異世界人類を現代知識チートで導け!

相田 彩太

文字の大きさ
19 / 54
第三章 ここは彼方の理想郷

その6 これは! ひょっとして!

しおりを挟む
 「ここが、すごい布の家です!」
 
 確かにすごかった。
 入口は10m以上はある布で覆われ、中からは機織り機の音が聞こえてくる。
 
 「ようこそいらっしゃいました。ここは、このヤーがご案内いたします」
 
  信仰の厚いヤーが家から出てくる。

 「見事なものだ。入口の布はここで作ったのか?」
 「はい、神様の残した、はたおりきを改良して作りました」

 俺が残したのは縦糸を交互に入れ替える機織り機だ。
 横糸はという糸が巻かれた舟形の道具で左右に糸を渡す。
 これには欠点があって、手が届かない幅だと横糸を通すのに非常に手間が掛かる。
 助手が必要になるのだ。
 歴史上は飛びという車輪のついた杼が登場して、初めてひとりで出来るようになり、幅の広い布でも織る事が出来るようになるのだ。
 一応、ヒントっぽいのは残したつもりだが、さてどうなったかな?
 
 「では、ご覧ください」

 俺は中を覗き込む。
 大型の機織り機がガッタンガッタンと音を立てる。
 ひとつの織機には3人で操作している。
 あー、飛び杼は発明できなかったか。
 あれ、あいつら弓を持ってね?
 右の男が弓を構え、放つ。 

 ヒューン

 そして左の男が飛んで来た矢をキャッチする。
 その矢には糸が巻かれ、杼となっていた。 

 「ナイスー」

 そして、中央の男がガッチャンと横糸を布の下に押し付け、縦糸の上下を入れ替える。

 そして、今度は左の男が弓を構え、右の男へ放つ。
 そしてナイスキャッチ!
 こいつら、力押しとマンパワーで解決しやがった!

 「いかがです、神様。あなたの残した『飛び杼』という言葉から、私が編みだした方法です。これで幅が広い布が作れます。同じ時間で、通常の3倍の横幅の布を織る事が可能となったのです! これはおっぱいがない男の職ぎょ……」
 「本当に飛ばすやつがいるかー!」

 後日、本物の飛び杼を教えてやった。

◇◇◇◇◇

 次に俺はすごい石の家に向かう。

 「神様、初めまして、わたくしは、すごい石の家のおさのメ―です。神様に各地から集めた、色々な石をご紹介しましょう」
 「いや、まずは卵の腐った匂いを出す黄色い石が見たい」
 「あ、はい『くさいくさい石』ですね。こちらになります」

 硫黄はあっさりあった。
 しかし、ネーミングが悪いな。

 「これは見事だ。しかし『くさいくさい石』では意味が分かりにくい。俺が命名してやろう。他の石もだ」
 「はい! 言葉を授けて下さるのですね。言い伝えの通りです」

 俺が言葉を授けたということはこの時代まで伝わっているのか。
 一体どれぐらい前なんだろう。

 「メー、 シリーやルーはいったいどれくらい前のご先祖なんだい?」
 「シリー様はずっと昔、ルー様はずっとずっと昔です」

 へ!?
 そういえば! 俺は年の概念を教えていなかった!

 「そ、そうか、これから俺が昔の数え方を教えてやろう。暦を作るのに役立つぞ」
 「はい! ありがとうございます!」

 俺は365日を1年と数える事を教えた。
 だが、 俺には疑問が残る。
 俺は今までの2回の転移で星を観察した。
 だが夜空には、俺の知る星座や火星や金星が見えなかったのだ。
 月はあるのに。
 ここが万年以上前の太古の地球ならば、星座の位置が変わっていてもおかしくない。
 だが、惑星が見えないのは、明らかにおかしい。
 やはりファンタジー世界と考えるのが妥当なのだが、獣人や魚人、トカゲ人を除けば、生態系も細菌類も地球と同じな理由がわからない。
 うーん、わからん!

 「 神様、これが『くさいくさい石』です。燃やすとくさいくさいになります」
 
 メーが示したのは黄色い結晶だ。
 間違いない、硫黄だ。

 「これは『硫黄』だ。漢字ではこう書く」

 俺はそこにあった粘土板に刻む。
 うーん、以前から感じていたのだが、粘土板へ漢字を書くのは手間がかかる。
 やはり紙が必要だな。
 あとは、アルファベットも教える必要がある。
 できれば、元素記号と周期表も教えておきたい。

 「さすがです! 神様! 『くさいくさい石』に真名まなを授けになられたのですね!」

 同行しているモモ―が口を開いた。
 真名まなと言われるとファンタジーっぽいな。

 「よし、他にも真名まなを授けちゃうぞー」

 俺はちょっと調子に乗った。

 「これは燃える石です」
 「『石炭だな』」
 「これは『火つけ石』です、叩くと小さい火が出ます」
 「『黄鉄鉱』、鉄と硫黄の化合物だな」
 「かごうぶつ?」

 あー、化合物の概念がない。
 それ以前に元素の概念もないな。
 一から教えるのはちょっと手間が掛かりそうだ。

 「鉄と硫黄が合体したものと覚えるがいい。詳しくは後日説明しよう」
 「「はい!」」

 それよりも、ここにどんな原料があるかが重要だ。
 
 「これは偽金、銅の材料になります。『神様石』の粉と『キラキラ砂』と混ぜて焼くと銅になります」
 「『黄銅鉱』だな。銅と鉄と硫黄の化合物だ」
 
 青銅の作り方は教えていたが、純銅の精錬にも成功していたのか。
 思ったより文明は進んでいるな。
 『神様石』とは大理石の事だ、炭酸カルシウムだな。
 俺のバッグの中にある女神像と同じだ。
 うん、その心意気やよし! 大理石の名前は『神様石』のままにしよう。
 『キラキラ砂』は、俺の予想が当たっていれば……

 「これが『キラキラ砂』です『神様石』の粉と灰とで焼くとキラキラの塊になります」

 やっぱガラスの原料じゃないですかー!
 『キラキラ砂』は二酸化ケイ素の砂だ。
 しかし、彼女たちのネーミングセンスは俺の心の琴線に触れる。
 命名、やめよっかなー。

 「これが『ぶりぶり石』です。粉を飲むと、うんちがぶりぶり出ます」

 前言撤回、ちゃんと名称を教えよう。
 
 しかし、下剤になる石か、炭酸マグネシウムかな?
 うん、この白っぽい石は……あれ?

 「おい、この石、ふたつの地域から採れないか?」
 「はい、違う場所です」
 「かたっぽは水に溶けて、もう一方は水に溶けなかったりしない?」
 
 モモ―とメーは顔を見合わせる。

 「さすがです! 神様!」
 「すごいです! 神様! 見ただけで分かるなんて!」
 「おっしゃる通り、片方は水に溶けます!」
 「そうか、溶けるやつと溶けないやつで別けておけ」
 「「ははー!」」

 溶けないのは俺の予想通り炭酸マグネシウム。
 溶けるのは硝酸カリウム、別名 ”硝石” だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...