24 / 54
第三章 ここは彼方の理想郷
その11 これは! 爆発だ!
しおりを挟む
「射てー!」
俺の号令で戦いは始まった。
トカゲ人が近づいて来たので、土塁の陰から矢を射かけたのだ。
当然射程外だ。
「ははは! ばーかー! とどかない! ばーか!」
「こっち、とどく、うてー!!」
パパーンと大きな音がして土塁がボスッという音を立てる。
「頭を出すな! 弓なりに射つのだー!」
所詮は火縄銃、いやフリントロック銃、人に当たった場合の威力は殺傷に十分だが、貫通力は弱い。
丸い鉛弾では土嚢を積んで作った土塁を貫ける事はできない。
厚みは三層にしてあるので、物量で最前面が崩れてもしばらくは平気だ。
しかし、予想通りに事は運ぶ、あいつら、全員で全力で撃ちこんで来た。
やっぱ、バカだなー。
もし、俺がトカゲ人の味方なら、余裕で勝てるのに。
「やめー!」
およそ10分程度であろうか、何発も何発も撃ちこんだ時、トカゲ人は発砲を止めた。
火薬を前から詰める前込め式の銃には欠点がある。
連発出来ないという所もそうだが、何回か撃つと、燃えカスが銃底に溜まり発射出来なくなるのだ。
これを取るは尾栓というネジを取ってカスを除かねばならない。
これには、結構な時間が掛かる。
「よし! ガルガー! モモ―! 行くぞ!」
「おう!」
「はい!」
俺は待機していた獣人の背に乗り、大袋を携えて土塁から飛び出る。
「風上に回れー!」
俺たちに続いて、何人もの獣人が大袋を抱えて飛び出した。
そして、トカゲ人の風上に位置する。
「今だ! 撒けー!」
走りながら俺たちは袋の口を開放した。
そして、中身が舞い散る。
「よーし! 投石隊! 放てー!」
俺の号令に合わせ、土塁の内側で用意しておいた投石器が稼働する。
だが、投げるのは石ではない、口を緩く絞められた袋だ。
それがトカゲ人の集団に降り注ぐ。
トカゲ人は銃弾が土塁を抜けなくて前進してしまっていたのだ。
落下の衝撃で袋の口が開き、中身が飛び散る。
それは、俺達が撒いていたのと同じものだ。
「とり……の、はね?」
それは、鳥の羽根にも見えたかもしれない。
よく見れば、綿のように見えるだろう。
だが、それは、そのどちらでもない。
◇◇◇◇◇
3日前、俺はメーにガラスの器と硫酸と硝酸と綿布を用意させた。
「神様、用意できました」
「うむ、これからは、火気厳禁。えーっと、火を使ってはダメ! ぜったい! だ!」
「はい!」
「では、これから作り方を教える」
俺はガラスの器に濃硫酸と濃硝酸を入れて混ぜる。
あちちちち!
「熱くなるから注意しろ。そして細切れにした綿布を入れる。しばらく経ったら、取り出して、よーく水で洗う。風で飛ばないように網に挟んで、乾かせば完成だ」
この世界のこの町は日本と違い乾燥している。
手回し式扇風機であっという間に乾く。
「神様、それは何でしょうか?」
「これはな、燃える布だ」
「布は燃えるのでは?」
「こいつは、ひと味違うぞ」
そう言って、俺は布に火を付ける。
ポッ
軽い音を立てて、布は一瞬で燃え尽きた。
「す、すごいです! 神様!」
これは、現代ではマジシャンが一瞬でハンカチを消すマジックにも使われる素材。
その名は『ニトロセルロース』。
現代でも銃火器の火薬の80%近い成分はこれで構成されている。
文字通り、未来のGunpowderだ!
◇◇◇◇◇
「なんだ、これは!」
白い細切れ布にまみれたトカゲ人が叫ぶ。
風上からの風に乗って、飛来したそれは、トカゲ人の体や、服にまとわりつく。
「いいから、うてー!」
それが、最後の言葉だった……
少量ならば、小さい音で煙も出さずに一瞬で燃え尽きるのが、ニトロセルロースの特性。
だが、一定空間内に十分な量があれば……
ボワッ!
フリントロック銃の火花によって着火されたそれは、一気に燃え広がる。
そして……
ドドドド! ドカーン!
『いっぱいある』と言っていた黒色火薬に引火すれば、おしまいだ。
というか! おれたちも危ねえよ!
撒いたらすぐ逃げろ、と言い聞かせていたので、幸いにも怪我人は出なかったが、衝撃と音、飛来する礫は獣人たちの腰を抜かすのには十分だったのである。
俺? 俺は膝をガクガクさせながらも立っていられたさ!
「さ、さすがでう! か、かみしゃま!」
会話が出来るのはモモーだけだった。
◇◇◇◇◇
「生き残りを救助せよ!」
土器バケツリレーで消火と生き残りの救助が行われていた。
思ったよりも生きているトカゲ人は多い。
だが、それでも1000を超す即死者が出た。
怪我人からも、続々死者がでるだろう。
こいつらの敗因はバカであった事だ。
銃を手にしただけで勝てると思い込み、戦術を全く取らなかった。
戦列歩兵の密集陣形、そこからの一斉射撃、これは中世~近世にかけての戦術だ。
正解は散開兵による多角的射撃だ。
そのゲリラ的な戦術で、市民を巻き込んで攻撃されたら、俺たちの勝利は不可能。
もし、そうなったら降伏しようとも思っていた、
だが、それには個々の歩兵が自己判断できる十分な教育と訓練が必要になる。
半年前までは剣で戦っていたトカゲ人では無理な話だ。
さて、後は戦後処理だ。
俺の号令で戦いは始まった。
トカゲ人が近づいて来たので、土塁の陰から矢を射かけたのだ。
当然射程外だ。
「ははは! ばーかー! とどかない! ばーか!」
「こっち、とどく、うてー!!」
パパーンと大きな音がして土塁がボスッという音を立てる。
「頭を出すな! 弓なりに射つのだー!」
所詮は火縄銃、いやフリントロック銃、人に当たった場合の威力は殺傷に十分だが、貫通力は弱い。
丸い鉛弾では土嚢を積んで作った土塁を貫ける事はできない。
厚みは三層にしてあるので、物量で最前面が崩れてもしばらくは平気だ。
しかし、予想通りに事は運ぶ、あいつら、全員で全力で撃ちこんで来た。
やっぱ、バカだなー。
もし、俺がトカゲ人の味方なら、余裕で勝てるのに。
「やめー!」
およそ10分程度であろうか、何発も何発も撃ちこんだ時、トカゲ人は発砲を止めた。
火薬を前から詰める前込め式の銃には欠点がある。
連発出来ないという所もそうだが、何回か撃つと、燃えカスが銃底に溜まり発射出来なくなるのだ。
これを取るは尾栓というネジを取ってカスを除かねばならない。
これには、結構な時間が掛かる。
「よし! ガルガー! モモ―! 行くぞ!」
「おう!」
「はい!」
俺は待機していた獣人の背に乗り、大袋を携えて土塁から飛び出る。
「風上に回れー!」
俺たちに続いて、何人もの獣人が大袋を抱えて飛び出した。
そして、トカゲ人の風上に位置する。
「今だ! 撒けー!」
走りながら俺たちは袋の口を開放した。
そして、中身が舞い散る。
「よーし! 投石隊! 放てー!」
俺の号令に合わせ、土塁の内側で用意しておいた投石器が稼働する。
だが、投げるのは石ではない、口を緩く絞められた袋だ。
それがトカゲ人の集団に降り注ぐ。
トカゲ人は銃弾が土塁を抜けなくて前進してしまっていたのだ。
落下の衝撃で袋の口が開き、中身が飛び散る。
それは、俺達が撒いていたのと同じものだ。
「とり……の、はね?」
それは、鳥の羽根にも見えたかもしれない。
よく見れば、綿のように見えるだろう。
だが、それは、そのどちらでもない。
◇◇◇◇◇
3日前、俺はメーにガラスの器と硫酸と硝酸と綿布を用意させた。
「神様、用意できました」
「うむ、これからは、火気厳禁。えーっと、火を使ってはダメ! ぜったい! だ!」
「はい!」
「では、これから作り方を教える」
俺はガラスの器に濃硫酸と濃硝酸を入れて混ぜる。
あちちちち!
「熱くなるから注意しろ。そして細切れにした綿布を入れる。しばらく経ったら、取り出して、よーく水で洗う。風で飛ばないように網に挟んで、乾かせば完成だ」
この世界のこの町は日本と違い乾燥している。
手回し式扇風機であっという間に乾く。
「神様、それは何でしょうか?」
「これはな、燃える布だ」
「布は燃えるのでは?」
「こいつは、ひと味違うぞ」
そう言って、俺は布に火を付ける。
ポッ
軽い音を立てて、布は一瞬で燃え尽きた。
「す、すごいです! 神様!」
これは、現代ではマジシャンが一瞬でハンカチを消すマジックにも使われる素材。
その名は『ニトロセルロース』。
現代でも銃火器の火薬の80%近い成分はこれで構成されている。
文字通り、未来のGunpowderだ!
◇◇◇◇◇
「なんだ、これは!」
白い細切れ布にまみれたトカゲ人が叫ぶ。
風上からの風に乗って、飛来したそれは、トカゲ人の体や、服にまとわりつく。
「いいから、うてー!」
それが、最後の言葉だった……
少量ならば、小さい音で煙も出さずに一瞬で燃え尽きるのが、ニトロセルロースの特性。
だが、一定空間内に十分な量があれば……
ボワッ!
フリントロック銃の火花によって着火されたそれは、一気に燃え広がる。
そして……
ドドドド! ドカーン!
『いっぱいある』と言っていた黒色火薬に引火すれば、おしまいだ。
というか! おれたちも危ねえよ!
撒いたらすぐ逃げろ、と言い聞かせていたので、幸いにも怪我人は出なかったが、衝撃と音、飛来する礫は獣人たちの腰を抜かすのには十分だったのである。
俺? 俺は膝をガクガクさせながらも立っていられたさ!
「さ、さすがでう! か、かみしゃま!」
会話が出来るのはモモーだけだった。
◇◇◇◇◇
「生き残りを救助せよ!」
土器バケツリレーで消火と生き残りの救助が行われていた。
思ったよりも生きているトカゲ人は多い。
だが、それでも1000を超す即死者が出た。
怪我人からも、続々死者がでるだろう。
こいつらの敗因はバカであった事だ。
銃を手にしただけで勝てると思い込み、戦術を全く取らなかった。
戦列歩兵の密集陣形、そこからの一斉射撃、これは中世~近世にかけての戦術だ。
正解は散開兵による多角的射撃だ。
そのゲリラ的な戦術で、市民を巻き込んで攻撃されたら、俺たちの勝利は不可能。
もし、そうなったら降伏しようとも思っていた、
だが、それには個々の歩兵が自己判断できる十分な教育と訓練が必要になる。
半年前までは剣で戦っていたトカゲ人では無理な話だ。
さて、後は戦後処理だ。
0
あなたにおすすめの小説
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる