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第二章 再び遠き理想郷
その1 やっぱり、俺が……必要!
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ピーポーピーポ
ドップラーー効果音を引き連れて救急車のサイレンが近づいてきてるのがわかる。
「おい君大丈夫か!?」
制服姿の警察官が俺に声をかける。
よかった俺は戻ってこれた、現代に戻ってこれたんだ。
俺は自分の姿を見直す。
ちょっと砂に汚れているが、ルーと別れた時のような、酷い服の状態ではない。
バッグもそのままだ。
夢……だったのかな?
「大丈夫です。それよりも少女が巻き込まれたかもしれません」
俺は記憶を思い起こす。
1年前の記憶を。
あの日俺は少女を助けようとして……
「えーん! お母さん!」
声の主は見覚えのある少女だった。
母親と思われる女性に抱きついている。
そして到着した救急車の救急隊員は、トラックの運転手を担架に乗せていた。
運転手は救急隊員と会話ができている所を見ると、重篤な事態に陥ってなさそうだ。
そうだ! デートの待ち合わせ!
「急いでるので失礼します!」
「おい! 君! 怪我は……」
おまわりさんの言葉を後目に俺は再び走り始める。
痛っ!
よく見ると腕を擦りむいていた。
やっぱ長袖にしとけばよかったかな。
俺は足を止め、スマホで時間を確認する。
うん時間はまだ十二分にある。
俺はそこらの公園で傷を洗うと、 隣にあった薬局に入り、絆創膏と消毒液を買った。
「これ試供品ね」
店のおばちゃんが手洗い用のアルコール系消毒剤を付けてくれた。
少しタイムロスになってしまったな。
まあでも走る様な時間ではない、だが、念のため、駆け足で向かうか。
俺は小走りに走り始めた。
◇◇◇◇◇
天気は陽々絶好のデート日和だ。
何もトラブルさえ起きなければ。
ガツン
バックの中から音がする。
やばい大理石像が割れている!?
俺はバックを開けて中を確認する。
そこには麗しの彼女の像と、木彫りの人形。
ルーが俺の姿をかたどって作ったあの人形が入っていた。
なんでこれが……
そう思ったのが油断だった。
前方から来る酒屋の配送軽トラが蛇行運転をしているのに気付くのが遅れた。
軽トラはガードレールに車体の側面を擦り、そして荷台にあったビール瓶の入ったケースがぐらりと揺れ落ちてきた。
咄嗟であれど、父の修練を受けた俺は、この程度軽く捌ける。
そのはずだった、瓶の落下に老婆が巻き込まれていなければ。
俺はおっぱいが好きだ。
そのおっぱいをこの世に誕生させた先人に敬意を払い、感謝するのは当然である。
そして、それは行動で示すべきものだ。
俺は老婆を突き飛ばす。
その時俺が考えていたのは、老婆が転んで怪我をしないか。
それは、今ここにある俺への危機への前では些末なことだった。
視界が暗転した。
◇◇◇◇◇◇
「かみさまが、おられたぞー」
気が付くと俺は石の上に横たわっていた。
隣には革の服を身につけた女性が立っていた。
そしてその隣には、かなり色あせたていたが、俺の石像があった。
だがそれは、細部が丸みを帯び、相当な年月を感じる色合いになっていた。
ここは……ルーの時代から未来なのか!?
そうだ! 木彫り像!
俺はバックから、ルーが作ってくれた木彫り像を取り出す。
「それ! かみさまのしるし! かみさま、ありがとう。きてくれた! あたし、しりー」
それが名前なのであろう、その女性はそう名乗った。
また異世界か、だがここはルーの時より、少々時間が進んでいるらしい。
俺の左手には再び365の文字が浮かび、29から変わらなかった右手には、 625に変わっていた。
「シリー、ルーは知っているか?」
「しりーしってる! るーは、かみさまのさいしょのしもべ!」
「しもべいっぱいいる! るー、ちゃー、どー、むー、たくさん!」
あいつらを下僕にした覚えはないんだが。
まあそういう認識ならいいだろう。
やはり、ここはルーの時代より未来らしい。
石を加工してるところを見ると、あいつら金属とか手に入れてるのかな。
レリーフにはヒントっぽいものを刻んだつもりだが。
俺は赤や青や黄色い石を壺に入れて焼くレリーフを作っておいた。
色は、俺のバッグにある絵具を使った。
「かみさま! しりー、かみさまのくに、みせる! すごい!」
今気づいたのだが、ここは天井がある。
石の天井だ。
だがあの洞窟よりはるかに広い。
照明は松明である。
俺はシリーに導かれるがままに外に出た。
外は見渡す限りの黄金の地であった。
それは大げさだな、黄金の地が点在するそんな土地だった。
黄金の正体は、揺れる麦穂である。
もはや麦とも呼べないそんなもの、実が小さくてこれ多分原種だよなー?
そう思いながらサバンナで採った、麦っぽいものを『これ うめる、ふやす』 と言って教えておいたのが文字通り実を結んだのだ。
あいつやりやがった!
俺はちょっと嬉しくなった。
あのヒントから、農業を興したのだ。
「かみさま! こっち!」
シリーが俺の手を引っ張り村に連れ出す。
「みんな! かみさまきた! あがめる!」
泥の壁と枯れ草の屋根を持った家から、住人がわらわらと出てくる。
おー結構人口増えてるじゃないか。
3桁は軽く超えている。
500行くか行かないかぐらいだろうか。
もぉー! ぶるるるぅふぅー!
家畜と思われる声も聞こえる。
おっ! 牛とラクダじゃないか!
あいつらを見つけたんだな。
これもレリーフに刻んだことだ。
ラクダと牛を家畜にしろと。
ラクダは捕まえたが、牛は捕まえられなかった。
水牛みたいなものを何度か見たが捕まえることができなかったのだ。
そして俺は広場に案内され、その中央にシリーと一緒に座る 。
パンパン、とシリーが手を叩くと、皿に盛られた食べ物が出て来た。
俺の好きなデーツとイチジクの実、そして焼肉とスープ。
デーツは干されて甘味が増していた。
ドーが天日干しにたどり着いたのだ。
そして、乳白色の塊。
これなんだ?
「それ、ちゃー! らくだのちゃー!」
シリーが説明する。
俺はそれを口にする。
ああ、これチーズだ。
そういえばチャーが、動物の胃袋にミルクを入れていたな。
胃袋の中の酵素がミルクをチーズにしたのだ。
うん、えらいぞチャー
食器も芸術的な皿だ。
土器ではあったが、 文様が刻まれ、塗られ、センスのある物となっている。
「これ、しりーのさら! しりーがつくった! かみさまのために!」
ルーから始まった芸術という文化は今ここにも生きている。
ん!?
皿と料理に目を奪われて気づかなかったが、今、皿を持ってきたやつ、獣耳をつけていなかったか!?
よく見ると、顔は人間に近いが、逆三角形の鼻、ピクピクと動く側面ではなく、より頭頂に近い位置にある耳、そして何よりも、毛は短いがブチ模様の皮膚。
「おい! シリー! あれは!?」
俺は獣耳男を指差して尋ねる。
「あ、あれ、ひとのしもべ!」
この文明なら、奴隷制があっても俺は驚かない。
奴隷となるのが人であったならば。
「あれ! すばらしい、むーが、がるーをしもべにしたの!」
あいつやりやがった!
文字通り、ヤリやがった!
あれ? ここって、過去の地球じゃなくって、ファンタジー世界!?
いやいや結論を出すにはまだ早い、もし彼が化石で発見されたならば、動物と人間が一緒に埋葬されていた、という学説になっていてもおかしくない。
「かみさま! しりーたち、うたう! おどる! みて!」
そしてシリーと、何人もの女性が俺たちの前で踊る。
「かみさまー、すごいー、すきー、えらいー、るるるーはおどる、ちゃちゃちゃーはつくる、どどどーはおいしー、ちゃちゃちゃーはおかすー!」
ぶほっ!
俺は水を吹いた。
おい、ちゃー、お前の偉業、未来に伝わっているぞ。
「かみさまー! だいすきー! りそー、おっぱいー! みせるー!」
おっぱいですと!?
俺の視線がシリーたちに集中する。
彼女たちは革の胸当てをしている。
下半身は腰蓑だ。
そして彼女たちは、その胸当てを脱ぎ捨てた。
俺は絶望した!
革製品は固い。
柔らかく加工しても、それは力を込めれば曲げれるというレベルで、決して柔らかくはない。
彼女たちの体格は良くなっている。
現代人に近いレベルだ。
当然胸も成長しているのだろう。
だがその成長の過程で、固い胸当てに抑圧されたとしたら……
彼女達の胸は歪んでいた。
俺は決意した!
こいつらに布の服を授けてやらねばならぬ!
俺の理想はまだ遠い……
ドップラーー効果音を引き連れて救急車のサイレンが近づいてきてるのがわかる。
「おい君大丈夫か!?」
制服姿の警察官が俺に声をかける。
よかった俺は戻ってこれた、現代に戻ってこれたんだ。
俺は自分の姿を見直す。
ちょっと砂に汚れているが、ルーと別れた時のような、酷い服の状態ではない。
バッグもそのままだ。
夢……だったのかな?
「大丈夫です。それよりも少女が巻き込まれたかもしれません」
俺は記憶を思い起こす。
1年前の記憶を。
あの日俺は少女を助けようとして……
「えーん! お母さん!」
声の主は見覚えのある少女だった。
母親と思われる女性に抱きついている。
そして到着した救急車の救急隊員は、トラックの運転手を担架に乗せていた。
運転手は救急隊員と会話ができている所を見ると、重篤な事態に陥ってなさそうだ。
そうだ! デートの待ち合わせ!
「急いでるので失礼します!」
「おい! 君! 怪我は……」
おまわりさんの言葉を後目に俺は再び走り始める。
痛っ!
よく見ると腕を擦りむいていた。
やっぱ長袖にしとけばよかったかな。
俺は足を止め、スマホで時間を確認する。
うん時間はまだ十二分にある。
俺はそこらの公園で傷を洗うと、 隣にあった薬局に入り、絆創膏と消毒液を買った。
「これ試供品ね」
店のおばちゃんが手洗い用のアルコール系消毒剤を付けてくれた。
少しタイムロスになってしまったな。
まあでも走る様な時間ではない、だが、念のため、駆け足で向かうか。
俺は小走りに走り始めた。
◇◇◇◇◇
天気は陽々絶好のデート日和だ。
何もトラブルさえ起きなければ。
ガツン
バックの中から音がする。
やばい大理石像が割れている!?
俺はバックを開けて中を確認する。
そこには麗しの彼女の像と、木彫りの人形。
ルーが俺の姿をかたどって作ったあの人形が入っていた。
なんでこれが……
そう思ったのが油断だった。
前方から来る酒屋の配送軽トラが蛇行運転をしているのに気付くのが遅れた。
軽トラはガードレールに車体の側面を擦り、そして荷台にあったビール瓶の入ったケースがぐらりと揺れ落ちてきた。
咄嗟であれど、父の修練を受けた俺は、この程度軽く捌ける。
そのはずだった、瓶の落下に老婆が巻き込まれていなければ。
俺はおっぱいが好きだ。
そのおっぱいをこの世に誕生させた先人に敬意を払い、感謝するのは当然である。
そして、それは行動で示すべきものだ。
俺は老婆を突き飛ばす。
その時俺が考えていたのは、老婆が転んで怪我をしないか。
それは、今ここにある俺への危機への前では些末なことだった。
視界が暗転した。
◇◇◇◇◇◇
「かみさまが、おられたぞー」
気が付くと俺は石の上に横たわっていた。
隣には革の服を身につけた女性が立っていた。
そしてその隣には、かなり色あせたていたが、俺の石像があった。
だがそれは、細部が丸みを帯び、相当な年月を感じる色合いになっていた。
ここは……ルーの時代から未来なのか!?
そうだ! 木彫り像!
俺はバックから、ルーが作ってくれた木彫り像を取り出す。
「それ! かみさまのしるし! かみさま、ありがとう。きてくれた! あたし、しりー」
それが名前なのであろう、その女性はそう名乗った。
また異世界か、だがここはルーの時より、少々時間が進んでいるらしい。
俺の左手には再び365の文字が浮かび、29から変わらなかった右手には、 625に変わっていた。
「シリー、ルーは知っているか?」
「しりーしってる! るーは、かみさまのさいしょのしもべ!」
「しもべいっぱいいる! るー、ちゃー、どー、むー、たくさん!」
あいつらを下僕にした覚えはないんだが。
まあそういう認識ならいいだろう。
やはり、ここはルーの時代より未来らしい。
石を加工してるところを見ると、あいつら金属とか手に入れてるのかな。
レリーフにはヒントっぽいものを刻んだつもりだが。
俺は赤や青や黄色い石を壺に入れて焼くレリーフを作っておいた。
色は、俺のバッグにある絵具を使った。
「かみさま! しりー、かみさまのくに、みせる! すごい!」
今気づいたのだが、ここは天井がある。
石の天井だ。
だがあの洞窟よりはるかに広い。
照明は松明である。
俺はシリーに導かれるがままに外に出た。
外は見渡す限りの黄金の地であった。
それは大げさだな、黄金の地が点在するそんな土地だった。
黄金の正体は、揺れる麦穂である。
もはや麦とも呼べないそんなもの、実が小さくてこれ多分原種だよなー?
そう思いながらサバンナで採った、麦っぽいものを『これ うめる、ふやす』 と言って教えておいたのが文字通り実を結んだのだ。
あいつやりやがった!
俺はちょっと嬉しくなった。
あのヒントから、農業を興したのだ。
「かみさま! こっち!」
シリーが俺の手を引っ張り村に連れ出す。
「みんな! かみさまきた! あがめる!」
泥の壁と枯れ草の屋根を持った家から、住人がわらわらと出てくる。
おー結構人口増えてるじゃないか。
3桁は軽く超えている。
500行くか行かないかぐらいだろうか。
もぉー! ぶるるるぅふぅー!
家畜と思われる声も聞こえる。
おっ! 牛とラクダじゃないか!
あいつらを見つけたんだな。
これもレリーフに刻んだことだ。
ラクダと牛を家畜にしろと。
ラクダは捕まえたが、牛は捕まえられなかった。
水牛みたいなものを何度か見たが捕まえることができなかったのだ。
そして俺は広場に案内され、その中央にシリーと一緒に座る 。
パンパン、とシリーが手を叩くと、皿に盛られた食べ物が出て来た。
俺の好きなデーツとイチジクの実、そして焼肉とスープ。
デーツは干されて甘味が増していた。
ドーが天日干しにたどり着いたのだ。
そして、乳白色の塊。
これなんだ?
「それ、ちゃー! らくだのちゃー!」
シリーが説明する。
俺はそれを口にする。
ああ、これチーズだ。
そういえばチャーが、動物の胃袋にミルクを入れていたな。
胃袋の中の酵素がミルクをチーズにしたのだ。
うん、えらいぞチャー
食器も芸術的な皿だ。
土器ではあったが、 文様が刻まれ、塗られ、センスのある物となっている。
「これ、しりーのさら! しりーがつくった! かみさまのために!」
ルーから始まった芸術という文化は今ここにも生きている。
ん!?
皿と料理に目を奪われて気づかなかったが、今、皿を持ってきたやつ、獣耳をつけていなかったか!?
よく見ると、顔は人間に近いが、逆三角形の鼻、ピクピクと動く側面ではなく、より頭頂に近い位置にある耳、そして何よりも、毛は短いがブチ模様の皮膚。
「おい! シリー! あれは!?」
俺は獣耳男を指差して尋ねる。
「あ、あれ、ひとのしもべ!」
この文明なら、奴隷制があっても俺は驚かない。
奴隷となるのが人であったならば。
「あれ! すばらしい、むーが、がるーをしもべにしたの!」
あいつやりやがった!
文字通り、ヤリやがった!
あれ? ここって、過去の地球じゃなくって、ファンタジー世界!?
いやいや結論を出すにはまだ早い、もし彼が化石で発見されたならば、動物と人間が一緒に埋葬されていた、という学説になっていてもおかしくない。
「かみさま! しりーたち、うたう! おどる! みて!」
そしてシリーと、何人もの女性が俺たちの前で踊る。
「かみさまー、すごいー、すきー、えらいー、るるるーはおどる、ちゃちゃちゃーはつくる、どどどーはおいしー、ちゃちゃちゃーはおかすー!」
ぶほっ!
俺は水を吹いた。
おい、ちゃー、お前の偉業、未来に伝わっているぞ。
「かみさまー! だいすきー! りそー、おっぱいー! みせるー!」
おっぱいですと!?
俺の視線がシリーたちに集中する。
彼女たちは革の胸当てをしている。
下半身は腰蓑だ。
そして彼女たちは、その胸当てを脱ぎ捨てた。
俺は絶望した!
革製品は固い。
柔らかく加工しても、それは力を込めれば曲げれるというレベルで、決して柔らかくはない。
彼女たちの体格は良くなっている。
現代人に近いレベルだ。
当然胸も成長しているのだろう。
だがその成長の過程で、固い胸当てに抑圧されたとしたら……
彼女達の胸は歪んでいた。
俺は決意した!
こいつらに布の服を授けてやらねばならぬ!
俺の理想はまだ遠い……
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