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第三章 ここは彼方の理想郷
その6 これは! ひょっとして!
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「ここが、すごい布の家です!」
確かにすごかった。
入口は10m以上はある布で覆われ、中からは機織り機の音が聞こえてくる。
「ようこそいらっしゃいました。ここは、このヤーがご案内いたします」
信仰の厚いヤーが家から出てくる。
「見事なものだ。入口の布はここで作ったのか?」
「はい、神様の残した、はたおりきを改良して作りました」
俺が残したのは縦糸を交互に入れ替える機織り機だ。
横糸は杼という糸が巻かれた舟形の道具で左右に糸を渡す。
これには欠点があって、手が届かない幅だと横糸を通すのに非常に手間が掛かる。
助手が必要になるのだ。
歴史上は飛び杼という車輪のついた杼が登場して、初めてひとりで出来るようになり、幅の広い布でも織る事が出来るようになるのだ。
一応、ヒントっぽいのは残したつもりだが、さてどうなったかな?
「では、ご覧ください」
俺は中を覗き込む。
大型の機織り機がガッタンガッタンと音を立てる。
ひとつの織機には3人で操作している。
あー、飛び杼は発明できなかったか。
あれ、あいつら弓を持ってね?
右の男が弓を構え、放つ。
ヒューン
そして左の男が飛んで来た矢をキャッチする。
その矢には糸が巻かれ、杼となっていた。
「ナイス杼ー」
そして、中央の男がガッチャンと横糸を布の下に押し付け、縦糸の上下を入れ替える。
そして、今度は左の男が弓を構え、右の男へ放つ。
そしてナイスキャッチ!
こいつら、力押しとマンパワーで解決しやがった!
「いかがです、神様。あなたの残した『飛び杼』という言葉から、私が編みだした方法です。これで幅が広い布が作れます。同じ時間で、通常の3倍の横幅の布を織る事が可能となったのです! これはおっぱいがない男の職ぎょ……」
「本当に飛ばすやつがいるかー!」
後日、本物の飛び杼を教えてやった。
◇◇◇◇◇
次に俺はすごい石の家に向かう。
「神様、初めまして、わたくしは、すごい石の家の長のメ―です。神様に各地から集めた、色々な石をご紹介しましょう」
「いや、まずは卵の腐った匂いを出す黄色い石が見たい」
「あ、はい『くさいくさい石』ですね。こちらになります」
硫黄はあっさりあった。
しかし、ネーミングが悪いな。
「これは見事だ。しかし『くさいくさい石』では意味が分かりにくい。俺が命名してやろう。他の石もだ」
「はい! 言葉を授けて下さるのですね。言い伝えの通りです」
俺が言葉を授けたということはこの時代まで伝わっているのか。
一体どれぐらい前なんだろう。
「メー、 シリーやルーはいったいどれくらい前のご先祖なんだい?」
「シリー様はずっと昔、ルー様はずっとずっと昔です」
へ!?
そういえば! 俺は年の概念を教えていなかった!
「そ、そうか、これから俺が昔の数え方を教えてやろう。暦を作るのに役立つぞ」
「はい! ありがとうございます!」
俺は365日を1年と数える事を教えた。
だが、 俺には疑問が残る。
俺は今までの2回の転移で星を観察した。
だが夜空には、俺の知る星座や火星や金星が見えなかったのだ。
月はあるのに。
ここが万年以上前の太古の地球ならば、星座の位置が変わっていてもおかしくない。
だが、惑星が見えないのは、明らかにおかしい。
やはりファンタジー世界と考えるのが妥当なのだが、獣人や魚人、トカゲ人を除けば、生態系も細菌類も地球と同じな理由がわからない。
うーん、わからん!
「 神様、これが『くさいくさい石』です。燃やすとくさいくさいになります」
メーが示したのは黄色い結晶だ。
間違いない、硫黄だ。
「これは『硫黄』だ。漢字ではこう書く」
俺はそこにあった粘土板に刻む。
うーん、以前から感じていたのだが、粘土板へ漢字を書くのは手間がかかる。
やはり紙が必要だな。
あとは、アルファベットも教える必要がある。
できれば、元素記号と周期表も教えておきたい。
「さすがです! 神様! 『くさいくさい石』に真名を授けになられたのですね!」
同行しているモモ―が口を開いた。
真名と言われるとファンタジーっぽいな。
「よし、他にも真名を授けちゃうぞー」
俺はちょっと調子に乗った。
「これは燃える石です」
「『石炭だな』」
「これは『火つけ石』です、叩くと小さい火が出ます」
「『黄鉄鉱』、鉄と硫黄の化合物だな」
「かごうぶつ?」
あー、化合物の概念がない。
それ以前に元素の概念もないな。
一から教えるのはちょっと手間が掛かりそうだ。
「鉄と硫黄が合体したものと覚えるがいい。詳しくは後日説明しよう」
「「はい!」」
それよりも、ここにどんな原料があるかが重要だ。
「これは偽金、銅の材料になります。『神様石』の粉と『キラキラ砂』と混ぜて焼くと銅になります」
「『黄銅鉱』だな。銅と鉄と硫黄の化合物だ」
青銅の作り方は教えていたが、純銅の精錬にも成功していたのか。
思ったより文明は進んでいるな。
『神様石』とは大理石の事だ、炭酸カルシウムだな。
俺のバッグの中にある女神像と同じだ。
うん、その心意気やよし! 大理石の名前は『神様石』のままにしよう。
『キラキラ砂』は、俺の予想が当たっていれば……
「これが『キラキラ砂』です『神様石』の粉と灰とで焼くとキラキラの塊になります」
やっぱガラスの原料じゃないですかー!
『キラキラ砂』は二酸化ケイ素の砂だ。
しかし、彼女たちのネーミングセンスは俺の心の琴線に触れる。
命名、やめよっかなー。
「これが『ぶりぶり石』です。粉を飲むと、うんちがぶりぶり出ます」
前言撤回、ちゃんと名称を教えよう。
しかし、下剤になる石か、炭酸マグネシウムかな?
うん、この白っぽい石は……あれ?
「おい、この石、ふたつの地域から採れないか?」
「はい、違う場所です」
「かたっぽは水に溶けて、もう一方は水に溶けなかったりしない?」
モモ―とメーは顔を見合わせる。
「さすがです! 神様!」
「すごいです! 神様! 見ただけで分かるなんて!」
「おっしゃる通り、片方は水に溶けます!」
「そうか、溶けるやつと溶けないやつで別けておけ」
「「ははー!」」
溶けないのは俺の予想通り炭酸マグネシウム。
溶けるのは硝酸カリウム、別名 ”硝石” だ。
確かにすごかった。
入口は10m以上はある布で覆われ、中からは機織り機の音が聞こえてくる。
「ようこそいらっしゃいました。ここは、このヤーがご案内いたします」
信仰の厚いヤーが家から出てくる。
「見事なものだ。入口の布はここで作ったのか?」
「はい、神様の残した、はたおりきを改良して作りました」
俺が残したのは縦糸を交互に入れ替える機織り機だ。
横糸は杼という糸が巻かれた舟形の道具で左右に糸を渡す。
これには欠点があって、手が届かない幅だと横糸を通すのに非常に手間が掛かる。
助手が必要になるのだ。
歴史上は飛び杼という車輪のついた杼が登場して、初めてひとりで出来るようになり、幅の広い布でも織る事が出来るようになるのだ。
一応、ヒントっぽいのは残したつもりだが、さてどうなったかな?
「では、ご覧ください」
俺は中を覗き込む。
大型の機織り機がガッタンガッタンと音を立てる。
ひとつの織機には3人で操作している。
あー、飛び杼は発明できなかったか。
あれ、あいつら弓を持ってね?
右の男が弓を構え、放つ。
ヒューン
そして左の男が飛んで来た矢をキャッチする。
その矢には糸が巻かれ、杼となっていた。
「ナイス杼ー」
そして、中央の男がガッチャンと横糸を布の下に押し付け、縦糸の上下を入れ替える。
そして、今度は左の男が弓を構え、右の男へ放つ。
そしてナイスキャッチ!
こいつら、力押しとマンパワーで解決しやがった!
「いかがです、神様。あなたの残した『飛び杼』という言葉から、私が編みだした方法です。これで幅が広い布が作れます。同じ時間で、通常の3倍の横幅の布を織る事が可能となったのです! これはおっぱいがない男の職ぎょ……」
「本当に飛ばすやつがいるかー!」
後日、本物の飛び杼を教えてやった。
◇◇◇◇◇
次に俺はすごい石の家に向かう。
「神様、初めまして、わたくしは、すごい石の家の長のメ―です。神様に各地から集めた、色々な石をご紹介しましょう」
「いや、まずは卵の腐った匂いを出す黄色い石が見たい」
「あ、はい『くさいくさい石』ですね。こちらになります」
硫黄はあっさりあった。
しかし、ネーミングが悪いな。
「これは見事だ。しかし『くさいくさい石』では意味が分かりにくい。俺が命名してやろう。他の石もだ」
「はい! 言葉を授けて下さるのですね。言い伝えの通りです」
俺が言葉を授けたということはこの時代まで伝わっているのか。
一体どれぐらい前なんだろう。
「メー、 シリーやルーはいったいどれくらい前のご先祖なんだい?」
「シリー様はずっと昔、ルー様はずっとずっと昔です」
へ!?
そういえば! 俺は年の概念を教えていなかった!
「そ、そうか、これから俺が昔の数え方を教えてやろう。暦を作るのに役立つぞ」
「はい! ありがとうございます!」
俺は365日を1年と数える事を教えた。
だが、 俺には疑問が残る。
俺は今までの2回の転移で星を観察した。
だが夜空には、俺の知る星座や火星や金星が見えなかったのだ。
月はあるのに。
ここが万年以上前の太古の地球ならば、星座の位置が変わっていてもおかしくない。
だが、惑星が見えないのは、明らかにおかしい。
やはりファンタジー世界と考えるのが妥当なのだが、獣人や魚人、トカゲ人を除けば、生態系も細菌類も地球と同じな理由がわからない。
うーん、わからん!
「 神様、これが『くさいくさい石』です。燃やすとくさいくさいになります」
メーが示したのは黄色い結晶だ。
間違いない、硫黄だ。
「これは『硫黄』だ。漢字ではこう書く」
俺はそこにあった粘土板に刻む。
うーん、以前から感じていたのだが、粘土板へ漢字を書くのは手間がかかる。
やはり紙が必要だな。
あとは、アルファベットも教える必要がある。
できれば、元素記号と周期表も教えておきたい。
「さすがです! 神様! 『くさいくさい石』に真名を授けになられたのですね!」
同行しているモモ―が口を開いた。
真名と言われるとファンタジーっぽいな。
「よし、他にも真名を授けちゃうぞー」
俺はちょっと調子に乗った。
「これは燃える石です」
「『石炭だな』」
「これは『火つけ石』です、叩くと小さい火が出ます」
「『黄鉄鉱』、鉄と硫黄の化合物だな」
「かごうぶつ?」
あー、化合物の概念がない。
それ以前に元素の概念もないな。
一から教えるのはちょっと手間が掛かりそうだ。
「鉄と硫黄が合体したものと覚えるがいい。詳しくは後日説明しよう」
「「はい!」」
それよりも、ここにどんな原料があるかが重要だ。
「これは偽金、銅の材料になります。『神様石』の粉と『キラキラ砂』と混ぜて焼くと銅になります」
「『黄銅鉱』だな。銅と鉄と硫黄の化合物だ」
青銅の作り方は教えていたが、純銅の精錬にも成功していたのか。
思ったより文明は進んでいるな。
『神様石』とは大理石の事だ、炭酸カルシウムだな。
俺のバッグの中にある女神像と同じだ。
うん、その心意気やよし! 大理石の名前は『神様石』のままにしよう。
『キラキラ砂』は、俺の予想が当たっていれば……
「これが『キラキラ砂』です『神様石』の粉と灰とで焼くとキラキラの塊になります」
やっぱガラスの原料じゃないですかー!
『キラキラ砂』は二酸化ケイ素の砂だ。
しかし、彼女たちのネーミングセンスは俺の心の琴線に触れる。
命名、やめよっかなー。
「これが『ぶりぶり石』です。粉を飲むと、うんちがぶりぶり出ます」
前言撤回、ちゃんと名称を教えよう。
しかし、下剤になる石か、炭酸マグネシウムかな?
うん、この白っぽい石は……あれ?
「おい、この石、ふたつの地域から採れないか?」
「はい、違う場所です」
「かたっぽは水に溶けて、もう一方は水に溶けなかったりしない?」
モモ―とメーは顔を見合わせる。
「さすがです! 神様!」
「すごいです! 神様! 見ただけで分かるなんて!」
「おっしゃる通り、片方は水に溶けます!」
「そうか、溶けるやつと溶けないやつで別けておけ」
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