異世界人類を現代知識チートで導け!

相田 彩太

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第二章 再び遠き理想郷

その3 やっぱり、ここは……宴会!

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 ピタン、ピチョン

 「ひと、なぜきた。ここ、ぎょーのなわばり」

 おい、この魚しゃべったぞ。
 
 「かみさま、ここは、ぎょーのなわばり。ちかづく、だめ、あぶない」

 シリーが俺に言う。
 だが、言葉が通じるという事は、交渉が可能だということだ。 

 「すまないが、ここに水路を作らせてもらえないか?」
 「すいろ、しらない。でも、だめ、ここ、なわばり」

 あいかわらず、語彙が少ない!
 概念そのものがないんだ。

 「かえらないなら、かる」

 そう言って魚人は、骨でできた槍を構える。 
 くっ、戦うしかないのか!
 ピチョン、ビシャンと魚人はゆっくりと細い脚で歩みを進める。
 
 こんな時、冒険者の取るべき行動はひとつである。
 そう、ドロップキックしかない。

 どがしっ!

 びちゃ……ぴちぴちぴち

 魚人は転んで地面をピチピチし始めた。
 あーこいつら、水中適応してるので、陸上を十分に歩ける脚が発達していないんだ。
 プールから上がると急に体重が重くなった感じするよね。
 これなら制圧は簡単かも!

 「かみさま! よけて!」

 あぶなかった。
 気付くのが遅れていたら、下手すると死んでいた。
 水中から、骨でできた釣り針が俺に向かって飛んで来ていたのだった。
 
 「うわっ! あぶなっ!」

 俺はバックステップで下がり、この釣り針から逃れた。
 釣り針を投げたのは、水面から顔だけを出している魚だった。
 いや顔だけじゃない、両手を出していた。
 こいつら釣り竿みたいなやつ持ってる!
 
 「はぁ、はぁ、たすかった! ともだち! ありがとう!」

 転んだ奴は、釣り針に捕まり、川へとと引きずり込まれていった。
 危なかった、水中に引きずり込まれていたら、俺はやられていただろう。

 「かみさま! ここ、あぶない、かえろう」

 しょうがないので、シリーの言う通り今日は帰るとしよう。

◇◇◇◇◇

 俺は広くなった洞窟、いや神殿と名付けよう、神殿で寝ころんでいた。
 シリーたちは、踊ったり歌ったりしているが、変わり映えしない。
 バリエーションも少ないよね。
 文化を発展させるには、やはり想像力を掻き立てる何かが必要なんだろうか。
 そう思いながら俺はデーツを口にする。
 フレッシュなやつだ。
 
 ん!?

 こいつ少し傷んでいる?
 俺はそいつがいつもとは違う匂いを発しているのに気付いた。
 いや、腐っていってるんじゃない、発酵しているんだ!
 そうだ! 酒を作ろう!

 「かみさま? どうかしたの?」

 ふふふ、こいつらをどうにかしてやろう。
 酒に酔えば新しい神様を見つけれるかもしれんぞ。

 今ここにある材料でできる酒造りには2パターンある。
 ひとつはヤシ酒、ナツメヤシの 若い花軸を切って出る樹液を集めて発酵させるパターン。
 ふたつめは、大麦の麦汁に酵母を入れて作るビールパターンだ。
 麦畑を確認したら、小麦だけでなく、大麦も栽培されていた。
 よし両方やってみよう。 
 なぜ俺が酒の作り方を知ってるかって?
 二姉にいねぇが『男なら、酒に強くなくってはならない』とかいって、 酒に関する薀蓄うんちくを仕込んでくれたからだ。

 丁度、そろそろ雨季の時期が近づいてきていて、 狩りに出る機会も減る。
 それまでに俺は壺と粘土を大量に用意させた。
 神殿の前に、小屋を建てさせ、火を使う調理はそこで行わせるようにする。 
 保存や発酵は神殿の中で行うことにしよう。

 ヤシ酒は簡単だった。
 樹液をそのままツボに入れておけば完成した。
 というか、発酵が早すぎて、数時間で酒になるよ! 
 そして、腐るの早いよ!
 たまに雑菌が入り腐るものもあった。

 酒の効果は絶大だった。
 酔った村の人々は、乱痴気騒ぎを起こし、新しい踊りと歌が生まれた。

 「かみさま、しりー、おーしりー、だいすきー、しりりー、さけー」

 俺はおっぱいは大好きだが、尻はそうでもない。
 だが、尻をフリフリさせるダンスには芸術を感じた。
 
 しりーたちに釘を刺しておかねばならないことがある。
 ナツメヤシの実は、シリー達の主食であり保存食でもある。
 花軸に傷をつけると、当然だが実が出来ない。
 作りすぎは禁物だ。 

 「しりー、おさけは、神に捧げる大切な物! 作りすぎたり、飲みすぎたり、だめ! ぜったい!」
 「しりー、わかった! おさけ、おいしー、だけど、ありがとうのおまつり、だけ!」

 俺はシリーと村人に言い聞かせた。
 これでも、きっとこっそり、作ったり飲んだりするやつが出るんだろうなー。
 でも、決まりを破ることがあれば、それを守るための法律や、警察が生まれる。
 それも文明だろう。

 さて手間がかかるのはビールの方である。
 では、なぜ、ビールを作るのかって?
 理由は簡単だ、こっちの方が大量生産可能だからだ。
 さて、まずはパンの文化から授けなければいけない。
 こいつらには、麦を煮たオートミールのような粥は既にある。
 これをパンにするのは簡単だ、脱穀した小麦を石臼で粉にして、水で練って焼けばいい。
 焼くのは平べったい石の上で焼けば良いのだ。
 最初にできたのはクッキーのようなものだった。

 「うまい! かみさま! すごい!」
 「すごい! すごい!」

 さて次は発酵させたものだ。
 これもすごく簡単だ。
 水で練ったものを放置する。
 一晩もすれば膨らんでくるのでそれを焼けばいい。
 たまに膨らまないものもある。
 これは狙いとは違う菌が繁殖しているのだ。 
 これにはかまが必要だ。
 なので俺は、シリーに命じて、粘土でレンガを作らせた。
 天日で乾燥させただけのものだ。
 窯が出来たら焼きレンガも作ろう。

 さて、レンガをくっつけるにはモルタルが要る。
 材料は水と砂と消石灰、別名水酸化カルシウム。
 これを混ぜればいいのだが、消石灰なんて……あった!

 「なあ、シリー! マイマイの殻はまとめてどこに捨てている?」
 「まいまい! うまいまい! まとめて、あそこー」

 シリーが俺を村の一角に案内する。

 「ここ、すてるとこ」

 そこには、俺の予想通りの物が、いや、予想以上の物があった。
 現代日本でも縄文時代の遺跡として発掘される物。
 長年の飲食で消費された、人類最初のゴミ捨て場、貝塚だ。
 しかも、大量にある!

 「いいぞ、シリー! 俺がこの貝殻を素晴らしい物に変えてやる!」
 「それ、まいまいより、うまいまいか!?」
 「ああ、美味いぞ!」

 貝殻の主成分である炭酸カルシウムは高温の窯で熱すると、酸化カルシウムになる。

 「かみさま、それなーに?」
 「これか?」

 俺はそれを水に入れる。
 
 ぼこぼこぼこっ

 水が一瞬で沸騰した。

 「すごーい、ぼこぼこしてる」

 この正体は生石灰せいせっかいという物で、水を加えると発熱して、消石灰になるのだ。
 生石灰、シューマイを温める弁当に入っている物だな。
 最初は一枚岩を組み合わせて作った窯でいい、一度、消石灰からモルタルを作れば、レンガ製の窯が出来る。
 パン焼き窯の完成だ!

 窯が完成して、初めて柔らかいパンを食べた時のあいつらの表情は忘れられない。
 味はちょっと酸っぱい。
 小麦を水で練ったパン種を放っておくと膨らんでくる。
 狙い通り酵母菌と乳酸菌が発酵してるのだ。
 よく膨らんだパン種は、一つ残しておいて、次のパン種に混ぜる。
 こうしておけば、狙いの菌が最初に入るので失敗の確率が減る。
 
 「もふー、もふー、あますーあつつ、もふー」

 あいつらは喜びのダンスを創った。

 俺は生石灰せいせっかいについて、もうひとつ効果を教えておいた。
 死体から発生する疫病の防止だ。

 「なあ、シリー」
 「はい、かみさま!」
 「このぼこぼこする粉は、悪いものを倒すんだ」
 「わるいもの?」
 「そう、だから死んだ人や動物のお墓に一緒に入れるといい。生きているのにはダメだぞ」
 「しりー、わかった!」

 ◇◇◇◇◇

 雨季がきた。
 雨季といっても、日本の梅雨のような長雨ではない。
 スコールのような激しい雨が、1日に1回か2回、小1時間ほど降るのだ。
 さあビール作りをしよう。 

 ビール作りの基となるのは、麦汁とアルコール発酵を起こす酵母菌だ。
 麦汁は水をかけて発芽した大麦を粉にして煮る。
 煮過ぎるといけないので、火加減には注意した。
 それをザルでこした汁が麦汁だ。
 ちなみにそこらの植物からザルは作ってやった。
 真の芸術家は竹細工もできるのである。
 竹はないけど。

 さて酵母だ。
 これが問題だ。
 作り方は比較的簡単である。
 まず、 ドライデーツを水に浸し、それを絞ってジュースにする。
 目の細かいザルを作るのが面倒くさかった。
 やっぱり布が欲しい。
 それをほっておけば、元から付いていた酵母により、アルコールの匂いがし始める。
 生焼けのパンを 水で練ってドロドロにし、デーツジュースと混ぜて蓋をする。
 アルコールの匂いが強くなってくれば成功だ。

 いっぱい失敗しました。

 だが一度成功すれば、菌の元種が出来るのでそれを増やすのは比較的簡単だ。 
 さあ酵母と麦汁を混ぜよう!
 混ぜたものに蓋をして3~4日でもう飲める!
 うわー、こんなに簡単に出来るんだ。
 十分な人手でさえあれば大量生産が可能である。

 「にがー、にがー」

 この味にはシリーたちは最初は難色を示した。
 だが一週間後……

 「ねぇ、かみさま、おまつり、しよっ!」

 おねだりをしてくるまでになった。
 アルコールの魔力すげー。
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