異世界人類を現代知識チートで導け!

相田 彩太

文字の大きさ
25 / 54
第三章 ここは彼方の理想郷

その12 これは! やっぱり、愛だな!

しおりを挟む
 だから、そんな目で俺を見ないでくれ。
 俺が町の端から神殿までを歩く間、住人たちは俺を怯えた目で見ていた。
 あの、立ち上る噴煙、衝撃的な音、そして、一瞬でバラバラになったトカゲ人の死体。
 俺よりも早く、噂は町中に広がっていた。
 運悪く、トカゲ人の生首をナイスキャッチしてしまった兵士が、その出来事を吹聴したのだ。
 そして、神殿に帰っても、モモ―、ヤー、メーが俺を見る目には少し畏敬の念がこもっていた。

 「メー、よく、この短期間で燃える布の生産を成し遂げてくれた。礼を言う」
 「は! はい! ありがとうございます!」
 「モモ―、よく兵士を統率し、勇気を持って、俺に付き従った、褒めてつかわす」
 「か、かみさまのために! 尽くすのは当然です!」
 「ヤー、土塁の建築の指揮、見事であった」
 「こ、これからも、わたくしは神様を……」
 「だが、ヤー、俺はお前に言う事がある」

 俺の低い声に緊張が高まる。

 「な、なんでしょうか!?」
 「お前はバカだ。だが、よい、ゆるす」

 俺の言葉の前にムーは膝を折り、
 「どうか、お許し下さい!」と懇願した。

 「だから、ゆるすと言ってるだろうに!」
 「か、神様! 何がどうなっているのですか!?」
 「こいつはスパイだ」
 「「酸っぱい!?」」

 うわーん、語彙がまだ足りない!

 「ええと、内通しゃ……も無理だし、そ、そう! ちょろーの仲間だ!」
 「そんな! どうして!?」
 「どうしてわかったのです!?」
 「それはな、こいつが俺が教えていない『戦争』と『銃』という言葉を使ったからだ。お前たち『戦争』と『銃』は知っているか?」

 俺の言葉にモモ―とメーは首を振る。

 「『戦争』はいっぱいの人が、神様や王様といった偉い人の命令で戦い合う事だ。そして『銃』は、ちょろーのこの武器の事だな」

 そう言って俺は戦利品のフリントロック銃を見せる。

 「ヤーは俺が教えない限り知らない単語を知っていた。きっと、ちょろーから学んだのだろう。それが意味する所は、ヤーがちょろーの仲間であるって事だ」
 「さすがです! 神様!」

 それ以上に問題なのは、誰がこの銃を、銃を作る技術をトカゲ人に授けたかだが。
 うーん、あたりは付いているが、一応確かめに行くか。

 「モモ―、俺は今からちょろーの町に行く、ヤーも同行せよ」
 「はっはい!」

 ◇◇◇◇◇

 俺たちは、比較的怪我の少なかったトカゲ人とガルガーを連れて北に向かう。
 トカゲ人の食性はやはり肉と昆虫だった。
 モモ―の町では、麦畑の昆虫が怪我をしたトカゲ人用に採取されている。
 モモ―の町はメーに任せた。
 あいつなら、行政を上手く回せるだろう。

 北に進み、森を抜けると、風が冷たくなってきた。
 
 「神様! この森、色とりどりで綺麗です!」
 「紅葉こうようと言うのだ。寒くなると、葉っぱの色が変わる」

 四季の薄いモモ―の町では見られない光景だ。
 森の木々の種類も変わっていく。
 ブナやクヌギ、カエデ、クスノキ、松、杉。
 そして、森を抜けた先には、切り株があった。
 先日の戦利品程度ではない、もっと古く、大量にだ。

 そして、俺たちはトカゲの町、石で出来た町にたどり着く。
 町中には製鉄所と思われる見事な炉があった。
 
 「あれ、じょおうのいえ」

 カーが言う。
 使者のカーは比較的怪我が少なかった。
 戦闘要員でなかったのが幸いしたのだろう。
 ちなみに、トーも生きていた、死にかけだったけど。
 俺たちは女王の家に入る。

 女王の家は、他の家よりかは立派だった。
 
 「初めまして、ちょろーの女王、ゲイです。知らせは受けています。わたしたちは負けたのですね」

 メスなのにゲイ、こいつもややこしい。

 「ええ、しばらくは再起できないでしょう」

 そして、女王は俺の前に膝まづくと……土下座した。
 えっ!?

 「これが神様に対する最上の慈悲をう姿と聞きました。どうか、ちょろーをお助け下さい」
 「わたしからもお願いします。わたしはどうなってもかまいません! なんでもします! だから、ゲイを、ちょろーをお助け下さい!」

 ヤーもその隣に座り土下座する。 

 「その言葉が聞きたかったんだ! この神に任せろ!」

 ふたりはあっけに取られたような顔をした。

 ◇◇◇◇◇

 「そもそもさー、なんで最初に『神様! お助け下さい!』って言わないわけ。そうすれば戦争なんかせずに助けてやれるのに。そっちが戦う気マンマンで来るからこうなっちゃうんだぞ」

 俺はくどくどとヤーとゲイに説教をする。

 「で、このちょろーの問題とは……、過度の森林伐採、つまり、木が足りなくなったのだろ?」
 「そ、その通りです。なぜお分かりになったのですか?」

 わからいでか、鉄器を作るには大量の燃料が必要だ。
 人類は石炭を利用しているが、それが無ければ木炭を使うしかない。
 おそらく、人類とトカゲ人はシリーの時代とモモ―の時代の間から少しではあるが交流があったのだろう。
 言語が共通している事からもそれは伺える。
 そして、人類が製鉄技術を身につけたら、トカゲ人もそれを真似をした。
 最初は剣ではなく、実用的な道具だったのだろうが、それを続けるうちに、森林資源が枯渇してしまったのだ。

 「はい、わたくしたちは、熱さや寒さに弱く、この少し寒い所で木を燃やして過ごしていました。特に卵と子供が寒さに弱いのです。木が無くなり、途方に暮れていた所で、神様に出会ったのです。神様はおっしゃいました『南のヒトの縄張りを奪え』と」
 「そして、その神様とやらが教えたのか。剣の作り方や戦争や銃まで」
 「はい、最初は鉄剣があれば戦争に勝てるとおっしゃいました。でも、負けました。そうすると、次は銃を作れ、それで勝てると言い、作り方を授けてくれたのです」
 「なるほど、それで、ここから南のガルガーの町のあたりに縄張りが欲しかったのか」
 「はい……」
 「よろしい、ならば俺に任せろ!」
 「さすがです! 神様!」
 「話は単純だ。ガルガーの町の少し南、ガルガーとモモ―との間にちょろーの町を作り、冬はそこで暮らせばいい、季節に応じて引越だ!」
 「「引越!?」」

 あー、こいつら、自分の縄張りに定住し続けて、引越の概念もないのか。
 
 「うむ、季節に応じて住む家を変える事だ。大丈夫! 事情があって引越ができない者のために、夏場の暑さのしのぎ方も授けよう!」

 この地方の良い所は、豊富な大河の水量だ。
 水さえあれば、細い竹や植物で作った葦簀よしずで家を日陰にして、水を掛ければ涼しくなる。
 
 「ありがとうございます!」

 さて、残る問題はふたつだ。
 
 「ヤー、俺はお前をゆるしたが、ちょろーたちはどうかな? お前が最初に『助けて下さい、神様』と事情を話しておれば、ちょろーの死者は少なかっただろう」

 そう、これがひとつめの問題。

 「神様、いや、ちょろーのみんな! わたしが悪かった。わたしがバカだった。どうか許してくれ!」
 
 女王とその仲間のトカゲ人たちに向かってヤーが頭を下げる。

 「あなたが、わたくしたちのために、昔からがんばってくれた事は、みな、知っています」
 「そうじゃ、ここ10の冬、おぬしの持ってきてくれるスゴイお酒がなければ、わしらは寒さで死んでいただろう」

 皺の入った長老らしきトカゲ人が言う。

 「なあ、ヤーは前からここに来ていたのか?」
 
 俺は小声でモモ―に聞く。

 「はい、ヤーはずっと前から世界を旅して、色々な石を見つけてきました。北へも何度も行っています」
 「それで仲良くなったのか。あいつの言っていた『大切な者を守るため』ってのは、このちょろーたちの事だったのか」
 「そのようですね」
 
 うん、これは愛だな!

 「それに……」

 そう言って女王は脇にあった卵を大切に懐に持ち上げる。

 「あなたも知っての通り、ここには、あなたとの愛の証があるのですもの!」
 「そうだ! わたしは愛する妻と子のために、これからも死力を尽くす!」

 ブホッ!
 俺は吹いた。
 あー、うん、これは愛だな、愛だな……
 二度あることは三度あった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...