。流石にもうフィクションはフィクションだと理解して今では子供に夢を抱かせる側の仕事に就いているが、可能かもしれないなんて言われたら心の中の涼貴少年が顔を覗かせてしまう。疑いが晴れて解放されたら一番に魔法の勉強をしよう、と心に固く決めてから頭を本題に戻す。

この世界の魔力の在り方について。情報が少なすぎるが、騎士が涼貴に魔力封じの腕輪、因みに今も右腕にある、を付けたので魔力を持つことは比較的ポピュラーなのだろう。縄のように動いたり口を封じたり、身体強化や捕縛の術という単語も聞こえたので様々な形に応用させて使用可能な雰囲気もある。一方で、涼貴に確実に協力者がいると疑われたように魔力が使えれば全て一人でこなせるというわけではなさそうであるし、涼貴捕縛の際には”術を組む”のに少し時間を要するようでもあった。魔力も万能ではないようだ。そもそも万能なら今この瞬間も涼貴を魔力で封じ込めてしまえばよいのだ。そうせずにわざわざ枷と鎖なんかを使って拘束しているところを見るに、延々と術を行使することは出来ない何かがあるのだろう。それが何なのか見当もつかないが、あの騎士に聞いたら答えてくれそうな予感がする。彼は頭は固そうだが他の兵に比べて冷静で話が少しは通じる男だった。無理やり拘束されたが。

ひとしきり考え切ったところで、ふぅと息を吐く。かなり長い時間考え込んでいたと思うが一体今は何時なのだろうか。自身が気を失っていた時間もあるので体内時計はあてにならないし、外を確認することもできない。こちらに来てから何も飲み食いしていないので流石に限界が近づいてきた。もしかしてこのままここに放置されるのではないだろうか。気を抜くとまた悪い方向へと流れる思考を引き留めて、涼貴は体力温存のためにもう一度眠ることにした。
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